愛の告白
ミコトの案内で南地区を散策。
何だかこちらをのぞき込むような嫌な視線を感じる。
貴重な二人っきりの時間を邪魔する大迷惑な奴らの登場の予感?
元彼と作った思い出の秘密基地。
それさえなければここまで興味を示さなかっただろう。
昔の男を聞く心理。それは嫉妬でしかない。でも聞かなければ。
もし仲を深めれば同じ過ちを繰り返すことになる。
いやそれだけならばミコトを諦めればいい話。
少しずつミコトに惹かれている自分がいる。それは認めざるを得ない。
何もない島で純粋な島娘に心奪われるのは当然。
私が男である以上魅力的な異性に惹かれるのはごくごく自然なこと。
仮に諦めることになっても仕方ない。私の目的はあくまで財宝なのだから。
そこはいい。そうではなく同じ過ちを繰り返し財宝発掘まで失敗すること。
それだけは何としても阻止しなければならない。
恐らくミコトの元彼は失敗したから姿を消したのではと考えている。
何年か前に私と同じ目的でやって来た者がいた。
それがどうにも不気味で引っ掛かる部分。
彼はどうしてこの島にたどり着いた?
当麻博士はどうやってこの島の情報を手に入れたのか?
同じ者からのリーク? あるいはこの男こそが情報提供者。
でも自分が追い求めた金銀財宝を他の者に漏らすか? そこが分からない。
とにかくミコトの恋人だった男のその後が気になる。
「なぜそのようなことを? 昔のことなど思い出したくもない」
どうも感情的になってるな。でも何だか芝居がかってる感も否めない。
ミコトはどっちだ? 観光客を騙す悪女なのか? ただ純粋な島娘なのか?
理想は純粋な島娘。かわいくて優しくて世話を焼いてくれる女の子。
ミコトには第一印象のままでいて欲しい。
たとえ私がどうだろうと変わらないでくれ。
理想を押し付けようとしているのは重々承知。
「なぜって…… それは君のことをすべて知りたいからさ」
大体こんな感じでいいだろう。ただの純粋な島娘ならコロッと行く。
そうでなくても仮に演じていたとしてもコロッと行く振りもするだろうさ。
だからそうなったところで彼女の本質が見えるのでもない。
余計に心の奥の深く深くに隠れてしまうかもしれないが。
「アキラさん…… まさか? 」
「ああ好きだよ。君とここで暮らして行けたらなって思ってる」
今さっき思いついた願望を述べる。
嘘を吐くのはいけないが別にこの感情が嘘とまでは言えない。
好きか嫌いかの二択なら間違いなく好きだから。
きっとミコトの神聖性とミステリアスなところに惹かれているのだろう。
「ごめんなさい…… 私は誰も愛せないんです! 」
そう言って顔を手で覆う。
おかしなことを言う。なぜこの展開を歓迎しない? もう餌に喰いついたんだぞ。
そろそろ本性を現してくれてもいい頃。あるいは本気で愛してくれてもいい?
それとも私があまりにも余裕があるから軽いと思われたか?
まあ実際感情は僅かしか籠ってない。でも本心でないと言えないんだ。
私はもう一人ぼっち。当麻博士が不運な事故で入院。
あれが本当に不運な事故と言えるかは別として崖から突き落とされた。
ただ当時目撃者がおらず記憶も曖昧なまま入院する羽目に。
復活もあり得えなくもない。ただ年で体を考えると前のようには行かないだろう。
分かり切ってること。だから今こそ新たな道を探っていた。
そこにミコトが現れ心の隙間を埋めてくれるならありがたい。運命と呼べる。
「愛せない? ははは…… 私は振られたことになるのかな? 」
まだ何も始まってないのに何を言ってる? 断り方が難しいのか?
別に本気で付き合ってもらいたいとかじゃない。この島にいる間だけでいい。
でもそんなことを言えばきっと怒るだろう?
そもそも昔の男が気になるのは嘘でもないが実際は奴の狙いが気になる。
なぜミコトに近づいたのか? 秘密基地を一緒に作った仲なんだろう?
そこが単純に知りたいところ。でもそんな言い方は身も蓋もない。
まさか奴は島の財宝にたどり着いて独り占めして気づかれないように逃げたか?
あるいは財宝を発見したところを取り押さえられて秘密裏に処分されたのか?
考えれば考えるほど不思議な感じがする。
「はい。愛せないんです。私が天女…… 」
そこで止まってしまう。生まれ変わりって話は島では常識で耳に入っている。
でもだからどうした? ただの島のおかしな風習の一つじゃないか。
愛せないって何だ? あの男も結局愛せなかったとそう言うことか?
だから島から姿を消した? それならそれでいいしベストだ。
それであれば財宝も残ってるし危険もなかったことになる。
二人の問題であるなら何を気にする必要があるのか。
「天女様伝説ですね。確か天女様はその神々しさから身を引かれる悲運の女性。
それを生まれ変わりと言われるあなた方が引き継ぐ」
「はい。誰も愛せない。愛してもらえないから愛せない」
おかしな風習が島の貴重な若者を苦しめている。
それを島長たちは充分理解してながら天女の役目を強いている。
これは虐待ではないのか? 彼女には幸せになる権利がある。
それは島長であろうと誰であろうと奪えない。たとえ親でもあってもだ。
一体何を考えてるんだろう? だが今正論を吐いたところで意味がない。
「ダメです! これ以上私に関わればあなたまで不幸になる! 」
おかしなことばかり。どうしてこのような面倒臭い話になるんだ?
これでは生贄じゃないか。島の平和と安定のためにこの生まれ変わりを差し出す。
常識で考えて果たして許されることなのか?
「あの人のようにですか? 一体彼は何を? 」
「それは…… 言えません。よその方には他言無用。
もしあなたがどうしても知りたいなら…… 」
「ミコトさん! 」
「ふふふ…… 落ち着てください。空を見てください。きれいな夕日でしょう?
とっても幻想的なんですよ。特に冬の晴れた日はとてもきれいなんです」
そんな風に強引に別の話に持って行く。少々強引だが気持ちは理解できる。
どうやら恋人の話はまだしたくないらしい。まあ仕方ないか。
続く




