村長の変遷
任務に忠実なディファイを邪魔者扱いし火山守から無理やり降ろす。
村長の裏の一面が垣間見えた気がする。
まさか気に喰わないと火山守をやめさせるなんてどれだけ横暴なのか。
これでは村長に歯向かったり意見すれば誰であれ地位を剥奪されてしまう。
あまりに強権的で自分勝手。暴走老人の成りの果てだ。
私が怒りに震えてるぐらいだからディファイも相当だろう。
同情するぜ。こんなわからず屋の村長がトップに君臨し続けてはいけない。
あり得ない。いやあってはならないことだ。
百害あって一利なしのとんでも爺。
「待って…… それはいくら村長と言えど納得できません! 」
さすがのディファイも黙ってられない。それほどのこと。
「ディファイよ。別にお主の能力を疑ってはおらん。よくやってるとさえ。
しかしお主は火山守だと言うのに実際には何も見てなかろう? 」
村長は痛いところを突く。
それではディファイはただ黙るしかない。
無闇に近づく者を速やかに追い返すのが彼の主な役割。
実際に火山を間近で見る必要もない。
「待ってください! ディファイは優秀な火山守です。
あなたの教えを守り実践したに過ぎません。
決して無能とかではなくあなたの言いつけを守る立派な火山守。
さすがにそれは言い過ぎでやり過ぎですよ村長! 」
つい庇うがよそ者が口を挟めばロクなことにならない。
それは百も承知なのにどうしても我慢できなかった。
「ふふふ…… アキラ君も青いな。村の者を庇って睨まれてどうする?
なぜ非情にならない。こいつはお前の何だ? 仲間か? 恋人か?
仮にそうでもそれは島での話。島を離れれば赤の他人。
これは村のこと。余計な口出しをしないでもらいたい! 」
村長は頑なだ。ディファイも従うしかない。そうしないと村を追い出される。
大体ディファイは島の者じゃない。流れ着いたよそ者。ナガレと同じだ。
それを庇ったところで煙たがられるだけでメリットはない。
だからって放っておけない。
「ですが村長! 」
「待ってくれアキラ。これ以上はいい。俺は従う。それがこの島の掟で現実さ」
もはや村長の我がままには誰も付いていけない。傍若無人。
皆恐れて村長に何も言えないのだろう。
それだけ長いこと村長として君臨し続けた結果でもある。
「ディファイ…… 」
「ふん。そう言うことだな。しかし島の現実だからではないぞ。真実だからだ。
よく見るがいい。ディファイもアキラ君も来るがよい。これが島の真実だ!」
こうして村長は決断する。
実は見た目に反しまともな人間だった。そんなありもしない幻想を抱く。
「はあ? 」
二人で失礼な返しをしてしまう。仮にも村長に多変失礼な態度。
それほど衝撃だった。と言うより意味不明だが。
常日頃から年配者を敬えと博士から言われていたのに何と言う失態。
これで村長に目をつけられたら中島と同じ徹を踏むことになる。
大人げないがどうしても我慢できない。
「驚くこともあるまい。ディファイも知りたかろう?
アキラ君だってそうに違いない。儂は二人を驚かせたいんだ。
どうだ。誘いに乗ってくれんか? 老人の戯れだと思って願いを聞いてくれ!
お前たちは島の人間じゃない。だから仮に真実を得たところで驚くのみ。
それ以上のことはしないしできないと儂は考えている。どうだ?
老人の気まぐれだ。これくらい構わないだろう? 」
村長は無理やりにでも真実とやらを見せたいと熱心に口説き落とす。
これはもしかすると願ってもないチャンスではないだろうか?
