島の学校
ついに念願の前島地区へ。
どんな素晴らしいところかと思えば花が枯れ大地も干上がる過酷な場所。
この地域は独特で雨期と乾期がある。現在は乾期らしい。
どうやらミコトは乾期ではなく雨期に訪れたのだろう。
だから花が枯れ大地が干上がるのを見てショックを受けた。
それだけミコトは心の優しい純粋な島娘。天女様の生まれ変わりと言っていい。
そんなミコトにいつの間にか惹かれつつある。だがそれでも財宝探しは譲れない。
これだけは変わらない。いや無理やりにでも変わらないように意識している。
「なあミコト…… 」
「大丈夫。乾期は間もなく終わりを迎えます。そうなれば人々は活動を活発に。
ただ砂漠化が進んでいてあまり楽観視できませんが…… 」
落ち込んで言葉までもよそよそしい。早々にただの案内役に戻ってしまった。
あんなに明るくて楽しそうだったのに今はもう笑顔もなく沈んでいる。
こんなのミコトじゃない。
前島地区の現実。
彼女はどこまで知り関わっているのか? そして私に何を見せたいのか?
やはりただの案内役とはどうしても思えない。
ここはこの島の未来と言えなくもない。いつ砂漠化が進むか。
島全体が前島地区のようになればどうにもならなくなる。
「心配なさらずに。望みがあるんです。奇跡を起こせるんです」
いつの間にか笑顔を取り戻す。
自信たっぷりのミコト。しかしこの状況を改善する奇跡とは?
「あれ珍しいね。お客さん? 天女様までとはありがたやありがたや! 」
どうも観光客を歓迎してるらしい。とても信じられないが一体何がある?
ミコトはここでも天女様の生まれ変わりとして敬われてる。
そんな生まれ変わりを案内役にすればことは楽に運ぶと言うもの。
島長からのお墨付きもある。困ることはまずないだろう。
「ムサおじさん。この方のお世話と案内をしてるんです。
デッザット様のところまでお願いできませんか? 」
デッザット様? 誰だそいつは? 聞いたことないぞ。
ムサおじさんにしろデッザット様にしろ博士の極秘資料にはなかった。
ただ前島地区があるとだけ。まだ調査途中だったのだろう。
「ああこいつをかい? もちろん従うが…… いいのかな? 」
よそ者をデッザット様に会わせて本当に大丈夫か疑っているよう。
まあムサの気持ちもよく分かる。
歓迎するがそれ以上はしないし責任が取れないと。
だがミコトの頼みを断り切れない。
フィールドワークでは村のトップにお目に掛かって自由と安全を保障してもらう。
当然それなりの捧げものをする必要がある。例えば酒やタバコ。チョコなど。
基本は怖い人に囲まれた時と同じ。それをグレードアップさせる。
「よろしくお願いします! 」
こうしてそのデッザット様に会いに行くことに。
「よしだったらまずは客人に街を案内しないとな」
「待ってくれ! 腹が減って動けない」
つい我がままを言う。だが聞こえなかったのかすぐに歩き出した。
いやお腹だけじゃない。喉も乾いたし疲れもした。
だって凄く暑いしムシムシする。乾燥した大地は歩きにくい。
さっきから大量の汗が流れて気分が悪い。もしかして疲れから体調を崩したか?
何でもいいんだ。それこそサソリでも果物でもステーキでもすき焼きでもいい。
だから私に飲みものと食いものを寄越せ!
つい異常な飢えと渇きと暑さで冷静さが保てずにいる。
こんな見知らぬ土地で己をコントロールできなければすぐに狂ってしまう。
その結果捕らえられるかあるいはもっとひどい目に遭う恐れもある。
まだギリギリ理性が保てるうちにどうにかしないと。
「まずはここ。学校です」
島唯一の学校だそう。
確かに今まで学校とつくものは存在してなかった。まああるのが当然だよな。
しかしこんな荒涼とした大地に学校があるとは夢にも思わなかった。
雨期と乾期では様子が一変するだろうがどうしても今のイメージに引っ張られる。
「ああ学校と言ってもこの島の歴史を習うところだ。
ミコトさんはその辺のことはよくご存じでしょう? 」
あくまでミコトに向けて語ってる。まるで私がいないかのような虚しさを感じる。
どうしてどこでもよそ者と言うだけで辛い思いをしないといけないのか?
まあ島の者が私を邪険に扱うのは想定内だけどどこでもとなると耐えられない。
サザナミやミコトのようにそれなりの役目がない限りよそ者はただ嫌悪の対象。
そんなのうんざりだし第一間違っている。でもそれを言ったところで意味がない。
正論がまったく響かない相手もいる。
だからもう好き勝手に動くことにした。相手がどう思おうと動こうと関係ない。
一応は島長のお墨付きを得ているのだから。最終的には協力してもらうつもり。
「ようこそ! 」
声を揃えて出迎えてくれた子供たち。そう子供にとって内も外もない。
ただ興味の赴くまま行動する。それが子供のいいところ。
できるだけ多くの子供を味方にすべきだろうな。
「今何をやってるの? 」
苗を植えているところだそう。
これが十年後二十年後に成長して緑を増やす取り組みをしている。
立派な行動だけど果たしてそううまく行くか? 苗が育つ保証はどこにもない。
厳しい環境に折れて枯れるのがオチだと言えば子供を泣かすことになる。
そんなことをすれば鬼だと非難されるのは目に見えている。
だからあえて現実を指摘せずにただ凄いと褒めてあげるのがいい。
そうすると顔をほころばせた大勢の子が寄って来る。
これでいい。今はこれでいいのだ。
「では教室の方に」
そう言って一通り案内してもらう。
現在天女伝説を語っているところ。
「いいですか皆さん。天女様はこの島に存在するんですよ」
「嘘だ! 父ちゃんがそんなのいないって言ってたぞ」
一人の活発そうな男の子がつい悪気がなく否定してしまう。
笑っているがその子以外はただ下を向いている。どうしたんだ?
「ちょっと君! 」
そう言って無理やり指導室なるところに連れて行かれてしまう。
タブーに触れるのは当然ダメだが真実を疑うのもダメらしい。
可哀想に。窮屈でいけない。でもこれにより島は守られているのも確か。
「まずくないのか? これはさすがにやり過ぎだよ」
つい心配になる。
「もう子供じゃないんだから。まさかアキラも疑ってるの? 」
ミコトはすべて真実だと信じて疑わない。
それはそれでいいのかもしれないが納得はできない。
これではまるで子供たちに嘘を教えてることにならないか?
島の成り立ちも歴史も信用できたものじゃない。
いやミコトがいる以上嘘でもないのか。
ミコトが天女様の生まれ変わりならあながち間違いでもない。
続く




