本当の親じゃない!
せっかくのミコトの勧めなので二人っきりで心行くまでサンセット鑑賞。
うん…… ミコトと見る夕日は悪くない。
フィールドワークでは現地の者に絶好の夕暮れスポットを紹介してもらった。
でも現地の女の子と羽目を外すとトラブルに巻き込まれることも多い。
若い男女が現を抜かしていればそれは格好の標的。
一度は本気で嵌られたことも。とんとん拍子にいい関係になって。
おかしいなと思ってるうちに現地の怖いお兄さんに因縁をつけられた。
よく聞き取れなかったがたぶん俺の女に手を出すな。何をしやがるだろうな。
要するに日本でもお馴染みの美人局。古典的な手法にやられた訳だ。
あの時はどうやって逃げたのか? あまり覚えてない。
確かタバコと酒とチョコをプレゼントしたんだと思う。
奪われるのとプレゼントでは全然違う。天と地ほどの差。
相手の機嫌を損ねないで感謝させるまで持って行けるかがポイント。
また会った時にもらえるかもしれないと思わすのが非情に大事。
今度はもっと凄いのを持って行くからと悟られないように逃げた気がする。
そのまま博士の横から離れずに帰国の日まで怯えて過ごした。
あーあ思い出したくもない嫌な記憶。この島は長閑だからまず起きないだろうが。
それにもう島長のお墨付きを得ているのだから堂々としていればいい。
南地区ではここが絶好のスポットらしい。
その割には誰も見かけない。そもそも人が少ないから仕方ないか。
でも何となく違和感がある。どうもおかしいんだよな。
この違和感がこの島の謎の解明になるのか?
それともただまだ島がよく分かってないだけ?
思い違いもあるだろう。それにしてもこの展開は読めなかったな。
うん? 何だこの感触は?
手と手が触れ合いいつの間にか握られる。
ミコトは何を考えてる? きっと癖なんだろう。まあ嬉しくない訳じゃないが。
物凄く積極的で自然だとどう反応すればいいのか分からなくなる。
「あの手を握ってもいいですか? 」
一分は経っているのに今更聞くのか?
いいから受け入れてる訳だろう? 突然のことに驚きはするが困ることはない。
うんと頷く。恥ずかしくて言葉などない。
「どうしたんですアキラさん? さっきから無言で。私とだとつまらない? 」
そんな風に笑う。屈託のない笑顔。益々惹かれていく。
これも手なんだろうな。そう思いながらも抵抗できない。ただ受け入れる。
恐らくミコトは自分の魅力に気付いてない。
ただの田舎育ちの島娘などではない。まるで天女のよう。
あーあ言ってて恥ずかしい。これでは天女の生まれ変わりと認めてるようなもの。
私はそこまで単純ではない。そう思いたい。
ミコトは笑ってるが本心は分からない。つまらない男だと感じてないか?
嫌だ! ミコトに嫌われたくない! 笑われたくだってない!
本性だって見たくない。できるならこのままの理想のミコトであって欲しい。
「あまりに積極的なものだから凄く緊張して。ははは…… ダメだな」
「嫌でしたか? 」
「そんなことはないよ。ただ誤解されるから今度からは気を付けようね」
年上としてアドバイスする。
「それでアキラさんは私のことを気に入ってくれたんですよね? 」
もう手だけでなく腕まで。強引だな。
「好きだと言った。でも日も浅い…… 君の両親だって何て言うか」
お世話になった人の娘さんに手を出せない。ここは我慢。堪えるんだ。
一宿一飯の恩義もある。これ以上は絶対にダメだ。きちんと挨拶してから。
それが彼女のためであり財宝のため。欲に負けてなるものか。
「ふふふ…… 両親じゃないんですよ」
笑いながら否定した。と言うことは冗談? でもそんなこと言うものじゃない。
「もしかして天女の生まれ変わり設定だから? 」
思い切って踏み込んでみる。彼女を知ることで何かが掴めるかもしれない。
「設定? アキラさんは信じてない? 本当に生まれ変わりなんですよ」
「それは観光客相手の戯言と島の権威を高めるためで…… 」
「ちょっと違いますね。二人とは本当に血のつながりがないんです」
私を無視して自分勝手に語る。
整理すると少なくても今の家では生まれなかった。そう言うことになる。
彼女の出生の秘密などどうでもいい。二人の関係はその程度で壊れはしない。
「血のつながりがない? 養子? 育ての親? 」
「はい…… そんなところです。二人にはとても感謝してるんです。
でもまったく血のつながりはないんです」
「しかし…… 」
まずい。これ以上はまずいよな。ここの者はずっと島だけで暮らしてきた。
よそ者を入れることもあまりない。
今の形ができあがって以降婚姻関係はどうなってる?
どんどん狭まってるのではないか?
だから島は親戚だらけ。それで…… 考え過ぎか?
どうも博士とその手の話を論じたりフィールドワークで関わったからな。
どうしても専門的と言うか学術的に考えてしまう。
ただ今回の財宝の在り処とは関係なさそうだから無視するのがいい。
動揺してるのを感じ取って態度を変えるミコト。
「ごめんなさい。あなたにとってはどうでもいいことでしたよね。
でももし本気なら話しておこうと思って」
「では今述べた話は事実だと? 」
「はい。嘘は一切…… 」
嘘を吐け! 完全に嘘を吐いてるのによく言う。監視役だろうが?
本当は私のことなど何とも思ってないくせに白々しい。
いくらよそから来たからってそれだけで惹かれるはずがない。
ラボでも研究所でもモテた試しがない。
博士と夜のお店に行った時はそれはもう嫌と言うほど。
あれだって本気じゃない。まだ何も成し遂げてない者に魅力を感じるはずない。
自分に自信がないんじゃない。ただ自分を客観視しているだけ。
だから彼女だって本気ではないだろう。試してる。彼氏の件もどうも胡散臭いし。
島の者は結局ナガレも含め信用ならない。どうも真意が測れないんだ。
ははは…… そんな風にネガティブだからモテないんだろうな。
海外では全然そんなことないんだけどな。どうも日本では理解してもらえない。
ああ! もう嫌になるぜ。
「つい話し過ぎて余計なことまで…… ごめんなさい」
そんな風に謝られるとこっちは何も言えない。
「気にしないでくれ。ミコトのことが少しでも知れてよかったと思ってる」
無難に済ます。これでいい。今は気にせずに楽しもう。
後でじっくりと振り返ればいいさ。その時はナガレにも意見してもらう。
「あの夕日が…… 」
「どうしたミコト? 」
「逃げて! 」
ミコトが反応したのは島の荒れくれ者たち。少なくても三人はいる。
そんなまさか…… これでお終い?
続く