気分を害さずに気まぐれにお供すれば少なくても満足はするだろう。
その上村長から島の秘密が暴露されるのだ。
このチャンスを逃してはならない。絶対にものにするぞ。
「もちろん村長の命令は絶対ですよね? 」
「ほお…… さすがはフィールドワーカーだな。ではついて来るな? 」
「はい! 喜んで! ディファイもそうしよう」
村長の代わりに説得する。態度を翻した私を裏切り者と考えてるかもしれない。
だがそれでもいい。今は少しでもこの島の真実に近づけたら。
もちろん村長の言うような真実が存在したとしてだが。
「まあお前がそう言うなら付き合ってもいいさ」
こうして村長の後について山を登ることに。
ここは危険な山だ。火山が噴火すれば大惨事は免れない。
噴火した時はそれは酷いものだったと語り継がれている。
だからこそ島民は近づかないように口を酸っぱく言われてる訳で。
村長のお許しがあるとは言えタブーを犯そうとしている。
そんな我々を果たして山の神がお許しになられるだろうか?
怒りから大噴火を起こすことも十分に考えられる。
とにかく何事もないように願うしかない。
今我々は聖地へと足を踏み入れる。
火山守さえも想像もつかない場所。そこには一体何があると言うんだ?
「さあ心の準備だけはしておけ。驚く用意は万端だな?
恐らく後島で唯一山に登ったのはこの儂だけ。
仲間はおろか家族にさえ語って来なかった真実がここにはある」
村長は自信満々。嘘を言ってるような感じはない。
すると見えるのか? 何か見えてはいけないものがそこから見えるのか?
それとも山には何かがある? 何にせよ今私たちは真実に迫ろうとしている。
一歩一歩着実に。そうして真実が見えて来るのだ。
「村長。戯言はそれくらいで。引き返された方がよろしいかと」
ディファイは信用せず自然の脅威に怯えている。
もし次噴火すればどうなるか分からないと慎重な姿勢を崩さない。
もう引き返そうとするディファイの気持ちも充分理解できる。
「ほれもうすぐじゃ。一度決めたことを守らずにどうする? 」
村長はもう間もなくだと笑う。仕方なく愛想笑い。
「暗くなる前にその姿を目に焼き付けるんだな」
一歩一歩山を登る。本来なら火山に近づく者は排除されるはずだが今は自由。
「そろそろ下を向くか目を瞑ることを勧める」
いきなりだと刺激が強すぎると言うことらしい。
村長なりの配慮。大人しく従うとしよう。
「よく来たなお前たち。歓迎するぞ! さあ改めて見るがいい!
これがこの世界の真実だ。ははは! もう誰も止められない。
アキラ君にはきっと満足してくれると信じている」
村長のもったい付けたお喋り。これは相当なものだろう。
では頂上の景色を楽しむとしよう。
目を開ければ何かが見える。それが分かっていても目を開けられない。
どうしたと言うのだろう? それほど村長の言葉には重みがある。
嘘や戯言ではない。村長は私に伝えたいのだろう。
「おい! 何だこれは? 」
思った以上の反応を見せるディファイ。一体目の前には何が広がっている?
もったいぶってまだ目を開けずにいる。それは単なるこだわりとかではない。
開けられないのだ。心の整理がついてない。
しかし村長はそんな情けない私を許してはくれない。
「どうしたアキラ君? 真実を探しにやって来たのであろう?
目の前にそれがありながらまだ開かぬか? 」
決心がつかずに目を瞑ったままの私に問い質す
「いやこれは見ない方がいい。島民にどう説明していいか…… 」
ディファイは黙ってられないと悩む。それほどのことなのだろう。
「ほれ早くせんか! それともこのまま何も見ずに戻るか?
情けないがそれもお前の考え方だ。否定はせん。好きにするがいい! 」
村長は厳しい。すると村長には何らかの役目があるのだろうか?
いくら言われようと自分のタイミングがある。
島の真実でありミハマ島全体の真実でもあるのだからそう簡単いは行くか。
瞳を開ければすべての答え合わせができる。
果たして山の頂上には一体何が見えるのか?
続く




