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デッザット区長

鳥のさえずりがし滝の流れる音もする。

風流だがすべて作り物。外からではなく中から聞こえる。

うーん。リラックスして何だか眠くなってきた。

これでいいはずないがとりあえずそのまま身を任せる。


寺の座禅修行も楽じゃない。正座させられて気を抜くと喝を喰らう。

それに対して感謝の言葉を述べないといけないからもはや我慢の限界。

でも我慢だ。これを乗り切ればきっと素晴らしいマゾになれるだろう。

ただ私はそこまで人間ができてないのでこの辺で。

そろそろ告白するかな。


「実は私は大変恩義のある方を突き落としたのです。あれは突発的な出来事。

でも何を隠そう心のどこかでいつかはやってやろうと考えていました」

これくらいの告白はしても構わないさ。

どうせ不注意による事故として処理されたのだから。今更蒸し返す輩もいまい。

「そうですか。その方は現在どうされていますか? 」

「はい。頭と足を打って病院のベットの上です」

「そうですか」

それだけ。何もお言葉を頂くことはなく座禅は終了。

答えは自分で導き出すのだそう。彼らはあくまでそのお手伝い。

きれいごとに聞こえるかもしれないが決して誰にも解決できない。


一時間近く座禅を組み足がしびれ感覚がない。立ち上がるのも一苦労。

だが座禅に耐え告白もした。これで私も少しは立派な人間になっただろうか?


寺を離れ再び前島地区を彷徨う。次はどんなトラブルが待ち構えているのか?

楽しみのようで少々不安でもある。さあ次と行こう。  

三キロほど歩かされてようやく見えてきたお土産屋さん。

初日にサザナミが言っていたミビ茶にミビちゃんマスコットが売られてる場所。

するとサザナミはここをよく利用するのか? それともただ言われて紹介してる?

南地区にあったのは姉妹店? だとするとここも立派なボッタクリ店?

ほら今にも人相の悪い店主が鍵を閉めようとしているかのよう。


「サザナミが言ってたんだ。ここには凄いのが置いてあるんだってさ。

しかもとんでもない価格で。そんな店を勧めるから苦労するよ」

そんな風に笑うとみるみるうちにミコトが不機嫌なるのが分かる。

「島のことも人もあまり悪く言わないで! 」

珍しい。いつもなら一緒に笑ってくれるのに。ここに来ておかしくなったか?

「どうしたんだよミコト? 君のことは何も言ってない。

それにミコトだってナガレの悪口は言ってただろう? 不潔とか不細工とか」

つい追及してしまうが余計なことだったようで余計に怒らせてしまう。

まさか記憶にないとでも言うのか? それはいくらなんでもないだろう?

突然無口になる。話しかけるが結局相手してくれない。

あーあどうしてこうなったのか? 

仕方ない。昼飯ぐらいは大人しく食べよう。


お土産屋に併設されてるお食事処。

前島地区名物のカラカラ丼。

島産の白米の上に鶏のから揚げをこれでもかと敷き詰める。

その上に天かすをかけワカメや昆布等の海藻を乗せ最後に魚のフライを。

隠し味に特製ダレを垂らしたらお好みでワサビや七味をトッピング。

隠し味にはミビ茶を使う場合も。

こうして豪勢な前島地区名物のカラカラ丼デラックスの完成。


さすがに多すぎるとミコトはハーフサイズを選択。

ああ賢いな。私もそうして別のをもう一つ頼めばよかったかな。

でもお腹空いていたので我慢できなかった。

完食! ふうお腹いっぱい。やっぱり名物は外せないよな。

「ではそろそろ行くから」

あれいつもと感じが違う。まだ怒ってるのか?


ここからは二人で。数分の距離に区長がいるので挨拶を。

区長と言っても前島地区の区長ってだけだからただの田舎のお爺さんだろう?

島長と大差ないだろうと勝手にそう思っていた。

しかし会ってびっくり。まさか区長が想定外に若い。まだ三十代だそう。

区長と言うより若造だと自虐的。好感は持てるが当てにならない。


「改めまして区長のデッザットです。どうぞよろしく」

「初めまして。アキラと申します」

握手を交わす。

「おお…… 他所からの人? 観光? 移住? どっちにしても大歓迎だよ」

そんな風に笑う区長。まだ若いからかどうしても軽い感じがする。

当麻博士のような威厳がないのが気になる。やはり島長が絶対君主なのか?

「まさかあなたに会えるなんて嬉しいな。ここにはない存在ですからね」

「そんな…… 」


ミコトに会えて大はしゃぎの新区長は三年前に区長選挙で当選して一期目らしい。

こんな島でも通常選挙とは珍しい。てっきり島長が選ぶとばかり思っていた。

それは確かに選挙で選ぶのが平等だとは思うが……


「では新庁舎の方にご案内します」

そうやってほぼ無理やり連れて来られたのが病院。島に唯一の病院。

その横が新庁舎。二年前に引っ越してきたそう。

それまでは古すぎて建て替えか引っ越しかと騒がれていたそう。

病院の隣が開いたので越して来たらしい。

まるでどこにでもある田舎の光景。ここが離島とは思わないほどの設備の充実度。


「どうです? ここならやる気が出ると言うものでしょう」

最上階の区長室に二人が招待される。

「区長は随分とお忙しいと聞きましたが? 」

社交辞令だ。こう言っておけば相手に失礼はないだろう。

どうせやることもなくてぼうっとしてるんだろうさ。

「ははは! 前島地区にそのような忙殺されるようなことはありませんよ」

豪快に笑い飛ばす。明るい人だ。彼なら信用できるかもしれない。


「どうです? ぜひ私のところへ来てくれませんか? 」

ミコトを誘う区長。毎回誘ってるが決して首を振らないそう。

今回も機嫌が悪いからふざけないでと静かに言う。

これは区長に悪いことをしてしまったかな。

それにしてもなぜミコトはこんなにも不機嫌に?

やはり私の指摘が的を得過ぎていて反論できなかったのでキレた?

まったくミコトは本当に子供だな。


                続く

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