トリドの連中
後島・港エリア。
サナギが船長にも挨拶しておこうと無理やり。
船長って言うぐらいだから相当立派で位も高い?
少なくてもこの港の奴らを束ねる威厳のある人物だろう。
船長の家。
一見船とは無関係などこにでもある一軒家。
ナギサの家よりは大きいが豪邸だとも思えない。
大物の臭いがまったくしない船長の家。
「ああいらっしゃい。この人は新入り? 見かけない顔だけど」
船長らしき人物が出迎える。
コーヒーを啜り難しい顔の船長。まるで当麻博士のよう。
ブレークタイムのコーヒーで忙しい時を一瞬忘れられると。
そう言って長々とコーヒーのうんちくが始まる。
そしていつの間にか助手が悪いの設備が悪いのと当たり散らす。
昔ながらの博士。人間性は最悪だったな。
それに比べてこの人はコーヒーを飲むとすぐに甘いものを取り出す。
のんびりした時を過ごしている。これが南国特有の島時間だろうか。
このまま放っておくと永遠に続きそうなので質問攻めにすることに。
「あなたが船長ですか? ここでどのようなことを? 」
「いや僕は…… 」
「次の航海はいつ頃? 船は新しい? それともボロボロ? 」
フィールドワークではこれくらいテキパキしないと博士から睨まれる。
つい早口になるのも感情が高ぶってる証拠。
それでも緊張してるのか積極的に語ろうとはしない船長。
「聞いてます? 」
「もううるさい! いや違うんだ。実は僕は船長じゃないんだ」
明らかに迷惑だと顔を歪める。船長として紹介されたんならやはり船長では?
下手な言い訳しないでもう少し真面目に答えてくれよな。
これでは全然威厳も感じられない。どうしてこいつが船長なんだよ?
出航したら転覆するぞ。この情けなさは他人事とは言え心配になる。
「するとあなたは? 」
「はい。海洋学の専門家です。と言ってもこの島から出たことのない自称ですが。
僕はスイカ。本当はカスイカなんだけどそれだと言いづらいからスイカに」
カスイカ? 本名のはずがない。
それはただのあだ名と言うより酷い悪口でありとんでもない暴言。
嫌がらせにもほどがある。それでも自分から紹介してしまうプライドのなさ。
嫌なら自分から言わずにサナギから。当然否定していい。
なのに笑っていやがる。マゾなのか? どうしようもないな。
仲間と言うか島の者の笑いものになってる感じがし聞いていて気分がよくない。
せめて自分だけでも否定しろよ。それがコミュニケーションか? 違うだろう?
「それでスイカさんは船長ではないと? ならば一体? 」
「あああれね。早い話が船酔いしてしまって…… 」
それ以上は話す気はないらしい。失態は誰にもあるし汚いならもういいか。
「ははは! こいつは船長が注意したのに本を読んでるから気持ち悪くなってさ」
「それ以上はやめろって! 汚いだろう? 」
「そうか? まあいいや。こいつはいつもこんな感じ。島のムードメーカーだな」
もちろんそれはサナギたちから見れば。遠慮がちなスイカはそうは思ってないさ。
「ムードメーカーはサナギだろう? いつも無茶やって場を盛り上げてる」
そう言って笑い合う。私はついて行けない。
二人は見た目に反し仲がいい。サナギの戯言に気弱なスイカも負けてない。
「うるせい! 最後まで言わせろ! こいつったら船長の前で吐くのよ」
船酔いで体調を崩し吐いたと。どうも青白い見た目からそんな気もしたな。
初めから得意な奴はいないが慣れればどってことない。島なら特に。
ただどうしてもダメな者もいるだろうさ。苦手意識があり続けるんだろうな。
「悪いと思ったよ。でも船長もあそこまで言わなくてもさ。冷静さがない」
「それをお前が言うか? ははは! 」
当時を振り返る二人。船長は今は引退したそうだ。
サナギによるとそれが原因でやる気を失い年寄りどもとつるんでると。
もちろん海の男がそんなことを気にするはずがないから冗談だろう。
「それでスイカはどこへ行こうと? 」
海洋学の専門家として目指すべき場所や目標を聞く。
これも彼を知る上では重要なこと。
「もちろん海上に決まってるさ! 」
まさかの海上だ。スイカだからてっきり線上かとばかり。
「まさか…… 」
「そうだよ。大海原を航海して冒険に行くのが夢なんだ」
目をか輝かせるスイカ。海洋学の専門家ってそう言うことか。
だとすると彼に期待するのは間違っている。
「それじゃあまた後でな船長。挨拶回りを済ましちまうわ」
「そう…… ちょっと最後に聞いていい? 君はどこから来たの? 」
男のロマンを求めるスイカ。そんな彼に中島の話をすれば行きたがるはずだ。
船を使えば決して難しくない夢だ。叶えさせてあげたい気もする。
「東の方から。財宝関連で…… 」
こう言えばスイカは喰いつく。そしてきっと協力してくれるさ。
「嘘? ぜひ手伝わせてくれ! ナギサちゃんも誘おうかな」
願望を述べるスイカ。
一応は団子屋の看板娘らしいのでこんな風に話題に出されるのは珍しくない。
しかしそこにはサナギがいる訳で。
「何だと? お前は人の娘をたぶらかす気か? 」
そうサナギは一応はナギサの父親だ。誰もが疑うだろうが事実そう。
本人目の前に軽はずみなことを言う。憎めない奴で頼めば何でもしてくれそう。
だが今の私にはその気力さえないのが現状。
どうも彼らの話はどこかおかしい。確認には時間が掛かりそう。
後島から中島になぜ行こうとしない? なぜ行けないんだ?
その理由が分からなければミハマ島の秘密にはたどり着けないだろう。
こうして挨拶回りをして行くと村長に出くわす。
「おうサナギではないか。相変わらず無茶してるな?
それでどうしたこの若者は? トリドの連中か? 」
村長から新情報を得る。トリドって誰だ?
「ああトリドってのはこの島と交流がある小さな島の民。
奴らとは付き合いもあるし小競り合いだってある。ここ数年関係は良好。
それでもトリドはこの島を狙ってるって話も聞くぜ」
サナギの説明でどうにか理解。トリドとは前々から交流があるようだ。
それは何を意味するかと言うと通称・フォグアイランドは閉ざされてない。
隣の島と交流を続けている。てっきり鎖国状態だと思ったのに違ったらしい。
もはや伝説は覆った。隔離された島は幻想でしかない。
だが果たして後島の奴は分かっているのか?
「それであなたはまさか中島からの脱出者ではありませんか? 」
村長だけあって隣の島のことは理解してるよう。
「ははは…… 想像にお任せします」
何を言ってる? 危険なだけじゃないか。完全否定すべきところだ。
「そうですか。ではあなたは選ばれた人だ。一緒に来ませんか? 」
村長は火山に籠るのだそう。そこで神のお言葉を頂戴するとか。
どうも胡散臭いがここまで来て断る訳にも行かない。
次の機会にぜひと約束を取り付ける。
「あなたに敬意を表してこの男をつけましょう」
そう言って満足したのか行ってしまった。
監視役として正式にサナギが任に当たる。
「よし最後だ。火山守のディファイを紹介してやるぜ」
サナギに連れ回されてお昼過ぎまで。もう勝手にどうぞ。
歩いては一時間掛かると。そこから火山までは二時間。
合計三時間での火山ツアーが組まれる。
こうして村を抜け島のもう半分へ向かうことに。
続く




