ミハマ島
こうしてついに旅立つ。
目指すは天女が棲むと言われる伝説の島。
ううう…… 海風が強く目を開けてられない。
ボートのエンジン音が耳に響いて辛い。
でもそれ以上に大変なのが揺れによるもの。
さっきから波のせいで大きく揺れる。その度に吐き気に見舞われる。
必死に耐えるが限界も近い。寝不足が堪えたか?
これでも当麻博士の助手をしていてフィールドワーク経験もある。
それなのに体調を崩す。きっと神経質なんだろうな。
だが観光で来てないので問題ない。せっかくの旅行を台無しにはしないさ。
「ははは…… だらしないね。これくらい大したことないでしょう?
慣れなくちゃ。それでは最高の海男になれないよ」
いい加減なことを抜かす。
「はあ…… 」
「それでお客さん。こんな島に何で来たの? 」
彼も元々島の出身。方言がないのがこの島の特徴。
諸説あるが元々は無人島だったところに人が移住して来たとも言われている。
この島を開拓した伝説の若者がいたとの言い伝えがある。
それはもう随分前の話。誰もが……
おっとこれ以上は島に着いてから。今は美しい島をただ眺める。
観光客の振りも大変。財宝を求めやって来ましたなどと言えば追い返される。
最悪島の者が徒党を組んで襲いかねない。それではさすがに逃げ切れない。
島を逃げ回る力はないし泳いで帰ろうなどと無謀を通り越して自殺行為だ。
ただ言う通りにして怒らせないようにうまく対処するしかなさそう。
「いいかいお客さん。島に着いたらなるべく大人しくしてるんだよ。
勝手に歩き回ったり写真を撮るのはやめるんだな。後はご自由にどうぞ」
そう忠告して島まで送るとすぐに引き返そうとする。
どうやら無闇に近づくなとの教えに従っているよう。
到着!
ふう…… 丸二日をかけてようやくたどり着いた有人島。
ここには一体何が待ち構えているのか? 今はワクワクよりも緊張が勝っている。
どうしたって悪い噂は聞くからな。
ここの者は人間ではないとかその手のおかしなもの。そんな噂などどうでもいい。
ただ真実。この島の真実を知りたいだけ。いや違うな。財宝を手に入れたいだけ。
財宝を手に入れればこの島など用済み。さっさと帰るさ。
ただ財宝をどうやって持ち出すかも考えなくてはいけない。
「おーい! 一週間後だからな! 気を付けろよ! 」
そうやって気を遣ってくれるだけで嬉しいもの。
今まったくの見知らぬ土地に入る…… いやもう入った。
船はもう戻っては来ない。迎えに来るのは一週間後。
ここはヘリも近づかない魔のゾーン。
脱出の手段は船しか残ってない。しかも一週間後の船では財宝は隠せない。
これはもう現地の者の協力が必要不可欠。さあどうするかな?
いくつもの試練を乗り越えてようやく財宝にお目に掛かれるかどうか。
独り占めするとなったらそれ以上の労力が必要になる。
少しだけ後悔してる。
でも前を向こう。これは人類にとって偉大な一歩になるのだから。
その手伝いができればなと柄にもないことを思う。
当麻博士が長年追い求めていた財宝がこの三島のどこかに眠っている。
それは間違いない。
ああ…… もう混乱中。
「もし…… もし…… 」
どこからともなく聞こえる女の声。これこそが伝説の天女?
それとも似ても似つかないただの人か?
この島を調べるにあたっていろいろ知識を詰め込んで来た。
その一つが天女伝説。果たして本当にそのようなものが存在するのか?
財宝の道しるべだと当麻博士は考えてるようだが。
と言うことは天女はそう簡単には見つからないんだろうな。
漠然とした感覚。興味もあるし何なら自分の手で解明してやろうとも思っている。
それはやり過ぎだと思うこともあるがでもここまで来ては引き返せない。
この共同研究の成果を示すことができれば一躍有名人。大金持ちになれる。
本心からではない。ただそれくらいの意気込みが大事ということだ。
それだけは忘れてはいけない。そうしないとただの観光だから。
観光ね…… これだけ自然に囲まれた島を巡るのはそれはそれであり。
いつか再び訪れた際にはゆっくり島を巡ろうかなと考えている。
「あなたは本土から来たんですか? 」
本土がどこなのかいまいち分からないが適当に合わせる。
恐らく彼女の言う本土が都会と言う意味ならそうだろうし。
もし三島以外の意味だとしても成り立つ。三島以外に決まってるだろう。
「はい。東京から。と言っても外れですけどね」
「ごめんなさい。素敵なところなんでしょうね。ですが私には分からないんです」
東京も都会もただ話に聞くだけだそう。島からほとんど出たことがないのでと。
謝られてもどうしようもない。こっちも謝っておくか?
どうやら島を訪れた者は例外なくこの女性の元に案内されるようだ。
「東の果てからやって参りました」
東京では分からないので改めて自己紹介。
「それはそれは遠いところからわざわざ。暑かったでしょう? 」
気の利く女性。まさかの彼女がこの島の案内役? コーディネーター?
真面目で大人しく気遣いのできる人。島の女性は皆こんな感じなのかな?
「ここはどのような? 」
博士が丸を付けていた。自分では調べたつもりだが現地の者に聞くのがいい。
「こちらへ」
無口でそれ以上は話そうとはしない。
どうしたんだろう? まさか私を警戒しているのか?
とりあえず女性の家に泊めてもらうことになった。
これで野宿せずに済みそうだ。念のために寝袋も用意したが不要だったな。
「それでは参りましょうか? 」
彼女の名はサザナミ。
「ではまずこの島の成り立ちから…… 」
どうやらこの様子だとお世話係兼監視係なのだろう。
勝手な行動をすれば報告されるし止められもする。
世話係のサザナミによればここは台風からの脅威から逃れ続けた奇跡の島だそう。
三島からなるこの地域をミハマと呼ぶ。
博士の資料通り何百年前までは行き来が可能だった。
そこから少しずつ離れて行き現在のように船を使わねば巡れなくなってしまった。
ただそれも自分の目で確認した訳ではない。あくまで話に聞いただけ。
資料とサザナミに先ほどの船頭の話を元に一致したに過ぎない。
何はともあれついに降り立ったのだ。このミハマに。
続く




