倉でお宝探し
メイと兄にムネガさんの四名でカトー家の所有する大きな倉の前までやって来た。
お婆ちゃんから話は聞けず店主の嫁さんから倉を紹介された訳だが。
倉か…… 果たして倉などに求めるものが本当にあるのか?
少々不安。時間の無駄にならないといいんだが。
「それでは鍵を…… いけない。家に置いて来てしまいました」
いくら探しても肝心の鍵がないそう。
申し訳ありませんと謝罪の言葉を繰り返すミサキさん。
かなりおっちょこちょいで間抜けで憎めない性格。
そう言うところは共感できるな。でもサポート役には不適切か。
これでは待ち合わせした意味がないじゃないか。
「いえ…… それより早く頼みます」
一分でも惜しい。言い訳はいいから急いで取って来てくれたらな。
「どうしましょう? 往復すると一時間…… うわごめんなさい! 」
謝罪されるが鍵がないんだから謝ってないで取りに行ってくれよ。
でもさすがに親切にも協力してくれる者には強くは言えない。
大体年上の者を敬えと常々博士から言われてたからな。
失態は失態だが失敗も失態も誰にでもあることさ。
「へへへ…… 随分お困りのようですね」
なぜかメイの兄が自信満々に格好をつける。
そう言えば何かの役に立つだろうと連れて来たんだった。
人手は多いに越したことはない。
誘わなくても妹思いの奴のことだから勝手について来ただろうが。
「どうしたのお兄ちゃん? まさか何とかなるの? 」
メイの目が輝く。これは兄としての見せ所だぞ。
でもきっと大した閃きじゃないんだろうな。期待させるだけ期待させるパターン。
「脚立がありましたよね。確か倉の影にホラ…… 」
そう言うと脚立を立て押さえるようにと。
しかし誰も反応しないので結局誰も押さえない。
「大丈夫ですか? 」
ミサキさんはそう言うだけでやはり押さえようとしない。
不器用でおっちょこちょいだからと関わらないようにしてるようだ。
「大丈夫って…… 嘘だろう? 」
せめてメイが押さえてやればいいのに。兄に冷たい。
「仕方ないね」
ムネガさんが押さえる。
ミサキさんと私は単純に何してるかよく分かってないだけだがメイはどうか?
呆然とするミサキさんをあざ笑うように兄が倉突破に掛かる。
さすがは覗きの常習犯だけあってその手のことには情熱を燃やしている。
手際もいい。立派な倉庫破りになれるぞ。島に留めておくのはもったいない。
「ほら開いてた」
そう言うと兄はドンと音を立て姿を消す。残ったのは脚立のみ。
本当に大丈夫か? ムネガさんも大げさに驚いている。
一分もせずに倉の鍵が開いた。
南京錠はなくそこまで厳重に管理されてない。だから簡単に扉から入れる。
「凄いなお前! 見直したよ。さすがはメイのお兄ちゃんだ」
褒められるだけ褒める。今までの失態が帳消しになるほどの頭脳プレー。
「そこまで言われると困るぜ…… ガキの頃にこんな風に遊んでただけ…… 」
「お兄ちゃん凄い! 全然らしくないよ! 」
メイに見直されて上機嫌の兄。よかったな。
「そう言えばまだ名前を聞いてなかったな」
「嘘を吐け! 最初に名乗ったぞ。忘れるな! 俺はハルだ! 」
こうしてついにハルと絆を深めた。そんな気がする。
「あの…… いつも勝手に入って倉を荒していたのはあなただったのね」
ミサキさんが呆れる。自分で告白したようなもの。これは仕方ない。
「違う! 他にも何人かで…… うわまずい! 」
どうやら数名の仲間がいたようだ。
「ははは…… 今はそんな時じゃない。なあアキラ? 」
いつの間にか馴れ馴れしい。
勝負に負けて言うことを聞いてた情けない兄はどうした?
