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座禅

島に唯一の学校。

ただ学校と言っても我々が想像するようなところではなく島の歴史を教える施設。

ただし決して正しい歴史を教えているとは限らない。

だからってよそ者が指摘するのは間違い。彼らにとって世界はこの小さな島だけ。

サザナミやミコトがそうであるように島の外に行くことは基本ない。

それどころか中島にも後島にも行ったことがない者がほとんど。

私は島長の許しを得て中島へ。

そこは島民にとって憧れの場所であり空想上の楽園。

本当にあるのかねえと島のお年寄りは口を揃えて言うとナガレが。


「先生の手が空いたようです。好きなだけ質問して結構ですよ」

見学も悪くないがどうもあまりいいイメージが湧かない。

どうしてこんな風に堅苦しいのか。もう少し自由に伸び伸びとさせてあげたい。

余計なお世話だとしてもはっきり指摘してやることが改善につながるはず。


「あの…… この島のどこかに隠されたものがあると聞いたのですが…… 」

なるべく抽象的に。目をつけられたら大変。より監視が強くなりかねない。

ここが南地区より危険なのは分かる。実際置かれてる環境は過酷そのもの。

ボッタクリスペシャルが懐かしいほど。


「ほおそれで具体的には? 」

逆に質問されてしまう。仕方ない。ここは素直に言ってみるか。

島長にも一応その辺の話をしたからな。きっと大丈夫だろう。

「実はこの島のどこかに秘宝が隠されてると言われてるんです」

単なる噂で島の者がコソコソ話していたのを耳にしたとしておく。

「財宝ですか? うーん。あるとしてもお教えできませんね」

当然まともに取り合わない。それは充分に予想できたこと。

「では財宝はないと? 」

「さあ…… ですが仮にあってもよその方には関係ないことですので」

無難の返しをされてしまう。やはり財宝はその辺に転がっていないらしい。

島の宝は島のもの。よそ者が余計な口を挟むなと機嫌を損ねる。

「あなたは財宝に興味はないんですか? 」

「何をおっしゃいます。そうだ。座禅を組んで行かれてはいかがでしょう? 」

追及をかわすだけでなくその煩悩を退散させようと寺を勧める教師。

何もないと思われた前島地区。そこには大きくて立派な寺があった。

住職もいるようで紹介を受ける。


学校と来て宗教施設。フィールドワークではお決まりのコース。

活発な子供たちと触れ合って寺や寺院でありがたいお言葉を頂く。

難しい話を適当にうんうんと聞き流しその荘厳な建物に圧倒される。

一体誰が何の為に作ったのか? 金はどれほど使われてるのか?

どれくらいの年月と人と資金を掛けたのかどうしても気になってしまう。

直接聞くのは失礼に当たるので資料を見たり話から推測。


今回の寺も同様に興味が湧く。ただ状況が違う。

フィールドワークに来たのではない。金銀財宝を探しに来たのだ。

博士がいたらもっとはっきりずばっと聞いたのだろうが自分にはとても無理。

ああこの寺がどのように財宝と関わっているのだろう?


「このお寺はこの島の生みの親で英雄の号令で建立されたと聞いています」

ミコトが教えてくれた。

どうやら島民はその英雄なる人物を尊敬し崇拝してるようだ。

要するにもう一つ伝説が加わったと言うことか。この島を創った者が存在したと。

英雄伝説。天女伝説と財宝伝説と英雄伝説。

この三つの伝説が今も島で脈々と受け継がれている。


「するとここにはとんでもないものが眠ってると? 」

悟られないように少々ふざけた感じで。それでも少々不謹慎かな?

「ふふふ…… もうアキラってば何を言ってるの? そんな邪心を抱いてはダメ」

「いや…… ほんの冗談のつもりさ」

お喋りしていると早く座禅を組むように指導を受ける。

厳しい坊主だ。しかし何だか想像よりも明るい雰囲気。


リラックス効果のある音楽が流れる。

ベートーヴェンやバッハなどのクラシック音楽ではなく自然の音が流れる。

外は乾期の影響で乾燥し草花も枯れ砂漠化が進んでいる。もう止めようがない。

そんな現実を感じさせない音楽をバックに座禅を組む。

しかし静かで癒し効果抜群の音楽を聞くとどうしても眠くなってしまう。

昨日も遅くまでワクワクして寝れなかったから寝不足。

まるでガキみたいだと自分でも思う。

どこか想像とは違う…… かけ離れた前島地区。

でもここが一番フィールドワークでよく見かける光景。

それはある意味私のライフワークで安心できる。


「喝! 」

邪念を払えず無心になれないから容赦なく一発喰らう。

これをありがたいと取るか無理やり勧めておいてこの野郎とと取るかで全然違う。

別に僕は好きで座禅を組んでない。心を無になどできない。

何と言っても考えることが際限なくあるのだから。

前島地区もそうだし天女様もある。

それだけでなく財宝やミコトに博士のことだってあるんだ。

無心になれるはずないだろう?

二人っきりでいつ狙われてもおかしくない状況。警戒だってしてる。


「うん? 文句でもあるのか? 」

睨みつけられる。これは座禅コースは島観光から外すのがいい。

ここが観光スポットになって観光客が押し寄せた時のことをお節介にも考えてる。

ただの暇潰しで戯言だがこのことはナガレに伝えるのがいいだろう。

「いえ…… どうしたら無心になれるのでしょうか? 」

「うむ。それは難しい質問だ。だが一つ。懺悔することだ。

己の罪を告白しその赦しを得ればあるいは無心になれるやもしれない」

本当に無心になるには一つずつ告白して悩みを打ち明けることが大切だと。

そう隠しごとはいけない。嘘もダメ。そう言うことらしい。

要するに島民に嘘も隠しごともいけない。そんなの仲間じゃないと言う理屈。

だが当然すべてを告白などできない。この島で何もせずに帰ることになる。

もしただ観光に来たんだとしたらそれもいいだろう。しかし私は違う。

当麻博士の意志を継いでやって来たのだ。これ以上の戯言には付き合えない。

いくら説得に掛かろうとも歩みを止められない。


                 続く

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