これ以上首を突っ込むな!
もう完全にミコトのペース。笑ってやがる。
何がそんなにおかしい? 嬉しいんだ?
まさか昔付き合っていた男に似てるから嬉しいとかふざけたこと抜かすなよ?
そっちはそれでいいかもしれないが元彼と比較される身にもなってくれよ。
突然だからな。ミコトにどのような感情の変化があったのか?
それとも最初から私に興味があった? もしそうなら素直に嬉しいが。
ただの悪ふざけとも取れる。人をたぶらかす真似したら両親泣くぞ。
当然お世話になってるので面識はある。
酒に弱くて器の小さな父と夫追い出しに掛かる酒豪の母。
それが彼女の両親だと…… 確証はない。なぜなら僅か一日の付き合いだから。
彼らにももう一度詳しく聞くのがいい。そんな暇があればの話だが。
「そんなことより島の掟とは何だ? 教えるんだ! 」
「アキラさん…… 」
「いいか? 私はこの島にのんびり観光しに来たのではない!
だからつまらないこと言わないで重要な情報を包み隠さずに。
私を怒らせたくなければ正直に答えるんだ! 」
そんな風に強硬姿勢を崩さない。
「聞きますか? 」
「焦らすな! 早く教えろ! 」
「教えろ! ではなく教えてくださいと頼むべきでしょう? 」
たかがガキに諭される。恥ずかしい限り。
うるさいと叱りつけるのは最低だし大人げない。ここは素直に従おう。
言ってることはもっともだからな。
どうやら私の方が感情的になり勝手に立場が上だと勘違いしてしまったらしい。
ここでは対等。それが当たり前さ。
フィールドワークを思い出せ。当麻博士の言っていたことを思い出せ。
相手を敬え。もしどちらが上かと言ったら地元の者に決まっている。
そう。ここでは本来ミコトの方が上。本来対等ではないのだ。
ただミコトの善意なだけ。それを忘れてはいけない。
決して立派な博士ではなかった。いつもこき使う最低な博士。
共同研究者と言いつつただの助手扱い。それが嫌とかでは決してない。
ただ博士は人間性に問題があった。お酒が入ると余計だ。
私をつまらないことで叱責する。そんな最低な人間だ。
大事な書類を紛失したのを私のせいにして見つかるまでタダ働きだと。
安い金でこき使ってるくせにまだ苦しめようとする。
普通それだけ大事な資料ならコピー取るなり対策すべきだろう。
失くしたのだって博士のミス。なぜか私が責任を取らされる理不尽な扱い。
結局博士の勘違い。あるものをないと言えばどこからも見つかりようがない。
あの時私が博士の嫌味に耐え再び確認したことで発見することができた。
年のせいもあるが早とちりと思い込みが酷い。
何でもないことがいつの間にか大ごとにされる。それではどうにもならない。
おっと…… ついつまらないことを。
「悪かったミコトちゃん。自分が悪かった。反省してるから教えてくれないか?」
アンガーマネジメントで対応し感情を抑える。
これが大人さ。冷静に冷静に。切り替えの早さも重要。
「この島の掟の一つに敵に味方した者も敵と見なす。
その行為がどんなに正しくても関係ない。正しい正しくないは問わない」
ミコトが言ってることは何となく理解できる。しかしそれを私に話す意図は……
嫌な予感がする。どうしてもおかしな方に考えがち。よくないぞ。
「そうか! ミコトちゃんは私を助けてしまった。だから君も島の敵か? 」
「正解。いつもはぐっと抑えていた。でもあなたが殺されると思ったから。
いても経ってもいられなくなってつい手を差し伸べてしまったの。
昨日会ったばかりなのにそれでもどうしようもなくあなたを求めてしまう。
いけないことだと分かっていても感情が先走ってしまう。
もう耐えられない! 我慢できない」
苦しい胸の内を吐露するミコト。苦しんでいたらしい。
自分のせいで怪我したり亡くなったり忽然と姿を消したりするの見たくないそう。
それが天女様の生まれ変わりであると噂のミコト。何て純粋なんだろう。
しかし出会って間もないので感情が動かされることはない。
でもミコトはとんでもなく心が透き通ってるから。それは見えなくても分かる。
「あの人たちはいい人たちばかり。でもよそ者には厳しく当たる。
関係を築かずにその場の勢いで対立すれば容赦がない。
あの時嫌な空気が漂っていた。周りの者を含めてやってしまおうと。
それをこともあろうに島長の名をかたって逃げるんだから庇いようがない。
対立だけでなく侮辱までしたら島中の敵と見なされるに決まってるでしょう?
観光客がとっさに島長を思いつくなんてない。だから驚いた。
あなたは一体何者なの? どうしてこの島に詳しいの?
ただの調査隊でもないでしょう? 」
ミコトは頭の回転が速いし考えも深い。何も考えてないはずないよな。
だとしたらそれこそ勢いで助けるなよ。巻き込まれるだけだぞ。
「あなたはこの島に来たばかりだし感情的になって対立するのも仕方ない。
だから許す場合もある。あの場を切り抜けたらもう充分とも。
でも島長の名を出してしまった。恐らくあなたは今日中に追手がかかるでしょう。
それに私もきっと…… 」
どうやらこれはすべて自分のせいらしい。何てことをしてしまったんだ?
調子に乗って博士の極秘資料情報まで利用してしまった。
いきなりの大ピンチ。しかも自分一人の問題でさえなくなった。
「ねえミコトちゃんは天女様じゃないのか? 」
「ダメ! これ以上島の秘密に首を突っ込んではダメ! 本当に帰れなくなる」
必死に訴えるミコトを見ればこれがただの戯言ではないのが分かる。
ああ残念だ。どうしてこうなったのか? 観光で島巡りしてるのではなかったか?
問題は今後どうするか? 金銀財宝の手掛かりはやはりこの島に伝わる天女伝説。
実際に天女様が降臨するかは別として天女伝説を解き明かさないとならない。
そうしなければ金銀財宝にはたどりつかない。これでは何しに来たか分からない。
長い時間をかけてようやくたどり着いた。何も得ずに帰る訳には行かない。
手ぶらで帰っては今までの研究と準備がすべて無駄になってしまう。
せめて次に繋がる何かを見つける必要がある。
続く




