隠された真実
この島に渡る時に通行証を肌身離さずに持っておけと。
しかしいざ伝説の眠る島へと足を踏み入れたらどこへやら。
興奮していたのもあってすっかりその存在を忘れていた。
通行証か。島々を巡る重要なアイテム。なければそれ以上先には進めない。
前島に留まり一週間後の船で帰ることになる。
それをまさか急いでいたとは言え忘れて置いて来るとは我ながら情けない。
「あれがないと島から出れないだけでなく捕らえられてそのまま牢屋に」
そんな風に脅すサザナミ。冗談? サザナミが言うとそう聞こえないから困る。
船頭の説明とは違い厳しくないか? 島の者とそれ以外の者との違いだろうか?
とりあえず笑って否定しよう。
「ははは…… そんなはずはないでしょう? 」
誰に聞くでなく周りを見るがただ首を振るのみ。
おいおい本当の話? もう少しで危うく捕まるところだったのか?
島長にしろナガレにしろ一言もその話をしてなかったぞ。
特にナガレはよそ者で同じ研究者。それくらい注意しそうなものだけど。
人のせいにするが適当に聞いていい加減に扱った自分が悪い訳で何も言えない。
私はただの情けない人間と言う評価になりかねない。
危なかった。本当に危なかった。
いつの間にか汗が止まらなくなる。当然夏の暑さだろうが冷や汗かもしれない。
少しの選択ミスが命取りになる。気を付けなければ命がいくらあっても足りない。
それを知り心配したサザナミが届けてくれた。何ていい人なんだ。
彼女は信用していいのかも。うーん。それはあまりに単純か?
「済みません。サザナミさんの得体がしれなくててっきり監視役だとばかり」
ナガレがそう言ってたような…… あれ違ったっけ?
「済んだことはもう結構です。それよりもこの通行証を肌身離さずお願いします」
届け物とはこの通行証のこと。旅行者や観光客にとって命の次に大事なもの。
サザナミはある意味命の恩人となった。
「もう世話が焼けるんですから」
年は僕よりも下のはずなのにしっかりしてるからまるで姉のようだ。
混乱するサザナミと言う存在。
「それでサザナミさんはおいくつでしたっけ? 」
あまりにも失礼だがどうしても気になる。
彼女の年齢こそがこの島の謎を解くカギなのではとさえ考えている。
そんな風に追求すればきっと教えてくれるに違いない。
「それでは私はこれで…… 」
島長宅に寄り今日中に戻るそう。とんぼ返りとはとんでもなくハードな旅。
まったく気にしてる様子もなく涼しい顔。とても信じられない。
ならばこれ以上引き留めるのは悪いか。
しかし奥さんがお茶でも飲んで行きなと無理やり引き止める。
では遠慮なくと真面目過ぎるサザナミ。
それにしても食えない人だ。年を聞いてもごまかすんだから。
聞く方も聞く方だが教えてくれてもいいじゃないか。気になって仕方ない。
長閑な一日。何もない島ではこんな風にのんびりしてるんだろうな。
理想的な生活。私も財宝を発見したらのんびりした生活を送りたい。
それには使えないぐらいの金銀財宝がなくてはならない。
「そう言えばミコトさんは? 」
ついつい気になってしまう。まだ姿を見かけてない。
「だからお前にはやらんて! 」
ご主人はどうも不機嫌。だからあんたは関係ないって。言えるはずないが。
だが本当の親子ではないんだろう? それに二人のことは二人だけの問題。
それはこの島を離れるまでにどれだけ愛を育むかで変わってくる。
この愛が本物か偽物か?
「ああミコトなら部屋にいるよ。覗いて行くかい男ども? 」
誤解されるような言い方をする奥さん。もちろん私にはそのような趣味はない。
仮にあっても人前では言えないしできない。それが常識だろう。
でも見たいと思うのは偽らざる本音だ。
「あの…… ミコトさんとお話させてくれませんか? 」
サザナミはどうやら私を心配してか引き継いだ監視役と情報交換する気らしい。
「だったらついでに私もよろしいでしょうか? 」
「はいはい覗くならどうぞ」
奥さんは本気…… のはずないのでどうやら近づけたくないらしい。
理由は分からないがダメだと。こっちも話しておきたいことがあるんだけどな。
そう言えばこれから前島地区に行くからもう夫婦とはお別れだ。
何だか寂しい気もするな。でもミコトはついて来る訳だから問題ないか。
「ミコトさん? 」
二人で話してるところを邪魔するのは悪いが今日はまだ姿を見てないからな。
体調が悪いとまずいから声だけでも聞いて確認できれば。
後でいいだろうとナガレは止めるがそうはいかない。少しでも早く声が聞きたい。
それにしても覗くっておかしくないか? まさかミコトは着替え中なのか?
「もうアキラさん。本気で覗く気ですか? いいですよ開けても。
そうすればあなたの求めてる答え…… この島の真実が見えて来るはず。
さあ好きなだけ覗いてください」
二つの影が一斉にこっちを向く。
さすがにそう言われたら何もできない。でも島の真実とは一体?
この障子を開ければ追い求めていた真実が分かる。だったらいっそのこと……
でもそこまでの覚悟はないし。うーん。悩みどころ。
取っ手に力を籠める。しかしこれを引けば私はただの覗き魔。言い訳できない。
「いえどうぞごゆっくり。私のことは構わずに。ではまた後で」
「ごめんなさい。あなたのミコトさんを独り占めして」
そんな風に冗談なのか本気なのか分からないサザナミ。
どうやら笑ってるらしい。珍しい。無口で冷静で表情が一定のサザナミに異変。
それはいくらなんでも言い過ぎか? まだ彼女のことをよく知らないだけ。
サザナミとミコト。まるでタイプの違う二人。
一体何を話してるのだろう? 情報交換以外に話すことなどあるのか?
不思議な組み合わせだ。そう言えば無口だったサザナミは今日は妙に積極的だ。
できる人間なのだろうがどうも違和感を覚える。
「さあ行きましょう! 」
支度を終えたミコトが腕を取り強引に外へ。
「おいちょっと…… 」
「ナガレさんはどうします? 」
「もう少しここにいるよ。二人で前島地区に行って来るといいよ」
こうしてサザナミと挨拶もできずに出発することに。
「挨拶…… 」
「いいから早く! もう時間がないんですよ? 」
そう言って強引に歩き出す。支度は終えてるのでいつでも出発できるけど。
「まずい! 通行証がどこにも…… 」
慌てるがポケットにあるでしょうと指摘されてしまう。
「もう肌身離さずにと言ったのに」
「それはサザナミが…… 」
「文句言わない! さあ行きますよ」
こうして急いで前島地区へ。
大慌ての旅立ちだった。少々焦り過ぎな気もするがな。
果たして前島地区にはどのような困難が待ち受けているのか?
続く




