表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミハマシマシマ 天女の棲む島  作者: グミさん
18/44

挨拶

ミコトの姿が見えない。どうしても気になって確認することに。

どうやら彼女は毎朝沐浴しているそう。


「どちらで? 」

しつこく聞く。粘ればきっと教えてくれるさ。

「それはどこかとしか言えない。と言うか本気で覗く気かい? 」

「へへへ…… はい」

さあ反応を見るとしよう。

普通の男なら沐浴と言われた見学の一つぐらいしたいと思う。それが自然。

島民は沐浴を神聖化していれば何と罰当たりなと憤るに違いない。

そもそもミコト自体を天女様と同一視して神聖化してるとも充分考えられる。

ここは反応を見て様子を探るとしよう。


あれ…… あまり変化がないぞ。表情を一切変えてない。

「だったら許可を得るんだね。事前にミコトに頼むんだ。

そうすればきっと見せてくれるだろうさ」

どうもおかしい。娘が覗かれるんだぞ。本気なのか?

絶対にダメだと強く言うべきじゃないのか? それが親だろう? 母親だろう?

最後の砦であるはずの母親がまるで勧めているかのよう。

信じたくはないが娘を利用してないか?


「本当にいいんですか? 」

「まあいいだろう。好きにするといい。あんたには負けたよ」

主人までそう言う。どうしてしまったんだ? おかしいよ。絶対におかしい。

思いっきり叱りつけるのが普通だろう? それとも私が間違っているのか?

「よしその時はこの私が付き合うとしよう」

付き添いで覗こうとするナガレ。付き合えと誰が言った? これも男の哀しい性。

たかが田舎の島娘の裸を見たところで別にどうってことはない。

しかしこの男は危険だ。興奮して何を仕出かすか分からないぞ。

そんな風に見える。舐めてはいけない。その手の欲望には際限がない。

「よしもう食い終わっただろうし。挨拶がてら案内してやるよ」

主人の誘いで予定通りに南地区を散策することに。


「おう! これが例の…… 」

中心街に行くとすぐに寄って来る男ども。観光客がよっぽど珍しいのだろう。

サザナミが言う通りなら今年に入って初めての客と言うことになる。

しかし南地区には昨日着いたばかりで姿を見せてないはずだが。

もし知ってるならそれは前から知っていたことにならないか?

それとも主人か奥さんが話して回った? しかしそんな時間はなかったはず。


「初めまして。アキラです。皆さんどうぞよろしく」

最初が肝心。二人に連れられて余裕があるから元気に挨拶する。

まあ海外に行けばこれくらい普通で挨拶は基本中の基本。

相手を真似るところから。そして反応を窺う。

ただ笑っているだけだと分かり辛い。歓迎してるのかしてないのか?

怒ってるのか認めてくれてるのか? 正確なところが測れない。


時間をかけてゆっくり溶け込んでいく。そうやって関係性を築いて来た。

この手間を惜しんで強引に仲良くしようとすると拒絶される恐れがある。

もちろんそんな地域は珍しく出会ってからすぐに気に入られる場合がほとんど。

それにここは日本だ。言葉の違いも文化の壁も恐らくないはずだ。

ただ何であれ慎重であるべき。

当麻博士からも挨拶が肝心。

第一印象で大体決まるからしっかりしろと言われていた。


「あらら…… きちんと挨拶のできる子じゃないか。いくつだい? 

どうも若く見られる傾向にある。博士のところに来て何年にもなるんだけど。

海外なら分かる。でもここは都会から離れてるとは言え日本だ。

いくら幼く見えてもそう言う態度はないだろう?

子供なら一人で来るはずがない。舐めてるのだろうか? 下に見られてる?

「もう二十代後半ですよ。残念ながらそんなに若くない」

「いや俺らに比べたらあんたは凄く若いさ」


この島も例に漏れず若者が島の外に逃げ多くがお年寄りで構成されてるのだろう。

このままでは悲惨な末路を辿るだろう。しかし私にはどうしてやる事もできない。

ミコトのように若く幼い者は本当に僅かで貴重らしい。それはありがたいだろう。

だからって私まで同じに考えなくていい。この島の住人じゃない。

移住するつもりはない。この島が気に入れば旅行で何度かお邪魔する程度。

ここは観光には程遠いからな。どこまで人が集まるか…… ちょっと難しいかな。


まずいまずい。どうでもいいつまらないことだった。

私はここに遊びに来たのでもフィールドワークしに来たのでもない。

あくまで天女伝説と金銀財宝探し。そこを履き違えられては困る。

南地区の中心街は田舎のそれと大して変わらない。

住人も悪い人ではなさそう。笑顔で迎えてくれた。表向きはと言うことだろうが。


「あんたはこの島にどれくらい滞在するんだい? 」

ただの世間話程度だが周りの者も注視している。さあどう答えよう?

一週間後の船で帰りますと言うのが彼らにとって都合がいい。

しかしもし移住者を求めてるとしたらどうだ? 微妙なんだよな。

この村と言うか島は当然閉鎖的で。別に好きでなってるのではないと考える。

それは何もフィールドワークの経験からではなくこの特殊な地域性によるもの。

地区が分かれていて地区同士の交流さえ積極的ではない。

それなのによそからの人間をどう受け入れる。

観光客で一週間程度ならそれこそ笑顔でいい。

だが長期滞在や移住となったらそうもいかない。

どっちだ? このナガレがその住み着いた特殊な例だが……


「そうですね。できれば長くいたいな。でもそちらにも事情があるから…… 」

中途半端は本来どちらにもよくない。だがこの場合はこれがベストなはず。

ちょっとでも相手の機嫌を損ねたらトラブルに発展しかねない。

ここは大人の対応が求められる。

「ははは! そうかいそうかい。だったら歓迎するよ。お腹空いただろう? 

そう言って南地区唯一の食堂に案内される。

これでどうにか島に溶け込めたかな。


                 続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