悲劇的未来
ダイボが近づく理由。
中島に同行するので顔見せをしたかったと察しはつく。
荒れくれ者をまとめ上げるリーダーシップ。見た目に反し意外にもいい奴。
そんな彼が忠告をする。どうやら嫉妬から来るものではなさそう。
私のことを本気で心配してアドバイスしてくれたらしい。
でも具体的に言ってくれないと伝わらない。一体何を求めてるのか?
なぜよそ者で敵の私のためにこんな親切にしてくれるんだ?
見ていられないほどの悲劇とは具体的にどのようなものか?
うーん。これではただの嫉妬と大差ない。
分かってるのに素直に聞き入れられない。
「その悲劇は絶対に止められないのか? 」
「ああ…… お前を苦しめるだろう。しかしそれを乗り越えて本当の……
彼らはお前を試してる。俺も一応は島民だ。
だが前の奴もあの学者も恐らくその仕組みに気づけずに狂った。
目の前にいるのに抱きしめられない。そうして幻影をいつまでも追い廃人に」
まずい喋り過ぎたとそこで止める。多少具体的に話してしまったらしい。
それが彼には分かっても私には何のことだかさっぱり。
ただナガレが落ちぶれたのはそのことに関連があるようだ。
一体何が起きたらナガレのように世捨て人みたいになるのか?
未来に絶望的な何かが起きた。
でも今のナガレを見ているとこれはこれで悪くないと思えて来るから不思議。
ミコトの恋人にせよナガレにせよその身に何が起きたのか? それが知りたい。
いや知らなければならない気がする。
「さあ今聞いたことは忘れてくれ。そしてもしもの時に思い出して欲しい」
寄り添おうとするダイボ。正直でいい奴なのは理解した。
これ以上の悲劇を繰り返したくないと必死。
財宝発掘は思っている以上にハードルが高そうだ。
自由に島を巡ってると思っていたらどうやら思い通りに動かされてたらしい。
恐ろしいこと。でもあまり深く考えないようにしよう。
それはただの思い込みの可能性もある。島長は立派な人だった。
今日協力者となり得る立派な男二人に出会えた。それだけでも感謝すべきだろう。
島長とダイボの二人。それとナガレもミコトも今は協力者で仲間だ。
彼らにしろミコトにしろ他の民も含めてどのような役目があるのか?
思惑通りに動いて正解なのか間違ってるのか?
一人でおかしな島に来た以上ある程度は予想していたこと。
だが怖いなと正直思う。うまくコントロールされてるだなんて。
やはりこの島自体に何か重大な秘密が隠されているのだろう。
そうでないとここまでしない。
「帰りました」
真っ暗になってようやく帰って来たからほっとした様子のミコト。
島の人は本当にいい人ばかり。
それは偽りとダイボは言うがそんなことないさ。
「お帰り! 先に晩飯を頂いてるよ」
そう言って茶碗を持って迎える作法も何ものないナガレ。右に同じの主人。
まあこれなら文句ないか。それにしてもナガレもここの生活に馴染んで来たな。
もしかして一緒に中島まで来てくれない? ここが気に入って一生ここで……
まあそれはそれで仕方ないと考えてる。
こっちにはもう一人の協力者ダイボがいる。
彼は信用できる人情溢れる人物。どうしてあの荒れくれ者たちとつるんでるのか?
島のことで私がどうにかできることは限られてる。余計なことはしないに限る。
さあ明日からが本番らしい。前島地区にはどのような危険が待ち構えてることか。
本当に悲劇的な未来しか残ってないのか? 運命と言うなら受け止めるしかない。
でもどうにか回避できればな。
「ふふふ…… どうしたんですアキラさん? 彼に何か言われた?
どうやらミコトも気になってる様子。当然か。自分の悪口なら気が気じゃない。
教えなければダイボが疑われる。しかし言える訳ないよあんな話。
「いや美味しいよこのお魚。味がしっかり染み込んでいる」
「そうですかそうですか」
まだシラフで凶暴性を抑えている奥さんは上機嫌。
「うめえだろう? 母ちゃんの飯は最高さ」
そう言いながらもう地ビールを空けてしまっている。
ミビ茶では我慢できない人たちだな。まあそれが島に生きる男たちか。
「ほら先生も呑んでよ」
「いやいや…… うーん仕方ない」
酒好きの二人はもう酔っぱらってまるで何年来かの友人のように笑う。楽しそう。
この後その辺でいびきを掻いて奥さんに叱られるんだろうな。
これがいつものパターン。
「それでアキラさん。何を話されたんですか? 」
一度はごまかすがミコトの追及から逃れられない。そう甘くないか。
監視役として動いている以上見過ごせないのだろう。
だったらどうにか下手な言い訳を考えるしかない。
「恥ずかしくて言い辛いよ。それでも聞きたい? 」
多少濁す。ミコトをどう思ってるかだもん。
「結構です! 」
怒ったか? しかしミコトに包み隠さずにすべてを話すのはどうかと。
部屋に戻るとすぐにミコトが。まるで酔っぱらっているかのように迫る。
「ははは…… どうしたの? 」
「さっきの続き。せっかくいい雰囲気だったのに…… 」
そう言ってドンドン距離を縮めていく。まるで命が下ったかのように。
嬉しいかと言えば嬉しいしチャンスに違いない。
しかしあのダイボの予言。悲劇的な未来とは?
それは予言などではなくこの島に訪れるよそ者が辿る運命だとしたら?
ダイボだけでなく島の者なら大体知っているとしたら?
それこそミコトもナガレさえも。
避けることのできないどうしようもない定まった未来。
それに反抗する虚しさ。
このままミコトを受け入れたい。受け入れたいがどうしても引っかかる。
愛したいのに愛せない。島にいる間だけの割り切った関係。
そう考えていたがそれ以上にミコトに惹かれる自分がいる。
ああ苦しいし悲しい。今ミコトに思いをぶつけるのは悪手だろう。
さあどうするかな? その悲劇はいつ起きるのか?
予定通りに起こるとしてどうにか回避できないのか?
もうそのことで頭は一杯だ。
続く




