毒親
ついに天女の生まれ変わりと称されるミコトと接触。
これで天女伝説は動き出したことになる。
ただナガレによるとまだまだ君は甘いなと上から。
どうやら一つ見落としていることがあるらしい。
それが何なのか具体的には教えてくれない。
人生の先輩でこの島の攻略法も真実もすべて知っているナガレ。
果たしてどこまで信用していいのか?
「アキラ君もどうだ一杯? 」
島の地酒だと勧められるがコップに一杯がやっと。
度数が高めですぐに酔ってしまう。
もちろんナガレも男ももう酔っぱらっている。
後は水でお相手してから二人が眠りこけるまで話を聞く。
どっちも私にとっては貴重な情報提供者。
放っておいても勝手に喋ってくれるから酒の席はいい。
ただナガレは弱いくせに強がるから質が悪い。
まだ飲めると瓶を抱えて眠りこけてしまった。
できるなら寝ぼけて島の秘密も天女伝説も財宝の在り処も漏らしてくれたらな。
注意しないといけないのはそれが真実であるかだが。
「もうまた! ほらお客さんも! 」
ミコトが甲斐甲斐しく世話をするところはどことなく懐かしさを感じる。
これなら自分も酔った振りしてお世話になろうかな?
いや無理だ。だらしない二人に苦労してるところを見れば冗談でもできない。
本当に困った人たち。これが島での日常なのか?
だが私はこの島に酒飲みに来たのではない。財宝を求めにやって来たのだ。
フィールドワークでもこのようなことはよくあること。
当麻博士が酔っぱらって現地の人と気持ちよくなって……
そこまでならいい思い出だが何と言っても博士は絡み酒だから。
言葉もロクに通じないのにボディランゲージを交えて説教する。
今思えばよく生きて帰れたなと思わないこともない。
ほとんどが海外だったし博士のお世話に徹したからな。
そのおかげでパスポートはスタンプだらけ。マイレージも溜まった。
博士との関係も今回の旅を持って終わるのかと思うと若干寂しく感じるな。
でも助手が成長して一人前になるのを喜ばない者はいないさ。
ただ博士は普通の感覚を持ち合わせてないからどうだろう?
嫉妬深くて疑り深い性格。勘がいいとも言えるが。
今回の転落事故だってお前のせいだと無根拠に決めつけるんだから。
確かに何かあるかもと言ったのは自分だから責任はあるさ。
だからって普通は気にするなよと声をかけるものだろう?
大人になり切れない博士の迷惑を被るのは結局助手の私と言うことになる。
いい加減もっと信頼して欲しいぜ。ちょっと後ろから押しただけだろう?
おっと…… この中でまだ呑んでいる猛者がいた。
「ほらもういいからあんたは寝なって」
そうやってミコトを追いやったのは奥さんだ。
奥さんは旦那さんと同様年齢不詳。さすがに酔ってる時に年齢を聞くのは悪い。
失礼に当たる。大体酔ってれば勢いで適当な年齢を言いかねない。
ただミコトを基準に考えればある程度は想像がつく。
ミコトは見た目より年が上。言動は幼いが恐らく十代後半。十八前後と見ていい。
ギリギリ大丈夫? おっと…… いけないいけない。
「それにしてもかわいいですね」
とりあえず褒めるのがいい。褒められて嫌がる者など稀だ。
仮にそう言う態度を取っても内心では喜んでるだろうから。
手塩にかけた娘であれば余計に鼻が高いだろう。実際文句のつけようがない。
まだ幼く完成されてないが天女様の生まれ変わりと言われても不思議はない。
「ありがとう。天女様の生まれ変わりと騒いだ連中に言わせれば尊い存在なのさ。
あんたもミコトに興味あるだろう? それこそとんでもなく。隠しても無駄だよ」
真面目ぶった学者風情がいくら言ったところで本心は読めると。
失礼な物言い。これは完全に酔ってるな。だとすると本心でもあるのだろう。
「いえ…… それでミコトさんは今日はここにずっと? 」
「さあどうだったか? 午前中は出てるんでね」
よく分からないらしい。
と言うことはまだ隣島の天女は彼女の可能性がある?
まだ確証はないが絶対にないとは言えない。
「あらあらはぐらかして。相当興味があると見た。ミコトの裸が見たいかい? 」
親だと言うのに何てことを言いやがる。あまりに直接的過ぎる。
これが毒親? いやさすがに冗談か?
でも娘の裸などと下品で不適切なことを言うだろうか?
いくら男でもそれはただ不快なだけ。面白くない。裸など見たくもない。
しかし不思議なものでそう言われるとつい想像してしまう。まだ人間できてない。
とりあえずこれ以上はいい。適当に流すのがいいだろう。
「ははは…… 誰だってきれいでかわいい女性の裸は見たいものですよ」
一般論で語ってみる。これ以上危険は冒せないからな。
「しぶといね。相当なむっつりスケベだね。本性隠してるんじゃないよ!
いいかい? あんたがよそから来たからミコトも興味を抱いてるのさ。
ただそれだけだから勘違いしないでやってよね」
忠告を受ける。しかしその程度で怯むはずがないだろう?
あの天女様が彼女なのかそうじゃないのか気になって気になって。
このままでは夜も眠れないよ。これが本当の恋煩い?
「ほらもっと飲みな! 」
つき合わせようとするがここは遠慮する。
危険もあるが頭が働かないと忘れてしまう。
できれば役に立つ情報を頂けるとありがたいな。
ただ飲むだけなら近所のダイニングで騒いでるさ。
でもビールって苦手なんだよね。まだこっちの焼酎や地酒なら飲める。
不思議なことだが事実だからどうしようもない。
「それでこの島について詳しく知りたいんですが? 」
知りたいのはミコトのことじゃない。あくまで天女であり財宝のことだ。
勘違いされては困る。私は女に不自由はしてない。
女など吐いて捨てるほどいる。もちろん全員とお近づきになれないだろうさ。
でもそれがどうした? 女に現を抜かせば博士みたいなふしだらな人間となる。
私の目的はあくまで天女伝説であり金銀財宝だ。夢はでっかく持つのがいい。
「ははは…… この酔っ払いにかい? 」
そう言うが見えない。まだまだだろう。これは相当酒に強いに違いない。
酔った振りなどすぐに見破れる。
言ってることは無茶苦茶だけどとにかく冷静なんだよな。
続く




