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ミハマシマシマ 天女の棲む島  作者: グミさん
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サザナミ

海の目の前に建つ明らかにボロボロの家屋。

ここがお客様を迎えるお宿だそう。

塩害もあるだろうがそれにしてもボロい。あちこち剥げてる。

どう考えても大切なお客様をお泊めするようなところじゃない。

ただ中は思った以上に掃除が行き届いている。

だから過ごせないこともない。ただ一週間ここは勘弁して欲しい。

島送りにされた罪人じゃないんだからさ。監視もしてるようだし。

私何かしましたか? わざと逃げて見るのも悪くないかもしれない。

命懸けの逃走してみるか?


「お茶をどうぞ」

ぬるい茶を出される。これは早く帰れと言うこと? 

でもどんなことがあっても一週間は帰れない。

「この島の名物なんですよ。一番味を感じられるのがこのぬるま湯程度なんです」

どうやらお茶の温かさよりも味と匂いの追及をするらしい。

そう考えると確かに深みのある味で薄く感じたのが口の中に広がっていく。

これは何と言えばいいのだろう? 口当たりがいい? それでは酒か?


「これなどいかがです? マスコットのミビちゃん。かわいいですよ」

どうやら町おこしを図った様子。これは意外にも幻の島ではないのかもしれない。

どこの地方も地域を盛り上げようとあれこれやって失敗する。

一瞬だけでも観光客が来たならまだいい方だ。

ただ金を使っていい加減でやる気もないところも多い。

残念ながら地域復興の失敗例だろう。このミビちゃんもその一つと言っていい。

「はあ…… 緑色の…… では一つ」

ミビちゃんは確かにかわいらしい見た目。でもこの島には似合わない。

「三種類ありますのでお土産ショップで」

お茶を頂くだけでこれだ。島の謎に迫るには時間が掛かりそう。


「このお茶菓子は? 」

「はい。ここで取れる砂糖と塩をベースに…… お土産ショップにも」

どうやらお土産屋が島のどこかにあるのだろう。

しかし上陸してからここに来るまでは見かけなかった。

するとどこか別のところにある?

「分かりました。もう充分です。とってもおいしいですから」

グルメ旅に来たのではない。この茶や菓子について詳しく知りたいとは思わない。

やはり観光で来たと適当に答えたのが間違い。

でもそうでも言わないと上陸さえ難しかった。

早く天女伝説について聞かないと。問題はこの人がどこまで信用できるか。

今のところ半分半分。


「あの…… お年はいくつですか? 」

まずはこれから。女性に年齢を聞くのは失礼だがこれで打ち解けられたらな。

「年ですか…… そちらの感覚では恐らく十代後半とか二十前半になるのかな」

どこまでもふざけたことを抜かす困ったサザナミさん。

きれいかと聞かれたそんなことはなくどこにでもいる物静かな村娘。

いやそれはあまりに辛口過ぎるか。訂正して寡黙で素敵な女性としておこう。


「お一人でここを切り盛りしてると? 」

「はい。私はお客様をお迎えする役ですのでどうぞ何でもお申しつけ下さい」

そう言うが絶対に監視役だ。私が島を勝手に出歩かないように逃げないように。

ここに来れば閉じ込められたようなもの。逃げれない。

「ではさっそく。ここに伝わる伝説のようなものがあればお願いします」

堂々と聞くことに。ここで変に言い淀めば疑われるだろう。

観光客が地元の伝承や伝説に興味を示すのは自然なこと。

大したことなくても一つや二つあるもの。

だが隠れた伝説があればそれを伝えたいとは思わないさ。それが島の人間の心理。


「伝説ですか? 伝説ねえ…… 」

どうやら何も口にできないのだろう。だから変な風に言い淀む。

それが分かってるからこそ畳みかけたい。

「実はその手の研究を。この島に伝わる伝説など教えて頂けると助かります」

「いいですよ。ですが名前も知らないような人に教えられません」

どうやら得体のしれない私の存在を恐れてのことらしい。

それだけとんでもないものを隠していると言うこと。

「失礼しました。私はアキラと言います。今日からどうぞよろしく! 」

そう言えば島に着いてからロクに挨拶もせずにそのまま。


「私は東京で伝説とか伝承の研究しておりまして。どうぞお聞かせ下さい」

これでいい。断り辛いはずだ。ただしつこくはできない。

「そうですか。でしたら明日は沼へ行ってはいかがですか? 」

「沼? そこに伝説があると? 」

「はい。実際に見られるのが良いかと。予定がないのでしたらご案内しますが」

「ぜひお願いします」

「ではお食事の用意をしますね」

「それはさすがに悪いのでは…… 」

「気になさらずに。島長からも歓待せよとのお達しが。お気になさらずに」

ありがたい。宿も飯も用意してくれるとはどこまで気が利いてるのか?

どうやら歓迎されてるらしい。余計なことしなければずっとこのままだろう。

でもここにのんびり観光に来たのではない。フィールドワークとも違う。

最大の目的は金銀財宝。天女伝説を解き明かし秘宝を手に入れるのだ。


シンプルにご飯とスープと鶏肉みたいなのと煮魚に海藻にサラダ。最後に果物。

これは何だ? オレンジ? レモン? よく分からない柑橘類。

島ではソフトアップルと呼ばれているのでリンゴの仲間かな?

とにかく珍しいものばかりで興味深くいつの間にか食べ尽くす。


「サザナミさん。それで私はどうすればいいかな? 」

明後日以降のことを聞くことに。

「自分でお考え下さい。あなたはただの観光客ではないんでしょう? 」

一瞬で見抜かれている。当然そうは言ったけどそれでもまだ観光客のつもり。

「先ほども申した通り伝説や伝承を調査しておりまして。

腹を割って話すとどうしていいか分からないんです。

実は先日同僚が怪我をして突然任されたもので右も左も分からないんです」

泣きついてみる。どう反応するか?

しかし変化を見せない。冷静だ。いや冷酷だ。少しは感情を見せてくれてもいい。


「私はただあなたのお世話を任されてるのみでそれ以上の口出しはできません。

それにあなただって今日出会ったばかりの人間を信用できますか? 」

笑うことも怒ることもせずにただ淡々と自分の役目をこなしている。

これは思ってる以上に口が堅いな。これ以上詳しく聞けば危害が及ぶ恐れがある。

「とにかく予定通り明日は沼にでも行ってみましょう。

それでは何かありましたらどうぞお呼びください」

切り上げるとどこかへ行ってしまった。

さすがに二人きりで寝るはずもなく自分の部屋に。


                  続く

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