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ミコトの恋人

思い切ってミコトの元恋人について問うが何も思い出せないと言う。

島長が知らないはずはない。これはどう言うことだ?

せめて名前ぐらい知ってなきゃおかしい。そいつは何者なんだ?

存在があやふやに。いるのかいないのか? ミコト本人はいると。

大体昨日泊まったあそこだって恋人との思い出の秘密基地。

彼女も記憶に触れ思い出に浸っていたじゃないか。


「しかしアキラ君。根本的なことが違う。ミコトに恋人などできようがない。

それは接していくうちに分かることだ」

意味深なことを言って惑わそうとするから困るよな。

ナガレにしろ島長にしろサザナミにしろいまいち信用できない。

何かとんでもない隠しごとをしていてそれを言うか言うまいかと迷ってる感じ。

言えばいい。簡単なことじゃないか。言っても大した影響はないと思うぞ。

とは言え今はナガレも島長も私にとっては大切な協力者。

仮に何かとんでもないものを隠し持っていたとしてもこのまま進むしかない。

この島の歴史も伝説も財宝もある程度の知識は頭に入ってる。

ミハマ島の真実が判明した時どうするべきなのか?

その答えが間もなく明かされる。ここは大人しく予定通りに動くとしよう。

それが島長の求めでもあるのだから。


「よしこれくらいでよかろう」

そう言うと手を叩き二人を呼び寄せる。

「どうですかお話は終えましたか? 」

気遣いのできるミコト。歩くのがやっとのナガレ。

フラフラじゃないか。もうだらしないな。飲み過ぎだって。

「有意義な時間を過ごした。お前の思い人もしっかりした男だ。心配はいらない。

さあ二人で手を取り合って進んで行きなさい」

そんな風に余計なことを言うのが爺さん。老人はお節介で困る。

これではまるで二人が付き合ってるみたいじゃないか。あり得ないだろう?

恥ずかしくてミコトを直視できない。

まったく早とちりしやがって。何を考えてるんだか。疲れるなもう。

まだ前の恋人との傷が癒えないのに無理やりくっつかせようとするとは最低だな。

結局ミコトのことを考えてるようでまったく考えてないのだ。


私は別にどうでもいい…… いや想いに応えないのは間違っている。

でもミコト…… 島の娘と本気で愛し合えるのか? 

彼女が何の思惑もなく近づいて来たとでも言うのか?

それはあり得ない。どんなに能天気な奴でも疑うだろう。

案内してるうちに仲良くなっていつの間にか恋人同士になっていた。

よくある話だがそれは現実ではなくあくまでお話の範囲内。


そう言えばフィールドワークで現地の女の子と仲良くなったのは何度かあったな。

愛想よくしてくれるので側に置いてるといつの間にか。

でもそんな日々も続かず帰国の途に。結果一生会えないことになる訳だ。

フィールドワークは趣味ではないのでまた行く機会は僅か。博士次第。

あえて海外旅行で一度行くぐらいだがその時は残酷な真実とセット。

次に会った時は三つのパターンが用意されている。

結婚してるかいなくなってるか子供が生まれてるか。

それが日本と海外の違いとも言えるのかな。とにかくあちらは時間の流れが速い。

チャンスを逃せば一生結ばれない。それが現実。


それでもまだマシな方。諦めもつくし祝福だってするさ。それが大人の対応。

最悪なのはいつの間にか博士に取られてしまうこと。

諦めなどつきようがないので一番きつい。隣でその様子を見てなければならない。

と言っても深い愛情があるのでもないのですぐに忘れる。

いや忘れるしかない。博士と張り合っても立場も実績も違う。どうにもならない。

そんなことを繰り返せばいつの間にかこんな風になるのも頷けるはずだ。

別に言い訳するつもりはない。ただどうにもならないことがある。

それにもしミコトと愛し合ったとして彼女を幸せにできるだろうか?

またいつものように別の男に奪われるのではないか。そんな強迫観念がある。

悩みは尽きない。どうやら私は己の自信のなさから相手を束縛してしまうらしい。


「どうしたんですアキラさん? 」

島長から許しをもらい公には誰も手出しできない状況。

もうトラブルはごめんだが誰もが避けるようになっては調査に支障をきたす。

できるだけ多くの島民から話を聞いて財宝の在り処を特定する。

地道だがそれが一番。急いでも焦っても何にもならない。

それはここ前島だけでなく次に向かう中島でも後島でも。

単純に考えれば三番目の島にこそ財宝が隠されている可能性が高い。


「何でもないミコトちゃん。それよりナガレさんは? 」

「それが…… 島長から遊んで来いと言われてどこかへ」

金に転ぶ元学者のナガレ。

酒に釣られ女にやられ伝説に誘われてここに住み着いた妖怪みたいな存在。

情けないな。それとも本気で二人のことを考えてくれたのか?

でもそれはただのお節介さ。いや…… それこそが狙いなのかもしれない。

私がミコトの誘惑にやられると考えて。

まあせっかくだからプラスに考えることにするよ。

三日後に一緒に中島へ行くんだから羽目を外さないようにしてもらいたいな。

これも彼なりに気を利かせたんだろうけど困るよ本当に。

ミコトが可哀想だろう? 専属の監視係は負担が大きいだろうに。

少しは代わってやらないと……


どうしよう。そこまで私はコミュニケーション力がある訳じゃない。

博士頼りだったから。言われてどうにか凌いでいた訳で。

二人っきりにされたらどうしていいか分からないじゃないか。

これがサザナミならまだしもミコトだからな。意識したらお終いだ。


ナガレよカムバック!

つい子供じみたことを。でもいきなりだから。寡黙な男って格好いいですか?

どうしても二人っきりになると変なことを言いたくなるし聞きたくもなる。

「そうか。よしだったら我々も遊ぼうか」

うわ…… 気を付けていたのに…… おかしなこと言っちまった。

「ハイ」

「いやそうではなく…… 」

「どうしましたアキラさん? 島をゆっくり案内しますね」

危ない危ない。どうにかなった。


こうして二人っきりの時間を楽しむことに。


                  続く

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