さっぱりナガレ
ミコトか…… 見た目通りいい子なんだろうな。
あの毒親に育てられてよくここまでまっすぐに成長したものだ。
おっと…… 同情も感情移入もそれ以上もダメだ。もっと非情にならなければ。
あくまで目標は天女伝説を解明し島に隠された財宝を発見することなんだから。
ライバルが押しかけるのも時間の問題。それだけではない。
せっかちな博士が押し掛けることだって充分あり得る。
私が博士の代わりをと宣言したがぼうっとしてたし信頼もされてないからな。
頼りない情けない助手には任せられないと強行退院しかねない。
そうなればすべての計画が狂ってしまうことになる。
計画の全容を知る当麻博士だけはこの島に近づかせてはいけない。
この島のためにも絶対に近づかせない。
果たしてうまく行くだろうか? 不安もありながらも四日目へ。
四日目の朝。
うん…… どうやら寝坊したらしい。起きたら二人とも姿がない。
だがここを無闇に離れられない。離れて万が一島の者に見つかれば袋叩きだ。
うーん。今更慌てても仕方ない。ここはもうひと眠り。優雅な夏のバカンスさ。
「おい起きろって! 」
寝たと思ったら起こされた。どうやら一時間ほど寝ていたらしい。
「ああ…… ナガレさん。どうしたんですか? 」
「寝坊するな! いつまで寝れば気が済む! 」
まるで不機嫌な博士だよ。厳しいな。あれ…… どこか変だぞ。
「どうした? おかしな顔をして? 」
「ナガレさんですよね? 」
「そうだろうが! 他に誰がいるんだ? 」
そうは言うが見違える訳で。どうしたと言うんだ?
「ジロジロ見るな! そんなに変か? すっきりした身なりが珍しいか? 」
一緒にいたので声や仕草でナガレと認識できた。しかしなぜ身なりを整えたんだ?
あのヘンテコスタイルは単に不精なだけでポリシーではなかったのか?
これでウインドブレーカーを着れば偏屈な学者に見えなくもない。
島の調査に来たナガレ博士の登場さ。そんな風に笑う。
「いつまでも笑うな! 俺だって嫌だよ。でも島長に会うんだからこれくらい。
失礼な格好や態度を取れば島長から嫌われてしまう。
お前はそれでいいが俺はまだこの島にいたいのさ」
ナガレが島長を恐れてか尊重してかまともな格好になった。
うん待てよ? するとまさか私も……
四日目…… ついに予定の半分が過ぎようとしている。
計画では一週間以内に天女伝説を解き明かし財宝の在り処を探る予定だった。
それが何だかんだと無為に過ぎて行きほぼ何も分かってない状況。
初めてのことで計画通りに行くことの方が少ないのは重々承知。
それでも手掛りの一つでもあればなと。
元々の見通しが甘かったのだろう。もう一週間はないとたどり着けそうにない。
これは諦めと言うより計画変更に伴う状況判断。
それができるかできないかで大きく違って来る。
一週間に一度の船は島への観光客を送り届けてから戻る者を乗せる。
そう言う面ではたとえ博士が来ても接触することはない。
まだ完全に裏切ったとは考えてないはずだ。
今すぐに謝罪の言葉を述べれば許してくれるかもしれない。
それが今取り得る最善策かもと思うと情けなくなって来る。
「ほらお前もきれいにするんだ! 」
そう言って裸にされ近くの海に投げ込まれる。
嘘だろう? 溺れてしまう。
でも穏やかな海なのでその心配はないそう。
だからって無理やりは酷いな。子供じゃないんだから口で言えばいいのによ。
あまりに大胆で乱雑。一応は外から来た客だぞ。
島や島民のイメージダウンは避けられない。
まあ昨日みたいに言いがかりでトラブルになった時点でイメージは最悪だが。
それが一変するような素敵な思い出があればまだいいが……
それを願うのはさすがに虫がよすぎるよな。
「あの…… ミコトさんは? 」
二人して起こさないから寝坊したじゃないかとはさすがに人のせいにできない。
「さあな。たぶん沐浴でもしてるんだろう。お前も隅々まできれいにするんだぞ」
身なりをしっかりしたナガレは意外にも厳しい。どうしてしまったんだ?
前の方がよかったとは口が裂けても言えない。ただの二重人格かもしれないが。
たまにいるんだよ。身なりを整えると急変する輩が。
でもそれがナガレだと言うのがちょっとショック。
いい加減で不精で頼りになる案内役のおかしな人と言う感じだったのに。
「そこで水浴びしていてくれ。自分はやることがあるんで」
そう言うと戻って行く。もう自分勝手なんだから。溺れたらどうするんだよ?
ああこのまま隣の島まで泳いで行こうかな? できるはずだ……
だが穏やかで浅瀬はこの辺りまでらしい。遠くの海は白波が立っている。
このまま無謀にも沖を目指せば深みに足を取られることだろう。
ここは完全な海ではない。
隣の島まで浅瀬が続くなら泳げるだろうが船が無いとやはり隣の島に行くの困難。
ただこれでは大型船は入れないので小型船が主流だろう。
あるとして小さな漁船か行きに乗ったボート。あるいは筏でもいいのかな。
後でナガレに見解を聞くかな。博士もそうだが彼らはその手のことに詳しいはず。
ただの助手では限界だが彼らなら一晩で作り上げてしまうだろう。
自由な発想があれば可能。後は道具と材料。
そんな風にボケっと漂っていると隣の島が目に入る。
ここと何が違うのか? 今目指すべき目的地。
あそこにさえたどり着ければ天女の正体と財宝の秘密に迫られるはずだ。
しかし今すぐとはいきそうにない。
とは言え遅くても船が迎えに来るまでにどうにかしなけばならない。
うん? まさか昨日の? でもここは前とは違う。
ここからも見えると言うのか? それともあえて私を狙ってのこと?
ついに天女様登場?
太陽の光が天女を隠す。
そうか。昨夜星も見えず曇りがちだったから下り坂かと思いきや澄み切った青空。
うん。やはり天女様は青空がお似合いのようだ。
続く