味方してもいいが巻き込まれるのだけは勘弁。
倉庫破りの件は島の問題であり私には全然関係ないんだから。
「許しません! 村長に…… 」
「まあまあミサキさん。ここは私に免じて許してやってください」
仕方なくハルを守る。まったく世話の掛かる自慢の兄だぜ。
「分かりました。そこまで言うのでしたら」
納得してくれたらしい。これでいい。
「ではハルの努力に報いるためにも行動開始! 」
「オウ! 」
ついに島の秘密もナギサの母の謎も解決する時が来たよう。
それだけではない。島に眠る秘宝にも一歩近づくことになる。
「なあこれは何だろう? 」
埃まみれの書物を発見したハル。
どうやらこれこそが求めていたものらしい。
「どれどれ…… 全然読めない」
昔の書物らしく皆目見当がつかない。
ただ島の歴史について書かれてるのだけは何となく分かる。
ここは地元の奴に任せるのがいい。自分は余計なことをしないに限るぜ。
「これは無理だわ。お婆ちゃんに聞くしか。でも持ち出しはできないの。
お婆ちゃんの体がよくなったら確認してもらいましょう」
ミサキさんは目を瞑る気はないらしい。
とは言え幸先がいいのは確か。もっと徹底的に。
「よしお前たち手分けして探すぞ! 」
こうして二時間ほどかけ手掛かりになりそうな書物を中心に手分けして探す。
「どうだ。あったか? 」
「まともなのはないな…… 」
思っていたより大変。整理されてないからどこに何があるか分からないそう。
倉整理が先だろうとミサキさんは言うがそれはもっと前にすべきだろう。
放置したままでは結局後の者が困ることになる。
「ムネガ…… 大きくなる? 」
ムネガさんは文字も読めないのに図だけで判断しバストアップの本を手に取る。
大胆にも実践するが男の私にはイマイチ分からない。
メイに聞いてみたいが不機嫌になると困るのでやめる。
「気になるのは分かるが関係あるものを探してくれ」
指示役がいないと誰も動こうとしない。するとどんどん時間だけが過ぎていく。
それはもったいないこと。もちろん私だってそれっぽいものを見つけた。
だが手にしたのは大して歴史的価値ないものばかり。これではどうしようもない。
二時間掛けて役に立ちそうなのは二冊のみ。
一冊はさっきの島の歴史書。いわゆる郷土史って奴だ。
もう一冊は伝説集。これも事前に調査したものを大きく超えることはないだろう。
倉から無造作に取り出した書物はすべて博士が調べ上げたものと大差がない。
収穫は胸が大きくなる本ぐらいだけどこれだって迷信だろう。
当てになるはずがない。だが一応は借りることに。
ただ持ち出しに気づかれたらただではおかないので黙ってるようにと。
ミサキさんとしても協力したいが貴重な資料を失くされても困るので。
管理を任されてる以上責任はあるそう。
「ごめんなさいね皆。これ以上はちょっと…… 倉の整理をした後でね。
それまでは島で遊んでいてね」
ミサキさんはただの遊びだと思ってるらしい。歴史的価値など興味ないのだろう。
そう言う私だって特に興味はない。しかしここにはお宝に繋がる情報が必ずある。
それを早く見つけないければ。嫌な予感がする。
「手伝いますよミサキさん」
「それはダメです! お客様の手を煩わせるのは忍びないですから。
島の自然を楽しんで思いっきり観光してきてください。
その間にお婆ちゃんから詳しく聞いて目的の品を用意しておきますので」
ミサキさんは一度言うと聞きはせずただ楽しんで来てとだけ。
それならなるべく早く頼みますと無理を言う。
失礼だと分かってはいるがもう本当に時間がない。そんな気がしてならない。
この島はのんびりしていて穏やかで監視もなく狙われる心配もない。
ずっといてもいいぐらい。だが自分には目的を果たす義務がある。
それに何となくだけど早くしなければならない理由が。
避けられないと勝手に考えている。
こうしてミサキさんに倉の整理を任せ今日はもう遅いので帰ることに。
続く




