旅立ち
【ミハマシマシマ】
まるで暗号のようだがそこが何なのか誰も知らない。
しかし共同研究者の当麻博士によればその長年の謎が解けたと言う。
ただ信じていいものか。博士はユニークでは言い表せない程抜けたところがある。
絶対の自信があると断言する。それならば全面協力しようと言うことになった。
ミハマシマシマ調査直前に足を骨折する大怪我で静養を余儀なくされた博士。
警察によれば突き落とされた可能性もあるから充分気をつけるようにとのこと。
だが中止はもうあり得ない。そこで私が単独でミハマシマシマを探すことに。
当麻博士の想いを胸に旅立つことを決意。と言ってもまだ博士の許可は得てない。
極秘に調査を始めている。狙いは島にある金銀財宝なのだから。
博士の思いは受け継ぐが決して代わりでない。あくまで自分の意思で財宝探しに。
チーム当麻ではないのだ。それだけは肝に銘じなければならない。
これが訳の分からない冒険に出たいきさつ。
当麻博士の想いに応えようと必死に己を奮い立たせている。
いくら共同研究者だとしてもほぼ研究は当麻博士に任せっきり。
ただ訳も分からず手伝いをしていただけ。
助手に過ぎないこの私が果たしてこのプロジェクトを引き継げるのか疑問。
とにかく詳しい資料は手に入れた。
後は資料に基づいてその伝説の島を探せばいいのだがそれが上手く行かない。
謎を解くにはまずその島を探すことが先決。
当麻博士の資料の一つに地図がある。
詳しくはない大雑把な地図だ。それだけではどこか不明。
目的の島にマジックで丸を付けている。ここがその伝説の島なのは間違いない。
博士に話を聞ければいいのだが…… ただ一度お見舞いに行った時には忘れてた。
そう当麻博士は少し記憶が混乱している。怪我をした時に頭でも打ったのだろう。
それだけでなく年も関係している。物忘れもここ一年で目立つようにもなった。
このまま入院すれば財宝に関する手掛かりは消失するだろう。
もちろん現場復帰すればその責任感からすべてを思い出すに違いない。
その時間があるかないかはその時になってみないと分からない。
年老いた博士に頼っていてはいつまで経っても見つけられず夢に終わる。
とにかく前に進むしかない。前進あるのみ。
万全な態勢を整える為にも助手を雇いたいがそれも難しい。
助手のくせに何を抜かすと博士なら言うんだろうな。
でも今まで二人でやってきたものを一人で背負い込むのは思った以上に疲れる。
プレッシャーも日ごとに増していく。
はっきり言えば失敗が許されない状況まで追い込まれてしまっている。
研究所も成果が出なければ切り捨てられるのは当然のこと。
それでも博士が資産家ならいいのだがちょっと裕福なだけ。
私なんかは拾われた身だからどうにもならない。
研究を続ける為にも成果を上げる。ビックプロジェクトを成功させるしかない。
ただ皮肉なことに成功すればもうプロジェクトは完了してしまう。
とりあえず地図を手掛かりに図書館で調査を進める。これが基本。
うーん。だがにらめっこしたところで何も出てくるはずもない。
ただ時間だけが過ぎて行く。できればすぐにでも行きたい。
その島は他の研究者も調べている。
ライバルに先を越される前にどうしても謎を解いて財宝を。
しかし博士は秘密主義の人で何も知らせてくれないし触らせてもくれなかった。
きっと独り占めしようと言う魂胆があったのだろう。信用されていなかった。
今ではそんな風に思う。いやこの際それはどうでもいいこと。
その信頼ゼロの私が宝探しするんだから感慨深い。
今はそんなことよりもこの地図の丸印の当たりをつけるのが先決。
ああ…… もしお宝が目の前にあったら…… そんな妄想を抱く。
まずは誰にも気づかれないように隠すよな。
そしてちょっとずつ移動させて独り占めする。
当然博士には謝礼として山奥に豪華な研究施設を作ってあげよう。
今までの恩義は決して忘れない。
それから一週間。手掛かりもなく一日中研究室の整理をしていた。
資料の山から強風で飛ばされた数枚の資料に目を通す。
そこには何と目的地への行き方が記されていた。そう博士はすでに動いていた。
行き方もその島の歴史も言い伝えに伝説も細かく調べ上げていた。
それなのに共同研究者のこの私に一言も言わずに同行させる気だったんだろう。
こき使うだけこき使おうとしてたな。怪我したのは罰が当たったからに違いない。
依然気になるのはまだ現地に行けてないこと。
その日に行こうと思えば行けたはず。私を誘うかはどうでもいい。
迷っている時にどう言う訳か足を骨折して入院することに。
私はある意味託されたと言っていい。だがどうする?
こうして準備を整え博士に出発の挨拶をすることに。
もうここまで来れば文句ないだろう。止められもしないさ。
トントン
トントン
「どうぞ。ははは…… ああ君か? 」
何だかぎこちない。笑顔まで見せるが目の奥は笑ってない。
「当麻博士お久しぶりです。お元気でしたか? 」
共同研究者として当然見舞いぐらいはする。
「ははは…… 見ての通りだよ。この足さえ完治すれば今すぐにでも…… 」
お元気らしい。退屈な毎日に飽き研究に戻りたくてウズウズしているよう。
これは患者にとってはいい傾向。でも私としては複雑。
「旅立ちの挨拶をと思いまして。どうぞご理解ください」
筋は通す。でもきっとこの私をライバル視してるのは間違いない。
ただの形だけの共同研究者の私をライバル視しその能力を恐れた。
それはある意味私の能力を認めたとも取れる。
「ああ…… 何のわだかまりもなくとはいかないがな。さあ行くがいい若者よ!」
観念したのかついにお墨付きを与える。これで何の気兼ねもなく旅立てるぞ。
「それでお土産は何がいいですか? 」
「ははは…… 饅頭でもいいがやはり金銀財宝をこの私に。探し出してきてくれ」
そう言うと別れの挨拶もせずにさっさと横になる。
もう眠るそうだ。疲れたのだろう。ゆっくり休むがいい。
こうしてついに旅立つ。
目指すは伝説の島。
続く




