メイちゃん
後島に来たのは昨日の朝。
だから後島を案内もなしに歩き回るのはこれが初めて。
サナギが頑固だから怒ってしまい勝手に一人で帰れと無茶を言う。
娘がいくらかわいくて大事だからって私を突き放さなくてもいい。
つまらない噂に踊らされてどうする? 二人には本当に何もないっての。
身近で見て来たあんたが一番分かってるくせになぜ動揺する? 情けない。
「ごめんなさい! 」
帰り道をぼうっと歩いてると小さくてかわいい女の子がぶつかって来た。
まるでマキナみたいだが神聖さは残念ながら感じられない。
すると生まれ変わりの可能性は低いか? だがもしもの場合がある。
見逃したとあっては後悔しても後悔しきれない。
「ああ…… いいよ。それより君は天女の生まれ変わりだったりする? 」
突然訳の分からないことを呟く怪しげなよそ者。
彼女にとっては危険で警戒すべき存在なのはよく分かる。
「はあ何を言ってるの? そんな手に引っ掛かる訳ないでしょう? 」
生意気な女の子。どうやら私がナンパしたと思ったのだろう。だったら……
せめてお名前だけでもと付きまとう。
どうせ暇でやることがないので時間潰しにはいいだろう。
相手の気持ちを無視し強引に聞き出す。粘れば相手も必ず落ちるさ。
いつの間にこんなおかしな自信がついたのか? ラボではこうではなった。
やはり中島での経験が過信に繋がっている。
中島では穴と言うのもあって島民から尊敬されココからもご主人様ご主人様と。
マキナもトワナも私を争った。あり得ないような成功体験が墓穴を掘ることに。
「ちょっと…… ついて来ないでよ! 」
迫ると強烈なビンタを喰らう。当たり前の反応。ただ気になるので付きまとう。
最低だな。でも私には生まれ変わりを見つけねばならない。
どの島に行ってもやることは同じだ。
「名前は? 」
「メイ…… 」
「それでこの島はどんな感じ? 」
ついフィールドワークの癖が。抜けることはなさそうだ。
得体の知れない観光客に恐怖を感じてるようだがここは長閑な島では?
そこまでギスギスしてるはずがない。もっとおおらかで協力的なはず。
だがメイはまったくの逆。抵抗し続ける。生意気な。
もちろん苦手にしてる子もいるのは承知。これ以上は困らせられない。
「おいお前! メイに何をしてやがる! 」
突然男が現れると文句を言い出す。迷惑だな。
すぐに興奮して絡んでくる島の厄介者で嫌われ者。それがこの男の正体。
いや… かわいい妹が言い寄られたのだから当然か。
「島について聞いていたんだよね? お兄さんですか? 」
「そうだ! 俺がメイの兄だ! メイに絡むんじゃねえよ変態野郎! 」
酷い言われよう。どうもここの者は性格なのか口が悪い。
今回はその通りなので言い訳もできないがそれでも言い方があるだろう?
「うるさい! お前には関係ないだろう! 」
つい買い言葉に売り言葉。こちらまで興奮して無茶を通す。
「何だと? 関係あるだろうが! 兄なんだぞ! 」
意外にも論理的な兄。とは言え興奮して穏便に済ませようとはしてないよう。
困ったな。これは下手なことは言えない。ここは押し切るか。
「ない! お前は無関係だ! 」
「そんなことは僕が決めることだろうが! 」
「僕…… 今僕って言ったな? お前本当は弱いだろう? 」
決めつけに掛かる。ここでトラブルにはなりたくないからな。
「弱くない! 勝負するかこの野郎! 」
どうもこの男は戦いたくてウズウズしている様子。
「いいだろう。受けて立つ! 」
こうして妹のメイを賭けて負けなられない戦いが始まる。
「ジャンケン一発勝負だ! 」
言動が一致しない困ったタイプ。
「ジャンケンて…… こう言う時は拳と拳で戦うべきじゃないのか? 」
指摘するのも馬鹿らしい当然の話。大体口だけなら出て来るなよな。
「いいんだよ! 勝てば何でも! 僕は平和主義者なのさ」
「しかし…… 手を痛めて…… 動かすのが難しいんだ。明後日以降にしない?」
一応は様子見だ。提案に乗るなら信頼できるが続行するなら当てにならない。
「へへへ! 馬鹿め! ならば負けるものか。では最初はグーからだ! 」
こうして恐ろしく頭の悪い奴とジャンケンをすることに。
たぶん奴は私がグーを出してくると読んでるはず。だからとりあえずチョキで。
「最初はグー! ジャンケンポン! 」
そう言うとフライング気味にパーを。
どうやら完全に私の戦略に嵌ったらしい。
これほどまでに鮮やかに決まると逆に怖くなるほどだ。
「どうして…… 手を痛めてるって…… まさか騙したのか? 」
パーを要求。そこにパンチを見舞いする汚い野郎。
「おい何をしやがる! 」
「うるせいぞ! 汚ねえ野郎だ! 手なんか怪我してないだろう? 」
男の洞察力には感心する。
「ははは…… 汚いも何もない。勝てばいいんだろう?
大体拳と拳の戦いを求めてる奴が怪我してるはずない」
「それもそうか…… よし俺の負けだ。好きにしな」
こうして強引に奪う。しかし本当にこれでよかったのかは疑問。
ご褒美としてメイちゃんのお家でと二人っきりで過ごすことに。
「なあメイ。楽しいことしようぜ」
ついこの島に来てから積極的と言うか強引になってる。
それは焦りもあるがサナギの影響もあるだろう。どうしても似て来るのだ。
あの人凄く強引で人に迷惑を掛けてばかり。
「好きにしたら? 」
もう抵抗しないとかわいいな。
「さっそくだがお前のすべてを見せてくれ! 」
まずい。言い方を間違えたか? でもこれでも伝わるでしょう?
「嘘…… いいけど本気? 」
メイちゃんが急に大人っぽくなる。何か想像とは違うな。
それにしても私は何をやってるんだろう? 遠回りばかりして。
「本気だって。俺たちもう兄からも認められた。文句ないはずだ」
恐らく部屋の外で聞き耳を立ててるであろう兄にも充分聞こえるように。
「うん分かった」
そう言うと躊躇なく脱ぎだした。下着姿になったところで止める。
「おい何を? 俺はお前のすべてを見たいと言っただけで裸になれとは一言も」
言い訳する酷い奴。だがちょうどいい。万に一の可能性に賭ける。
それが男と言うものだろう。
「どう言うことアキラ? 」
もうアキラ呼び。確かにメイちゃんとの関係は兄公認。だからって違う気が。
「とても魅力的だ。だからこそ答えて欲しい。お前は天女の生まれ変わりか? 」
メイちゃんは村でもかわいいと評判の娘。誰だってかわいい娘には興味がある。
もちろん私は付き合いたいとかそう言う邪なものではない。ただ純粋に確認だ。
「私が好きなんでしょう? だから無理やり奪ってきた? 」
メイはその強引さに惚れたらしい。それは大変ありがたいことだけど。
島娘に現を抜かしてはならない。私にはまだ残された使命がある。
「ちょっとだけでいい。胸を見せてくれ。そこに印があるか確かめたい」
「アキラ…… そんな言い訳しなくていい。アキラが望むな…… 」
メイがブラに手を掛ける。
ついに天女の生まれ変わりの正体が判明するのか?
トワナのニュウニュウには下の方に明らかな傷跡のような印があった。
これが生まれ変わりに共通するものなら傷跡を持つ者こそが生まれ変わり。
後島でもやることは大して変わらない。
続く




