島長のお墨付き
興奮して咳き込む島長。まだ本調子でないんだから無茶しなければいいのに。
この爺さんが島のトップである以上天女伝説も財宝の在り処も当然承知だろう。
ただそう簡単には口を割りそうにない頑固者に見える。さあどうするか?
「済まん中座したな。興奮し過ぎたらしい。それでどのような用で来られた? 」
落ち着いたところで本題に入る。
今回の島長訪問は情報収集と島民とのトラブル仲裁。島での自由な行動を求めて。
大体この辺り。少なくても身の安全が保障されなければ動きが取れない。
島長を侮辱したくせにその島長に頼ろうとする身勝手さ。
これはナガレの話に乗った形。どうせいつかは訪問するつもりだったからな。
避けては通れない島長訪問。それにしてもどう話せばいいか……
「昨日食堂で地元の者とトラブルになりつい島長の名を出してしまったんです」
一応昨日の経緯を語ってみせるが叱られては堪らないので細かいところは省略。
ここで機嫌を損ねられたらこの島でもう生きて行けない。だから慎重に。
「アキラ君ダメだって! きちんと説明しないと誤解を生むぞ」
そう言ってナガレが余計なお節介で一部始終を語る。
「何じゃと? この私をその辺の爺と一緒にしただと? 舐めたことを! 」
怒りに震える島長。さすがは本物だけあって迫力が違う。威厳が感じられる。
雷を落とされるかと思うと憂鬱だな。
しかし逃げるにはこうするしかなかった。それでミコトを巻き込んでしまった。
反省はもちろんしてる。悪いなとは思ってるがこれも不可抗力。許して欲しい。
「するとお前はこの私の存在をあらかじめ知っていたことになるな。
まさか二人が教えたりは? 」
二人が首を振る。不要な情報までよその者に安易に教えない。
それくらいは心得ているそう。立派なことで。それにしても鋭い爺さんだ。
「その…… 事前にある程度調べてまして……
この島では島長と言うそれはそれは大変立派な方が治めていると」
当麻博士が搔き集めた極秘資料にはそのことが書かれていた。
ただそれだけ。それ以上でもそれ以下でもない。
財宝発掘にはできる限りの情報を頭に入れておく必要がある。
「立派な島長だと? 威厳があって皆から恐れられつつ尊敬されていると? 」
勝手に拡大解釈してるが大体そんな感じだろうか。
褒めちぎるのは面倒なのでちょうどいい。
「はい。そのようになっております島長様! 」
正直に答える。もうここまで来ては下手に隠しごとする意味もない。
煽てるだけ煽てていい気分にさせてしまえばこっちのもの。
「うむ。アキラ君だったね。君は若いのに立派な心掛けだ。
頭の回転も速いし優秀な学者さんだ。この島にいる間は自由にするがいい。
文句ある者は儂の名を出して黙らせよ。うん気に入ったぞ!
よしもう昼だしどうだ食べて行くか? 」
「はい! ごちそうになります! 」
お言葉に甘える。
どうやらこの爺さんお世辞に弱く何でもきちんと答える姿勢を気に入ったらしい。
これも当麻博士のお陰か? いつも厳しく躾けられたからな。当然不満もある。
そんな偏屈な博士に比べたら島長は立派で信頼の置ける人だ。
さすが島を治め民からも尊敬を得る島長だけある。
そのカリスマ性は老いて衰えたとは言え健在だ。
ただだからって何でもこっちの思い通りに動いてくれるかと言えばそれは違う。
立派で島民想いで島を守る立場であれば逆に口が堅くなるもの。
天女伝説も財宝の在り処も漏らしはしない。
そう簡単には財宝にはたどりつかないだろう。
とは言え今はネガティブに考えずに前向きに行こう。
運よく島長からのお墨付きを得た。これはとんでもなく運のいいこと。
もしかしたら天女伝説や財宝に迫れるかもしれない。
「これもうまいぞ! 」
もう充分だと言うのに料理が運ばれる。
もったいないことに一口も運べない。もう限界だ。ミコトも早々に箸をおく。
最後までどうにか粘ったが締めの島特製のチャーハンまで手が出ない。
くそ…… 美味そうなのに。
「いやミビ茶がまた一味出してますな。ははは! 」
どんな胃袋をしてるんだ? 化け物か? 三日分を溜め込もうとするナガレ。
この島で作られたに地ビールと焼酎に高級洋酒を島長と競い合うように飲む。
ナガレは勝手に飲めばいいが島長はまた体を壊してしまいかねない。
酒で食欲が増進したのかチャーハンまで平らげた二人。
このチャーハンこそが昨日のボッタクリ店でも出された因縁の一品。
あっちではシーフードチャーハンでシーハンなどとオシャレに呼んでいた。
こっちはミビ茶浸しだからチャーチャンかな?
今度は秘伝のヤーハンなるものを食べてみたいもの。
「うむそれで何が聞きたい? 」
ナガレがだらしなく横になりいびき掻き始めたのでミコトとお世話の人で客室へ。
もうだらしないなあ。島長はケロッとしてると言うのに。
大切な仲間で村の案内役でもあるナガレ。この人結局ここに何しに来たんだ?
豪勢な料理とうまい酒をご馳走してもらいに来たのか? 本当に恥ずかしい。
「よし人払いは完了したな。では正直なところを聞こうか? 」
どうやらあえて村の者を遠ざけて一対一のサシで話そうと言うことらしい。
それはりがたい。二人がいるとどうしても話しづらいこともあるからな。
これでじっくり話せそうだ。
豪勢な食事を終えついに島長と直接対決。
今のところ威厳はあるが決して頑固で無理解の爺さんと言う訳でもなさそう。
島長は私の気持ちを汲んだのか人払いまでしてくれた。
こうして二人っきりで心行くまで話すことに。
聞くことはいくらでもある。ただどこまで聞いていいものか悩むもの。
しかしここで迷って聞かなければ後悔することになるだろう。
二人っきり。島長が黙っていてくれれば島民に漏れる心配もない。
だからどんなに彼らにとって不利で受け入れ難いことでも積極的に聞く。
続く




