島長訪問
ミコトは結局どのような存在?
「ミコトさん? 」
「ええ…… 島に伝わる天女伝説を信じ何度も見たと。それだけでも……
舞いも素敵だと言ってくれたのが凄く嬉しいんです。
島を代表して感謝の言葉を述べたいと思います」
言い方がイチイチ大げさだし何だか引っ掛かるがまあそんなもんだよな。
「ははは…… ミコトさんは本当に生まれ変わりなのかもしれないな」
一ミリも思ってないがこれくらい褒めれば天女様の秘密を教えてくれるかも。
島の者さえ知らない彼女だけが知っている天女様の秘密。
生まれ変わりだと言うならそれくらい持っていて不思議ない。
「そんな…… 私なんか全然」
照れて卑下する。素直でいい子なのは間違いない。
それでいてかわいくて素敵な女性。
「さあ痴話げんかはそれくらいで。二人ともそろそろ気を引き締めてくれ」
いい雰囲気だったところをナガレがぶった切る。空気の読めない人だ。
モテないんだろうな。ある意味可哀想な人だ。
「そうでした。では島長に」
ミコトは笑う。うーん。これで誤解は解けたかな。
でも別に私が誰をどう妄想しようと関係ないんだけどね。
それこそミコトだって。でも今は天女様しか頭にないが。
へへへ…… ダメだ。どうしても刺激が強すぎる。
仕方ない。ここは一つ切り替えてミコトちゃんで妄想してみるか。
本人もそれを希望していたからな。
でもミコトちゃんってスタイルが隠れてるからな。
肌を極力露出せずに白の袴で武装している。
朱色の合わせかただの肌着あるいは下着なのか。だから痩せてるか太ってるか?
ただ天女様の生まれ変わりで制限されてるだろうからある程度痩せてるんだろう。
見た目はもう少し肉が付けばいいな。特にお尻辺りに。
おっと…… どうしてこんなことばかり考えるんだ? 私は変態か?
天女様を見てからどうも頭が。思考が単純になっているのだろう。
もしかしたらこの暑さも影響してるのかもしれない。
しっかりしないと当麻博士みたいな女にだらしない最低人間になるぞ。
ああ…… 天女様どうかこの私をお導き下さい。
こんなことばかりしてるとミコトに嫌われるんだろうな。
それでもいい。だって天女様は私だけのものだから。
天女様に会いさえすれば他はどうでもいい。些細なことさ。
「いらっしゃい。これは三人かい。天女様と居座り学者にそっちは…… 」
お茶目な島長。冗談を交えて優しく迎えてくれた。
予想ではもっと凶暴で陰険な爺かと思ったが大病を患って人間性が回復したか?
だったなった甲斐もあると言うものだ。
「そこの奴は観光客もどきの学者様だね。どうせ財宝目当てだろうさ」
ズバズバ言い当て遠慮ない。やはりただの爺ではない。偏屈な爺さんとも取れる。
「こちらは東京から来た優秀な学者で島長の言う通り財宝目当ての島の敵です」
うわナガレ…… 何を言ってやがる。正直過ぎるぞこの学者崩れは。
ただの助手とでも紹介してくれたら波風が立たないのに。
実際ほぼ助手のようなことしかしてこなかった。
「ナガレと言ったな。どうだこの島にも慣れたか? 」
「ははは…… まだまだ未知の場所があって飽きません。後輩もできましたしね。
それからこちらの天女様にはいつも心を奪われてます。ははは! 」
正直過ぎるナガレ。
ミコトを天女様と同一視するのはただ目が悪いからではなさそう。
「それでお前は? 自己紹介をせい! 」
島長はそう言うとミビ茶を勧める。
これは私を試してるのか?
追われる身の私が生きるも死ぬもこの爺さんに掛かっている。それは間違いない。
では自己紹介をしますか。
ミビ茶を飲み干して島長に向き合う。
自己紹介。
うーん。果たして自分を何と紹介したらいいものか?
研究者? 助手? ただの観光客? 侵略者?
島の財宝を奪うと言う意味では侵略者が一番しっくりくるが言えないよな。
どうしよう? 正直に言えば抹殺されろ恐れも。島の宝を狙う不届き者だからな。
自覚はある。だからって嘘を吐けば発覚した時に恐ろしい仕打ちが待ってる。
島長とはこの前島を仕切るお方。だからいい加減なことは言えない。
どうする? どうすればいんだ? 誰か教えてくれよ。
形だけでも共同研究者だからな。でも実際のところ当麻博士が代表。
私は博士の指示に従って助手のような雑務ばかり任されている。
結局博士にとってフィールドワークにつき合ってもらう助手でしかない。
それが楽でいいと思った事もあった。でもそれでは当麻博士にすべてを奪われる。
発見しようがまとめようがすべて当麻博士に持って行かれてしまう。
もうこれ以上いいように使われるのはごめんだ。手柄の独り占めも横取りも辟易。
見返りも貰えずに大人しく従っていては未来はない。
だからこそ決意して今回の壮大な計画を立てた訳だが……
ミビ茶をゆっくり時間をかけて飲み干し島長に向き合う。
「そうか。お前が今回の騒動の当事者か」
島で大騒ぎされてはゆっくり寝てられないと愚痴をこぼす島長。
大人げない爺だ。これは面倒臭そうだな。
ブカブカな服を見ると最近になって急激に痩せたことが窺える。
それまでは恰幅のいい爺だったのだろう。
暴飲暴食の結果なら自業自得かな。
「お体はいかがですか? 」
「何がだ? 辛くて仕方ないわ。騒がしいから早くこの島から出て行ってくれ」
嫌味なのか本心なのかあるいは冗談なのかさえも判断がつかない。
ご機嫌斜めの島長。それはすべて平穏だった島の生活をかき乱したお前が悪いと。
人のせいにしてどうする? すべての原因は観光客相手に汚い事するからだろう。
あんな悪質なことがまかり通るから島民が付け上るんだ。本当に信じられない。
それを律してあらかじめ指摘しておくのが島長の役目じゃないのか?
私たち観光客が我慢するようではいけない。決して調子に乗せてはいけないのだ。
「ですが…… 」
「言い訳は見苦しいぞ! ゴホゴホ…… 」
急に咳が止まらなくなり仕方なくミコトが背中をさすってやる。
続く




