サザナミの訪問
五日目・この島に来てもう五日が経ったのか?
財宝の手掛かりはまったく掴めないが仲間は徐々に増えている。
これはよい傾向だがそれだけではプラスには働かない。
彼らが裏切らないとも限らないのだから。
できるなら信頼の置ける仲間がいたらな。
そうすれば島攻略も天女伝説も島の秘宝も難しくなくなる。
ナガレに島長にダイボ。ミコトだってサザナミさえ協力してくれるかもしれない。
ただネガティブに考えれば裏切る確率が高くなったとも言える。
ある日突然何の前触れもなく裏切ることだって当然ある。
私だってそれは経験済み。もちろん裏切られる間抜けではない。裏切る方だ。
サザナミはよそ者の世話を焼く立派な人物だが指示に従って動いてる気がする。
ミコトはもちろんいい子だしこの良好な関係が続けばなと。
でもそれだからこそ逆に信用できない。これも仕組まれたことと勘ぐってしまう。
どこまで行けばその思いが薄れるか? できるならこんないい子を疑いたくない。
ただの恋人候補だと思いたい。でも浮かれていては足元をすくわれるぞ。
ダイボは一番信頼できそうだが告白内容がすべてが嘘だった場合が危険だ。
でもそれならば出会ったあの時にでも手を下していただろう。
ただ思惑があって泳がしていたとも考えられる。
そして島長は立派な人で協力を惜しまない。お墨付きもある。
ただ島を考えた時に私を犠牲にしてもおかしくない。それが島を守ることだから。
やはりナガレが…… だが信頼を寄せれば裏切られる。
当麻博士と同じ研究者でもしもの時に味方するとは限らない。
一番島と関係なさそうに見えて実は強固な絆があってもおかしくない。
この島に留まってることが何よりの証。
実のところ一番恐れているのは自分だ。
財宝発掘と言う目的のためには手段を選ばない。
それが島民と…… 特にミコトと触れ合うようになって揺らいでいる気がする。
まるで自分が自分でないかのよう。
島での生活に馴染み当初の思いが揺らぎに揺らいで狂ってしまった。
果たして彼らが最後の最後まで裏切らずにずっと仲間でいてくれたらな。
そして自分が鋼鉄の心で意志を貫けたらな。初志貫徹って奴だ。
いやそれは図々しいこと。彼らの想いを踏みにじって財宝発掘する訳だから。
島の宝を奪うこの私の裏切りをどうかお許しください。
ただそれはナガレにしろ島長にしろ狙いは知られている気がする。
ふふふ…… どうしたの?
まるでそう話しかけてるように微笑む天女様。
これは幻なんかじゃない。夢の続きではない。しっかり意識はある。
早朝の邂逅。
これがどれだけ私にとって心の支えになるか?
毎日のように女神様は私を気にかけ微笑んでくれる。
それはとっても神々しくありがたいもの。
今日はなぜか目が覚めたので誰にも言わずに朝の散歩を一人で。
この島は平和で島の者は温かくていい人ばかり。
そんな戯言は聞き飽きた。だが朝であれば多少の危険は軽減できるだろう。
逆にそこを突かれて一人になったところを襲撃される恐れもある。
でもこの朝の天女様とのひと時を他の者には邪魔されたくない。
ああ私はここにいますよ。どうぞご心配なく。
勝手に天女様が心配してることにしてる。分かってるさそんなはずないって。
もしそうだとしても皆を島民全員を気に掛け祝福してくれてるのだろう。
それくらい心得てるんだ。でもこの時間は何物にも代えがたい。
ああ天女様もう少しだけでも一緒に。
つい毎日のように邂逅すると欲が出てしまう。
そこへ行きたい。あるいはこちらへ来てくれないか?
私がそちらに行くには船か少なくても筏が必要になって来る。
しかし天女様は人間ではない。奇跡を起こせる存在。
だから空を飛び私のケチな願望に応えてくれるさ。
「それはできません」
心で思っていることがどうやら天女様には伝わるらしい。
ああ叫ばずとも届くこの距離感。ああどれだけ惹きつけられるか。
だからって叫ばずにはいられない。ただ叫べば変な奴がいると気づかれる。
それはまずいと言えばまずい。
だが島長のお墨付きをもらっているそう簡単には手を出せないだろう。
舞を終えると微笑む天女様。その神々しい肢体を見せられどう振る舞えばいいか。
そう私にとって天女様の肢体はただの芸術作品。
そこに僅かでも邪な気持ちを入れてはならない。
神聖なる天女様。これがただの人であればそれはまた違う感情が発露するだろう。
しかし今のところそのような神聖さを失ったようには見えない。
間違いなく本物である。それは疑いようのない事実。
うん眠くなって来たな。昨日あまり寝てないからつい欠伸が出てしまう。
天女様にあまりに失礼。しかし治まることはない。
「おい! お前どこで寝てるんだ? 」
朝飯だとご主人が。いつものように茶碗を持って。まったく礼儀作法のない人だ。
「あれ…… 天女様は? 」
「何を寝ぼけてる? どこまで転がっていくんだお前は? 」
明らかに無理があるのに寝相が悪いと叱責。どこまで本気なんだこのおっさんは?
「いや天女が…… 」
「だからもミコトはやれねえよ! いやそう言うレベルの話じゃないんだ。
本当によそ者はその辺理解してもらわないとな」
一人娘を想うからだろうがどうしても口が乱暴に。攻撃的になる。
そんな話一つもしてないんだけどな。勘違いされても困る。
「それ以上はおやめください」
あれからどれだけたっただろう?
いつの間にか二人が駆け寄って来た。うん誰だ?
「ナガレさん…… それからまさかサザナミ? 」
どうやら嗅ぎつけられたらしい。しかし前とは状況が違う。
ナガレと逃れるようにここ南地区までやって来た。その経緯がある。
だと言うのになぜかナガレはそのサザナミを歓迎するかのように一緒に。
「お話があるとさ」
ナガレはどうやら事情を知っているらしい。
とりあえず朝飯を済ます。
「早いですね? 」
あまりの早さに驚いてる。なぜなら北地区からは歩きで二時間以上掛かるから。
サザナミの足では下手すれば三時間は超えることに。
早いと言えばナガレも今日は早起きだ。
島長訪問から人が変わったように真面目になった気もする。
「はい。日が明ける前に向かったものですから。それでこれを」
信じられないが本人がそう言うなら信じるしかない。
それにしてもなぜそこまでして?
どうやら忘れ物をしたらしい。それを届けに来たみたいだ。
サザナミの監視の目を搔い潜ってナガレと一緒に逃げて来た。
勝手に何も言わずに出て来たからな。相当驚いただろうな。
「どうしてここが? 」
「島長宅を訪ねようとしたらナガレさんとばったり」
「それで忘れものとは? 」
「はい。通行証です。部屋を掃除したら出て来まして」
大事なものと言えばそうだろう。
行きの船でこれを持ってなければ帰れないぞと脅された。
すっかりその存在を忘れていた。
続く
※今日(七月)から一日一回投稿となります。




