三日後に中島へ
四日目昼過ぎ。
三人で島長宅にお邪魔している。
人払いをして島長と二人っきりで話す。
島に眠っていると言う伝説の金銀財宝。
島を自由に回れるだけでなく財宝探しも島長からお墨付きをもらう。
しかも名誉も中身も好きにしろとは相当な太っ腹に違いない。
大病を患い弱気になったのかただもうあまり時間がないのか?
どっちみち私にとっては追い風が吹いたことになる。
昨日までの逆風を吹き飛ばして財宝発掘に励もう。
もちろん恩もあるしお返しはきちんと考えている。そこまで強欲ではないのだ。
ただ名誉と歴史に名を遺すことができれば言うことはない。
そうすれば他のものも自然とついて来るだろうさ。
しかしどうもでき過ぎてる気がする。まともに受け取っていいものか。
これで船に乗せられて本土に戻されたらいい笑いもの。
メリットしかない島長の提案。
もしかすると私を信じて自由にさせようと言う親心か?
それともフィールドワークで培った交渉術で知らず知らずの内にうまく行ったか?
手応えがないからどうしてもやり辛い部分がある。
あるいは油断させてその実何も与えずに協力する振りしてタイミングを見て排除。
または無駄に過ごさせて笑顔で帰ってもらうつもりなのかもしれない。
どうであれ自由に動き回れるのはいい。気持ち次第。
これからは島長のお墨付きがあり多少の我がままも聞いてくれるかもしれない。
そんな邪な心が多少なりともある。
結局中島に行くには三日掛かるそう。準備も手間も掛かるからある程度仕方ない。
とにかく三日後に中島に行けるんだ。ここはプラス思考で行こう。
島の秘密を守るために厳重警戒。行くにも条件がある。
当日は行き方が分からないように目隠しだけでなく耳も塞ぐと言う徹底ぶり。
これを了承しない限り中島へは行かせないと島長の判断。
うーん。時間も掛かるし厳重警戒でどうも囚人を護送する感じがして嫌だな。
今回の中島訪問はそう簡単ではなさそう。
とりあえず当日は一人では無理なのでナガレについて来てもらう。
無理言って護衛を頼むことに。
いくら島長のお墨付きがあってもよそ者に悪いイメージを持っている者もいる。
特に食堂付近の暴力的な奴ら。
ボッタクリして咎められたからって客に絡むなよな。
「あの…… それまでの三日間はどうすれば? 」
「そうだな。好きにすればいい。財宝探しを続けるも天女に現を抜かしてもいい。
あるいはミコトと愛を育んでもいい」
どうも勘違いしてるようだ。私とミコトはそのような関係ではない。
いい加減なことを言わないで欲しい。本気にするだろう?
まだ自分ならそれもいいさ。現を抜かさずに目標に向かえばいいさ。
ストイックな自分を勝手に思い描いている。
しかしミコトが本気にしたらどうする? 厄介なことこの上ないぞ。
「ほお黙るか。財宝発掘は言わずともやるだろう。現は今も充分に抜かしている。
問題はミコトだな? ミコトは君を助けようとしたんだろう? 」
ニタニタと笑う。これはよくない気がする。何を企んでやがる?
私は何も言ってないだろ? 勝手に決めつけて進めるな。そこまで単純じゃない。
「はい。ですがそれは…… 」
真剣に考えて来なかったが確かに自分を犠牲にしてまでよそ者を庇う理由がない。
幼き頃からその手の感情に疎く関心も薄い。
当麻博士に出会ってからは訳の分からない研究とフィールドワークばかり。
女性に興味を示す余裕もなかった。研究所のラボではちらほら女性を見かけた。
しかし多くは大きな子供抱えているいわゆるおばちゃんタイプで興味を抱けない。
これはたぶん有力な女性があの当麻博士の毒牙に掛かったからと推測できる。
噂もあるしな。考え過ぎだとは思うが本当にとんでもなく女好き。
お店のいわゆるプロのお姉さんよりも素人が好きな困った博士。
私も何度かその手のお店に連れて行かれて肩身の狭い思いをした。
驕りだから文句はないけどどうしても落ち着かない。
イチイチ話しかけるから答えざるを得ない。
酒好きでもないのでただ博士たちの悪ふざけを見ている。
あの場所で一人だけ意識を保ったままただ眺める。空しい限り。
大体が大きなプロジェクト成功時か完成記念に連れて行かれた。最初はそう。
その内小さなプロジェクト完了時にまで行くように。月一回は行っていた。
傍から見れば羨ましいだろうしただの自慢に聞こえるが決して楽しい訳でもない。
単なる付き合い。断れるなら断りたかった。
満面の笑みを浮かべご機嫌の博士には悪くて何も言えないよ。
「ふふふ…… 強制はせんがまあミコトを大事にしてやってくれ。
彼女はきっと…… 」
そこで止まりやがった。汲み取れと言うことだろうけど面倒だな。
だったら代わりにミコトについて教えてもらうか。
「そうだ。ミコトさんの恋人について何かご存じありませんか? 」
せっかくだから秘密基地好きの少々幼いよそ者の話を聞く。
彼の目的にどこから来たのかなぜ留まったのかなどを聞いておきたい。
「ミコトの恋人? さあ儂はそこまで把握してないが。いたかなそんな奴? 」
島長はどうにか思い出そうとするが首を振る。
どうやら記憶には残ってないと言う。影でも薄いのか? そんなはずないんだが。
「ほらナガレさんより前に来ていた観光の人」
「うーん。ナガレより前は女が一人に家族連れが一組。
後は老夫婦が一組だったかな。物忘れは酷くないんでな。
分かると思うが君が言うミコトの恋人に該当する者はおらんだろう? 」
意外にも記憶力はある。やはり島長なだけはあるな。
この島を束ねているのだから当然と言えば当然か。
家族連れの父親が不倫してミコトとはなくもないがそれは無理がある。
老夫婦も爺さんとの恋は無理だろう? 秘密基地作る前に腰を痛め諦めてるはず。
すると確かに該当する者がいない。これはどう言うことだろう?
でもナガレがその男を見たとしたらこれはもう意味不明。
そうか。よそと言っても観光客とは限らないのか。
それこそ三日後に行こうとしてる中島から来たのかもしれない。あるいは後島。
どうであれミコトから聞かない限り真実にはたどり着けそうにない。
続く




