真実の瞳
挨拶に来て暗くなったから何とかしろと無茶な要求をするサナギ。
さすがに悪いので帰ろうとすると引き止められる。
「いいからお前たちは泊って行け! 生憎テントしかないがな」
大きめのテントとは言え大人が三人も入ればギュウギュウだ。
もしもう一人加われば…… 誰かが外に寝ることになる。
私はできれば遠慮したいな。
「交代だ! 」
そう言って真っ暗な中で監視役を引き継ぐディファイ。
一人だと思っていたがどうやらもう一人いたらしい。
この広いエリアを二人一組で監視しているそう。
昼は二人で侵入者を追い払う。夜になれば来るのは僅かなので一人で対応。
もちろん何かあれば応援を呼ぶことに。真夜中であろうと叩き起こされるそう。
今から見回りとはご苦労なことと思ってるとなぜか私まで付き合わされる。
別に構わないがはっきり言って私は役に立たないぞ。
フィールドワークでは手伝わされてもすぐに使えないと判断され休んでろと。
それでも人手が足りなければどうにか活用できないかと駆り出される。
中島でもいきなり第七洞窟の作業をさせられ何もできずに苦労した。
夜になると風も出て随分冷え込んで来た。十五度をすでに下回っている。
これは風邪を引くか? 毛布でもあればいいが奴らはそんなに軟弱じゃない。
ディファイなど私と比べるまでもなくでかい上に屈強。筋肉の塊のような男。
そんな彼がこの程度の気温も風も気にするはずがない。
日頃から鍛えてるようだし気合ですべて吹っ飛ばす。
私も中島での生活で暑さはどうにかなっても急激な冷え込みには対応できない。
「ふう…… お前は意外とタフだな」
何気ない一言。どうやら想像とは違ったのだろう。
でも化け物のような体格のディファイに言われるとは意外。
からかってるのかとさえ思うがでも彼は本気。
「実はフィールドワークをして世界を駆け回っていたので慣れてるんですよ」
「そうか。人は見掛けに寄らない。てっきり女の尻を追いかけて来たのかと」
遠慮のないディファイに見抜かれてしまう。
「ははは! そんなはずないでしょう? どちらかと言えば財宝に魅了されて」
「そうか。飲め! 」
酒を勧められるが断る。さすがにシラフでいたい。初めての後島の夜。
いい人だとは思うが完全には信用できない。
それに酔っぱらっては役目を果たせないだろうし。
「ふん。真面目な奴だ。フィールドワークとは驚きだがちょっと違うな。
お前のそれは諦めだぞ。相当な経験をしてきたと見える」
どうやら私の過去や正体が気になるのだろう。
だが至って普通のどこにでもいる助手。
島の金銀財宝に憑りつかれたただの略奪者であり侵略者。
前島では邪魔者は排除する気でいた。自分を過信していた。
今思えば何でもできると根拠のない自信で礼儀知らずに島を荒していた。
「それで何をしてる? 」
「監視だって! 火山が活発になってる。揺れも感じられる。
ここからは誰も入れない。立ち入り禁止だ。夜にも来ちまうバカもいるのさ。
情けないことに地元の奴だ。何も考えずに遊びにくるのが一定数いる。
ただここには歩き以外で来れないので監視は楽勝。光が見えたら向かう。
その繰り返し。注意しても聞かないようなら拘束する権限もある」
ディファイは格闘技の経験もあり相手を組み負かすのも朝飯前。
試しにやってみるかと言うので丁重にお断りする。
この鋼のガードマンがいれば無闇に火山には近づかないだろうさ。
「本当に突破されないのか? もしライトを消されたら? 」
「特殊な装置でもなければ不可能。それがあるならもっと派手にやるさ。
監視は念のため。問題は火山の方だがこのままなら警戒レベルは下がるはずだ。
一週間もすれば安心して島民が暮らせるだろう。
だがここで激化すれば即避難だ。覚悟は必要だな」
