囲まれた!
ミコトが反応したのは島の荒れくれ者たち。少なくても三人はいる。
まさか襲撃する気か? しないよね?
ここは長閑な島で暴力とは無縁の楽園と紹介パンフレットには載っていた。
昨日食堂でいざこざが起きたがもう収まってるはず。
島長からのお墨付きだってある。もう怖いものはない。
「逃げて! 」
「逃げるって…… 君を置いて逃げることなどできない! 」
いい雰囲気だったのにいつの間にか絶体絶命のピンチ。
天国から地獄に突き落とされた気分。
こいつらも少しは空気読めよな。
ミコトに現を抜かしていたら囲まれるんだから。
悪いことがあったらいいことがあるのは嬉しいし期待も持てる。
だけどいいことがあったら悪いことがあるは勘弁してよ。
退路は塞がれ隠れる余裕もない。この状況で島長の名を出しても無駄だろうし。
そこまで冷静で頭が回るならここにはいないさ。ただの逸れ者。
相手には不足はないがこっちはただのトラベラーでありフィールドワーカー。
危険な輩に囲まれることはよくあるけどそれでも交渉の余地がある。
でも今回は何らかの目的が…… 間違いなく排除する気だろう。
明確に敵意を抱く者をどうこうするなど不可能に違いない。
海外でのプレゼント作戦もたばこもお酒もチョコもなければできやしない。
ただ金でどうにか転ぶ可能性も。全財産置いて行くしかなさそうだ。
後はナガレに頼るが彼は今ここにはいない。さあどうすればいい?
ここはもう神頼みしかない。
どうぞ天女様お助け下さい。
どうぞ天女様あなた様のところまでお導き下さい。
どうぞ財宝の在り処をお教え下さい。
まあこんなところだろう。
「へへへ…… ミコト。そいつが例の客か? あの時みたいにたぶらかすのか?」
「そうそう。こいつはいつもそうだ。外から来た人間に優しくしていつの間にか。
本当にどうしようもない女だ。いつ見てもかわいいがな」
どうやらミコトと顔見知りらしい。
当然だよな。この地区の者で毎日顔を合わせているんだからな。
だからって話し合いに応じる気はなそうだ。あくまで挑発して楽しんでやがる。
まったくどこにでもいるな。引き立て役と言うか雑魚と言うか。
しかし今の私にはどうすることもできない。
一人ならまだしも三人掛かりではどうにも。
体を張ってミコトを逃すのがやっと。それも怪しいものだ。
「なあどうする? 」
「それはもう決まってる。お前たちも分かってるんだろう? 」
三人が徐々に距離を縮める。まずい。雑魚でも三人掛かりではどうにもならない。
「待て! ちょっと待ってくれ! 当然話し合いだよな? 」
一応は確認する。
だが誰一人としてまともに答えようとせずにいやらしい笑みを浮かべるだけ。
おいおい冗談だろう? どうしてこうなった? これはまずいぞ。
「島の結束は固い。昨日あれだけの事したんだ。もう覚悟はできてるんだろう?」
「やめて! この人は悪くないでしょう? 」
「そう悪くない。だが島長の名を出し島民を侮辱したからな。もう勘弁ならない」
「その件は…… 」
「おっと逃げるなよ」
「やめなさい! 」
「おお…… 怖いね。でもミコト。お前はこいつを助けたろ? 味方したよな?
だったらお前も同じだ! 二人まとめて痛い目に遭ってもらいましょうか」
脅し慣れしてる島の荒れくれ者。この手の事に慣れてると言うよりも欲してる。
暴れたくて仕方ない。その機会をわざわざ提供する事になるとは我ながら立派さ。
「ちょっと待て! ミコトは関係ないしそれにお前たちは仲間で親戚だろう? 」
ズバッと言ってみる。いわばブラザー。手は出せないはずだが……
「それは違うな。こいつとは仲間ではない。昨日から仲間外れさ」
「そうそう。この偉いお方は我々とは位が違うんですよ。へっへへ! 」
「それに親戚関係にない。こいつも元はよそ者さ。それは皆が知る事実だ」
どうやらミコトも一緒に始末しようとしてるらしい。
これは絶体絶命のピンチ。
それなのにどうしても震えないし狂いもしない。冷静だ。怖いぐらい冷静だ。
雑魚相手だとどうにでもなると考えてるのか? おかしいぞ。
「あんたたち何てことを? それはこの島の秘密そのものでしょう? 」
焦るミコト。どうしたんだろう? 確かに絶対絶命だがそれでも。
どうやら相当状況は悪い。これは一発や二発は喰らいそう。しかし逃げれない。
「待ってくれ! 話し合おう。いや相談だ」
ここはもう財宝を取引材料に使うしかない。
嫌だけど仕方ない。奴らはバカだから加減を知らない。
ボコボコにされたら再起不能。
「おいおい情けないねあんたも。無抵抗だとやりがいがないんだけど」
どうやら話し合いには一切応じないらしい。
困った。困ったぞ。これは一大事。さあどうするかな?
「もう充分だお前たち! それくらいにしておけ! 」
見るからにいかつい男。身長も相当で一踏みでぺちゃんこにされそう。
大体この手のタイプは感情的なのだがさすがにリーダーだからなのか冷静だ。
助かるが本当にこれいいのか?
「よしお前たちはここまででいい。俺はこいつらと話がしたい」
「嘘? 海に沈めるって話は? 」
「冗談に決まってるだろう? 観光客は丁重におもてなししないと」
「へいへい。じゃあ。お二人さんお幸せに」
「待って! 」
そう言うと三人組の一人の頬を張るミコト。
「痛えな! 」
「あんたが悪いんでしょう? 言いつけるから」
「それはないよ。反省してるから見逃してくれ! 」
どうやらミコトは奴らの一人と親しくしているらしい。
と言うことは彼女はこの計画を知っていた? それで急遽変更になった?
いや考え過ぎか。裏を読んでも仕方ないか。
「ほら早く行きなさい! 」
「へいへい。じゃあまた」
そう言ってザコたちは姿を消す。
「済まなかったな。捕まえて来いとは言ったが勝手に絡むとは。
言い方がまずかったらしい。俺はダイボ。あんたの案内を島長から頼まれた。
中島へは俺が同行することになってる。だから今回挨拶に来た。ただそれだけだ」
律儀に挨拶に来て絡まれたら世話ない。しっかり縛りつけとけよな。
だが無事だったので文句はない。海外ではよくあること。
とりあえず危機は去った。
続く




