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好きか嫌いか?

ミコトにせよナガレにせよ仲間であり味方に見えてその実敵でしかない。

この現実を受け入れるしかない。いつだって親しくなった仲間が裏切る。

それが世の常である。何てね…… ちょっと格好つけ過ぎか?


昨日まで仲間だと思っていた者が金に転びものにも転ぶ。

この島には味方などいない。仲間だと思ったのは上辺だけを見てるから。

心を見なくてはいけない。しかし心など実際はどうやっても覗けない。

だからどんな時でも対象と距離を取る。これが唯一の方法。

裏切られた事実を受け止めたくない。


もはや初めから分かり切っていたこと。

島には外から来る者など僅か。来れても週一度の船に乗ることでしか叶わない。

それではどのような演技をしようが関係なく敵認定される。

正直かどうかの差。子供か大人かの違い。

それがすべて分かっていて近づく者と仲良くすることの虚しさ。

いやそれもこれも私が島の金銀財宝を狙うからであって反省すべきはこちら側。

でもだからってそれは男のロマンだから止められない。名誉でもあるのだ。


財宝が見つかれば大々的に騒がれるだろう。

そして一躍有名人になる。そうすれば高名な学者として取り上げられる。

それは何ものにも替えられないもの。ただしそれでは当麻博士と変わらない。

名誉欲に憑りつかれた哀れな人間。だから自分はそうではないと思いたい。

それだからではないが今大切にしてることは発見すること。発見に重きを置く。

世紀の大発見をして歴史に名を遺す。

一番は金銀財宝を発掘する瞬間。その時を大切にしている。

当然その時には天女伝説も解かれていることだろう。


さあ天女の生まれ変わりだと噂のミコトに話を聞くことにしよう。

ずっと優しくしてられない。重要情報を得るにはうまく誘導したり嘘を吐いたり。

人によって変える。ミコトは見た限りいい子だ。だからただ怒らせるのは難しい。

怒りに我を忘れてすべて話すなら楽なんだが。そんな単純ではないだろう。

だから逆に叱責する。わざと罵って喧嘩してすべてを吐いてもらう。

うまく行くかは自然な感じに掛かっている。ただミコトには適性があると見た。


「どうした? お前たちは私を嫌ってるんだろう? 避けようとしてるのだろう?

どうにかしてこの島から追い払おうとしてるんだろう? 」

すべて似たようなもの。それを矢継ぎ早に放てば彼女は混乱する。

そして心を開くに違いない。だが間違っても彼女に心を奪われてはいけない。

それでは当麻博士と変わらない。私は財宝のためにこの女を利用するんだ。

そう私は非情な人間さ。愛も心もない。あるのはただひたすら財宝への執着。

ははは! どこまで行けるかな?


「嫌ってない…… 避けてない…… 追い出そうとして…… 」

そこで止まってしまった。可哀想に。言える訳ないか。

彼女がどのような役割なのかまったく分からないがただの案内役でもないだろう。

それはサザナミもきっとそうだろう。島の者の命令で動いている。

サザナミからミコトに受け継いだ監視役。そのサポート役がナガレか?

彼女は一体その胸に何を隠しているのか?

危ないのでできれば素直に見せてもらえたらな。無理だと承知している。

だから強引に剥がしに…… まずいまずい。また邪心に支配されるところだった。


「私のこと忘れたの? 」

「ははは…… ミコトだろう? 私はそこまで非情でもないし年も取ってない。

忘れるはずがないさ」

「嬉しい! 」

そう言って抱き着いて来る。突然のことに体が固まる。

まさか劣勢になって奥の手を使ったか? それともつまらない遊びに飽きたか?

何であれミコトは危険。すぐに心を奪われそうになる。

精神修行をしてないただの観光客では彼女の誘惑にやられる。

しかし私は動じない。拒否まではしないがただ冷静に様子を見る。

とんでもなく無意味でただの時間の無駄だと相手が思えるまで。


「バカ無茶して! 殺されるところだったんだよ? この島の掟を知らないの?」

「知るかよ! 知りたいとも思わないさ。それと早く離れろ! 話し辛いだろ?」

格好つけるがもう限界。危うく抱きしめるところだった。

ふふふ…… これが奴らの作戦だと分かってるのさ。分かってるけどでも…… 

おかしいな。何だか自分にいいように真実を作り変えてないか?

ダメだ! 女など本土に戻ればいくらでも。

たかが島娘のために本気になるものか。

私は財宝発見と言う崇高な使命があるのだから。


「頑固なんですねアキラさん」

「頑固とはちょっと違うよ。信念があるんだ」

「どう違うの? 私のこと嫌い? 嫌いになっちゃった? 」

そう言いながら離れる。これは相当訓練されてるな。

反射的に捕まえさせようと罠を仕掛けて来た。一度嵌ればもう逃げだせない。

嬉しいがその手には乗らないぞ。信念を曲げてまでこの島もミコトも愛せない。

「ああ嫌いだよ。だがそんなことはどうでもいい。それより島の掟って何だ? 」

気になることはサクサク教えろ! 私の方が当然年上。従ってもらうぞ。

「私は好き! あなたを見てると昔好きだった人を思い出すの」

そんな風に語り出そうとするが聞いてやるものか。

大体なぜ昔の男の話などする。最悪じゃないか。これでは誘惑できないぞ。

そんな風に見つめると少し笑って言う。


「誘惑されたいの? 」

明らかに人の心を読む。あり得ない事だが天女様の生まれ変わりなら納得もする。

「まさかお前は人の心が読めるのか? 」

「ふふふ…… どうかな…… 」

そんな風にふざける。これでは無邪気なのか探ってるのか分からない。

できるなら無邪気であって欲しい。そう願うのは罪深いことなのだろうが。

やはり彼女には彼女の役割がある。だとしたら無邪気なはずないか。

「おい! どっちなんだ? 読めるのか読めないのか? 」

「気にしない方がいいですよ。そのようなレベルではありません」

この辺りになると真面目にも取れるから恐ろしい。


「嘘だろう…… 」

「冗談ですよ。さあもう少し歩きましょうか」

もう完全にミコトのペース。笑ってやがる。何がそんなにおかしい? 嬉しい?

私だってこんなにかわいい女の子と二人っきりで歩けるなら嬉しいが。

でもこれが仕組まれたことならこんな悲しことはないぞ。


                続く

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