どうやらディファイによれば人の監視よりも火山の監視を重視してるよう。
そんなディファイたちもこの辺りまでが限界。勝手に進めない。
何か見えない者に邪魔されているのかこれ以上火山には近づけないと。
それがこの島を守ることに繋がると信じてるらしい。
それほど島の者は自然を愛し保護しながら崇拝しているのだろう。
「あの…… ここに伝わる伝承や伝説などありませんか? 」
話が切れて一旦落ち着いたところで慎重に丁寧に聞く。怪しまれてはいけない。
「おお…… フィールドワークだもんな。そうだな…… 詳しいのはサナギの方。
俺が知ってるのは真実の瞳と呼ばれる島の宝ぐらい。それが何かも分かってない。
まったくの謎で当然見た者は皆無。伝説上の秘宝だ」
ディファイは新たな伝説を示す。大変興味深いが噂や伝説程度では信用できない。
「真実の瞳? 」
「ははは! そう言ったところでお前には分からないはずだ。
俺だって分からない。何一つ見当がつかないからな」
いい加減だな。この後島に伝わる伝説の秘宝。それ以上のことは不明だと。
それでは何も知らないのと変わらない。伝説があると言い張るお年寄りだ。
「本当に? 何も知らない? 」
相手の目を見て判断。目を逸らさずに自然なら間違いなく何も知らない。
彼を疑うのはやめよう。せっかく教えてもらったんだから。
「それは…… 分かったよ。言えばいいんだろう? 」
すぐに諦めてしまう。追及に弱いんだな。
「ありがとうディファイ。助かるよ」
感謝の言葉を忘れない。
「だが何でだ? その前になぜそこまで知りたい? 」
ディファイは理由を聞く必要があると同じように見つめる。
こっちも耐え切れずに見つめるなよとふざけるが納得はしてない。
「フィールドワークか? そうやって嘘を吐いた者が何人失踪したかな。
これは脅しじゃない! お前が心配なんだ。いつ消えるか」
脅しではなく単純に心配。やはり悪い奴ではないよう。
「俺はミハマ島の真実を知りたい。ただそれだけ」
もう開き直るしかない。これで無理なら出直そう。
私はとんでもなく往生際が悪いのさ。
それがミコトから託された使命だから。
一度も二度も叩きのめされてそれでも立ち上がったのはナギサのお陰でもある。
だがそれだけではない。ミコトの思いを継ぎたい。もう一度会いたい。
決して叶わないと承知しながら最後の最後の時まで諦めない。
ミコトもトワナもマキナだって忘れられない。忘れられるはずがないんだ!
だがそれでも今後薄れることもあるだろう。
それでもミハマ島の真実にたどり着けば満足もできる。
それがまったくの期待外れでもいいんだ。
変わったとは言えこの旅の目的を果たせたらな。
「ミハマ島? 何を言う? ここはフォグアイランドだぞ…… いや何でもない」
明らかにディファイはミハマ島を否定した。
確かに博士たち学者どもの呼び名はフォグアイランドだったが。
「ディファイはミハマ島を知らないのか? 」
この質問は矛盾している。彼らの住んでる島こそがミハマ島の一つなのだから。
それが分かっていても聞かねばならない。
「ああ知らない。正確にはここはミハマ島じゃない。
ミハマ島ってのは伝説の南の島。確かタイガとかって奴が作り上げた島だろう?
実は俺はここの島出身じゃない。だから他の奴よりも詳しい。
言えないことも言える。タブーだって切り込める。当然島を裏切れはしないがな」
ディファイは見た目からも分かるようにこの島の者ではなかった。
衝撃だが彼を味方に付ければ真実に近づくような気がする。
「するとディファイは何にも属さないフリーの男? 」
「ああ? 当然だろう! それが男と言う者さ。
だがそれでも受け入れてもらった恩義はあるさ」
島に尽くすだけの恩義があると熱い。
続く




