中島への行き方
一対一のサシで島長に向き合う。
「それでアキラ君は何が聞きたい? 」
寛ぐ爺さんに合わせて私も足を崩す。
さすがに正座ばかりしてると苦しいので。
「はい。ぜひとも中島に行きたいのですが…… 」
ここは前島。島の者がそう呼んでいる。そして次が中島だ。最後が後島。
ただ見た目とか位置ではなく便宜上そう呼んでいる。
観光客が通される最初の島が前島。次が中島で最後が後島とされている。
すべて制覇すればミハマ島の全貌が見えてきそう。
「中島? 中島の行き方が分からないと? どう接触すればいいか悩んでると?」
「そうです。どうすれば行けるのでしょうか? 」
「うむ。真面目な話野球をしてればきっと誘ってくれるだろう」
「野球ですか? 」
この島にも伝わってるのか? テレビさえない気がするが。
野球って一人でどうやって? 仲間は冴えないナガレとミコトぐらい。
「ははは…… 冗談冗談。大体こう言えばよそ者はふざけるなと怒るところ。
だが君はどうやら違うらしいな」
当麻博士の嫌味攻撃とつまらない冗談には慣れてるからこれくらい何てことない。
中島か…… 船があれば行けそうだがその手配もできない。
島の者に頼るにもナガレもミコトも非協力的なのかただ本当に知らないのか。
片っ端から当たるのも手だが追われる身ではそれも難しい。
それで一番この島に詳しい島長に直接聞くのが手っ取り早い方法。
これで知らないと言われたら諦めもつく。でも恐らく知ってるよね?
島長を長年やって来たプライドもあるだろうし煽てれば口も軽くなるお調子者。
ただ舐めて掛かったら痛い目を見るからやっぱり慎重に。
何と言ってもこの島を治める権力者なのだから。
「それで中島に行って何がしたい? 答えよ! 」
「手つかずの自然が残されてるとのことで一度行ってみたいと思ってたんですよ」
無難な答えを用意。まさか伝説どころか財宝に近づこうとしてるとは言えない。
そんな奴を招待するほど判断力は衰えてないだろう。
「ほお…… 人払いしてじっくり聞こうと言うのに白々しい嘘を吐くのか? 」
島長は鋭い。これほどの御仁なら問題なく島長を続けられるだろう。
しかし本当にただの観光客やカメラマンならおかしくないはずだが。
そうではないと決めつけるがその証拠がどこにある?
「正直に話せと? しかしあなたを信用しろと言うんですか? 」
「ここでのことは他言無用。ただ君の本心を聞きたいのだ。教えてくれるな? 」
そう言って譲らない。言って怒られないならいくらでも言うさ。
しかし言ったら最後。捕えられ送還されるか最悪殺されるか。
うーん。そう簡単には話せない。信用できるのかよ。
「分かりました。それではこれからのことは絶対に他言無用でお願いします」
「よろしい。君もそろそろ気づいてるだろうが妨害を受けてるはずだ。
しかし儂自身は外の者を理解し受け入れたいと思ってる。
その結果島民が不幸になってもそれは時の流れ。
だができれば島民には今までのように暮らしてもらいたい。
それが私の願いだ。さあアキラ君好きに話してくれ」
複雑で矛盾した考えをお持ちのようだ。
「実はこの島に伝わる財宝を調べに来たんです」
「ほお…… そこまで調べ上げていたか。これは侮れないな。ははは! 」
余裕の笑みに見えて実は焦っているのがよく分かる。
いつの間にか汗がびっしょり。体を壊した影響だとしたら即入院させるべき状況。
「正直に申しますと調査は当麻博士で私はその助手に過ぎないんです。
その博士の想いを受け継いで今この閉ざされた島までやって来たのです」
ある程度真実を語らねば何も引き出せない。
これは世界各国を旅しフィールドワークで培った交渉術。
相手が何を求めているのかそれなりの要望にこちらも応える必要がある。
ギブアンドテイクの精神を忘れない。そうすればきっと想いに応えると信じてる。
「ではどうであれこの島に眠る財宝が真の目的だと言うんだな? 」
「はい。それ以外に興味はない! 」
「おお…… 言い切ったな。ではなぜ天女に心を奪われている?
それは矛盾してないか? 」
島長の指摘に何も出てこない。
いつの間にか天女様に虜になっている自分がいることに気づいた。
でもどうすることもできない。
「それは…… 天女伝説解明が財宝に繋がると資料にも載っていたので。
まずは天女伝説解明。そのためには中島に行かねばならないんです」
「それは言い訳であろう。伝説そのものと天女に現を抜かすのは違う。
間違ってる。自分でそうは思わなかったのか? 」
島長はなぜこのような追及を続けるのか意味が分からない。
あんたには関係ないだろうと本気で言いたくなるがそこはぐっと抑える。
関係ないからもうこれまでと言われたらどうにならないからな。
「それは…… 」
どう言い訳すればいいかもう分からない。
「三日連続でその姿見れば心奪われるのは必至か。ふふふ…… やはりまだ若い」
爺さんはミビ茶をゆっくり飲み干し満足げ。
「まさかすべてご存じで? 」
「報告は受けている。さあ言ってみろ。なぜ天女に心を奪われたのだ? 」
「分かりません。いつの間にか心を奪われていた。そうとしか言えない! 」
素直な気持ちを吐露する。
「よかろう。では再度聞こう。天女を取るのか? 財宝を取るのか? 」
究極の選択を迫られる。
どうも私を骨抜きにしてここに留まらせる算段らしい。
天女様に夢中にさせて財宝にたどり着かないようにさせている。
「分かりません! 本当にどうすればいいのか分からないんです! 」
二択を迫られても答えが出せない。
ちょっと前までは天女様はあくまで財宝の為に必要だと割り切っていた。
でもあの神々しいまでの姿を見せられてはどうにもならない。
それにミコトだって少しだけ…… 当初の決意が揺らいでるのは事実。
やはり財宝探しはそう簡単ではないらしい。
「うむ。それが正しい! 協力してやろう。
だが財宝を発見した時には独り占めせずに島民に分け与えよ。
それが協力の条件だ。もちろん発見者等の歴史に名を刻むのは君がすればいいさ」
なぜか協力的な上に理解を示す島長。本当にただ試しただけのよう。
続く




