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嫉妬による誤解

「もう何をしてるんですか! 」

待ち合わせの島長宅前でミコトと合流。腑抜けた哀れな者を軽蔑するミコト。

放っておけっての。お前には関係ない。

そんな風に言えば最低な男のレッテルを貼られかねない。

態度が悪いとせっかくの島長訪問が幻に。ここは抑えよう。

笑顔を浮かべただ彼女の喜びそうなことを言おう。そこには当然感情などない。


「どうしたんだいミコトさん? 随分きれいになったね」

ミコトさんか…… 二人っきりの時はちゃんづけ。それ以外ではさん。

あえて他の者に二人の親密さを見せびらかす必要はない。

ただついふざけて人がいる時も使ってしまう。これは癖だな。

それにしても島長訪問とあってミコトもオシャレな服に着替えている。

我々ほどの変化は見られないがそれでも褒め称えるのは問題ないはず。

とりあえず褒める。事実であろうとなかろうと褒め称え気持ちよくさせる。

そうすれば少しぐらい腑抜けてもだらけても妄想していても許してくれるさ。

まだまだ幼いから何とでも言い包められると少々舐めてる部分がある。


ふふふ…… 私は非情な男なのさ。彼女を利用し島の宝を奪おうとしてる略奪者。

そんな悪い男に純粋なな島娘が近づくべきではなかった。穢れてしまうぞ。

そうでなくてもナガレに近づいただけでも汚れるのは間違いない。

だって彼こそだらしなくていい加減な存在だから。

おっと…… つい案内役兼相談役の頼れる仲間を貶してしまった。

悪いと思うがこれもただの比較でそもそも思ってるだけで口に出すつもりはない。

感謝の言葉も恨みつらみも言葉にしなければ何も伝わりはしない。


「もうアキラさんってば最低! 」

まだ何も言ってないのに嫌がる。見たら分かるだろうが一応は確認を取ろうよ。

天女様に見惚れ心を奪われ妄想していたなど予想もつかないこと。

たとえ邪なことを考えていたとしてもそれは昔の女性かもしれないじゃないか。

ミコトの彼氏のような素敵な思い出があってもおかしくない。

当然そんなのないけどね。しかしいくらなんでも決めつけすぎ。


「どうしたんだいミコトちゃん? ご機嫌斜めだね。褒めてあげただろう? 」

言葉からも表情からも雰囲気からも読み取れる。まるで軽蔑しているかのよう。

もしかして憧れの私がただの最低男だと気づいたから?

それならある意味光栄だが。まさかそんなはずないか。

「ちゃんづけは止めて。あなた天女様の沐浴を覗いたでしょう? 」

そのものずばりを言われては返す言葉もない。

そんなことはないと堂々と嘘がつけたらどれだけいいか。

どうやら私はまだ非情になり切れてないことになる。

いけない。いつかその甘さが命取りになる。当麻博士からもよく指摘されること。

気づかずに甘さがあるのだろう。


それにしても暑いな。島の夏ってこんなに日差しが強いのか?

これならサングラスと日傘ぐらい…… 

日本なら大丈夫だろうとメガネと折り畳み傘ぐらい。

メガネはUVカットだから今からでも装着すべきだろうな。

でももう遅いよな。目の前が島長の豪邸? だからな。


どれほどの豪邸と思いきやただの家。この島でよく見る高床式の住居。

お宅拝見するほどの立派な建物ではない。庭にプールの一つもない。

これでは食事も期待できなさそう。

島長で相当稼いだはずなのにどうして?

もしかすると島のことを想う立派な御仁なのかもしれないな。


ではそろそろお邪魔しますか。

おかしいな。まだミコトがしつこく絡んでくる。どうしたんだろう?

服も着替え体もきれいにした。髪だって整えた。不精ひげを剃りさっぱりした。

これでかわいい女の子でも拾えたらと。そんな夢物語を思い描いて…… ないか。

安心して欲しい。一ミリも思ってない。女など周りには掃いて捨てるほどいる。


冗談はさておきではそろそろお邪魔しますか。

でもまだミコトがしつこい。

天女様の沐浴を覗いたと疑いの目を向けうんざりだ。

それは私も男だからそんな嫌らしい目で見ないとは言いきれないが。

過ぎた事だしいくら島のルールだからって詳しくない者を責め立てないで欲しい。

結局ミコトはどっちの味方なんだよ? 私を破滅させる気か?


うわ…… まだなの?

私は完璧なんだからナガレを見てやれよ。失礼な言動をするのは彼の方。

私は常識もあるし当麻博士にきつく指導されたからな。ミスなどあり得ない。

だとすれば一体何をそれほど気にしているのか?


「裸を見たんでしょう? 嫌らしいなもう! 」

幻想が崩れたからって怒ることないだろう?

正直に言えばそんな些細なことどうでもいい。

あの肢体を見て感動しない者などいないさ。

ああ今すぐにも会いたい。会えたらこの身など……

まずいまずい。どんどん天女様に傾いてしまっている。

これでは調査も発掘もできやしない。気を引き締めないと。

決して目的を見失ってはいけない。

私の最終目的は…… 天女様に会いこの気持ちを伝えたいだっけ?


「ごめんミコトさん。今朝天女様の素晴らしい舞を見て浮かれてるのは事実。

しかし言い訳させてもらえればそのような嫌らしい意味で思い返してない。

何と言うかとても神々しいと言うか…… やはり言葉で表すのが難しい。

もはや天女様は殿上人であられるから。まあ子供には分からないか」

つい最後に余計な一言を加える。我慢できなかった。これは怒ってる?

「いえ…… そんな風に言って頂けて光栄です」

なぜかミコトが照れる。いや天女様について語ってるんだけどな。


ミコトはただの生まれ代わりだろう? 天女様そのものじゃない。

でも待てよ。天女様が姿を見せたのならこの生まれ変わりたちはただのホラ。

実際はただのきれいな人。大体天女様が生まれ変わるはずないだろう?

言っては失礼だがただの天女コンテストのファイナリストでしかない。

さすがにそれは言い過ぎか。


                  続く

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