夢と幻想
当麻博士の研究所。
「博士? どうしたんです? 」
「それが長年研究してきたミハマ島の正確な位置が判明した。
当然一人では無理だった。博士仲間の協力もあってどうにか突き止められた。
長年の夢だった天女伝説のあるミハマ島を発見した。これは世紀の大発見だ。
今までの歴史そのものが変わるような大発見なのだぞ! 」
興奮して何でも喋るのが博士の悪い癖。ただこちらからすれば大助かり。
秘密主義もいいがもう少し私を信用してもいいのに。
「はあ…… それはおめでとうございます」
「何だその態度は? 大発見をしたんだぞ? 嬉しくないのか? 」
どうやら博士はこの大発見を共同研究者で助手の私にも喜んで欲しいようだ。
しかし初めて聞く話ではっきり言ってどうでもいい。
それよりも今進めている研究を仕上げるのが先決では?
一切関係がないんだもんな。また違う方向に行かれては遅れるばかり。
それで楽になるならいいがきっとスケジュールがひっ迫する。
学会での発表も来月にあるんだからいい加減寄り道しないでくれよ。
これではただの現実逃避だ。やる気がなくなるとすぐ逃げる。
もはや夢か妄想の類だよ。年老いたからもっと危険なものかもしれないが。
お願いしますよ大博士様!
ふう…… また明日から忙しくなるのか。仕事を増やしてくれて困った博士だな。
聞かされた時はショックだった。嘘偽りのないただの面倒ごととして捉えていた。
しかし大発見のミハマ島の天女伝説はよくあるいい加減なものではないらしい。
伝説が金銀財宝を指し示す鍵と聞けばもう涎が垂れるばかり。
何としても解明して独り占めするのだ。
これこそ男のロマン。それで仮に博士が犠牲になろうとも構わない。
「それでいつ行かれるんです? 」
「来月には行くつもりだ。この話は奴らにもしてしまった。
急がないと先を越される恐れもある。だからなるべく早く」
興奮して現実が見えない博士。いつもこうだ。間抜けにもほどがあるだろう。
大体私を蔑ろにせずにきとんと情報を共有しないといざと言う時に困る。
ライバルに自慢してないでいち早く私に知らせてくれよな。
おっと…… つい今度の旅を聞かされた時のことが夢として現れたようだ。
当麻博士は思ったより若いな。これは願望の表れか?
頑固爺と一緒の旅も研究も疲れるからな。
フィールドワークに行くとそう簡単には帰れない。
たまにホームシックに掛かることもある。最初の頃は特に酷かった覚えがある。
今博士はどうしてるかな? まだ足はよくなってないだろう。
看護師や医者に文句言ってなければいいが。やり過ぎて捕まらないといいけど。
ははは…… 離れると意外にも寂しくなる。そんな人間ではないんだが。
目を覚ますと隣でいびきを掻いて寝ている自称研究者のナガレが気になる。
本当に彼の言うことを鵜呑みにしていいのか? 博士だったかはどうでもいい。
そうではなく彼がこの島で私と同じような体験をしたのか?
本人の主張のみで何一つ証明されてない。
ミビちゃんのマスコットキャラは彼の作品らしいが。
それを考えればただの口だけの博士とは言えない。信用していいものか……
それは私も同じか。この島の者もそれは言える。
今お世話になってる親子が本当に親子かとか? ミコトは本当に存在するのか?
疑い出したらきりがない。考え過ぎだよな。
もう信じる意外方法がない。それは分かってるんだけど。
天女伝説や実際天女を見れば何が正しいか分からなくもなるものだ。
ふう…… まだ日は出てない。もうひと眠りするか? いやこの臭いでは無理。
昨日は疲れていたからどうにかなったがさすがに快適とは言えない。
寝袋でも使うか? うーんどうしよう?
とりあえず朝の散歩でもしてみますか。
サザナミによればこの島の者はいい人ばかりらしいから問題ないでしょう。
では行くとしよう。
朝。南地区を散策。
うーん。気持ちいいな。潮風と波の音が心地よい。心が洗われるようだ。
ただこれでは眠気が覚めるどころか逆に眠くなる。
結局昨日も今日も寝不足気味だからな。ここに来て眠りが浅いのも気になる。
長い旅だから睡眠はなるべくとって体調を崩さないようにしないと。
いや待てよ…… これも何かの導きなのか?
島の朝は暑くない。どちらかと言えば肌寒いかな。
半袖では少し冷える。一枚羽織るものがあった方がいいな。
ただ南の島と考えていたので大した防寒具を用意してない。
とは言え朝の散歩だから。これは昨日も思ったこと。
慣れるまではちょっと体はきついけどそれでも適応してると思う。
ホームシックになることもない。当然だよな。ここは外国じゃない。
日本に変わりない。ある意味自然豊かで昔の日本を思い出す。
ノスタルジーを感じられるところではあるけど。
フィールドワークは海外が基本だから食いものもまるっきり違う。
それに引き換えここはこだわらなければ食は悪くない。こだわらなければね。
南地区に滞在。島の南側にあるのだろうがこれはどこを中心にしたかで変わる。
当たり前だが向きを逆にすればこっちが北にも取れる。
ただ地図上はやはり南に位置していたからそれに従う。
研究所から列車にバスに飛行機を経由して最後にあの頼りない船で上陸。
長い時間南下を続けてようやくこの島にたどり着いた。
長旅などと言えるレベルじゃない。
一飛びできたら楽なんだけど……
当然島まで飛行機で一気にとは行かない。この島には空港がないからな。
あるのはヘリポートぐらいだろうが見た訳ではない。資料には書いてある。
そもそもここは魔のゾーン。離陸も着陸も不可能の恐ろしいところ。
ただ難しいだけでなく必ず良くないことが起きる呪われた島。
それだけでなく深い霧が掛かっているので避けて通ることになる。
霧が晴れるのは早朝の僅かな間と台風などで荒天の時ぐらいなもの。
いやこれも資料によるもので正確にはまだ何一つ分かってない。
続く




