中島からの脱出(後編)
闇夜に紛れて中島脱出を試みる。
一人遅れたダイボが姿を消す。
後ろから聞こえた叫び声からダイボはバリバリに捕食されたようだ。
こうしてついに第一の犠牲者が出てしまう。
「へへへ…… 残念だったな」
そう言ってライトを向けるオヤス率いる第一部隊。その後方にはココの姿も。
使者のココは恐らく私の命令を忠実に守ったはずだ。
しかしそれさえも計算に入れていた抜け目のないオヤス。
そうか…… 第七の仮穴選びで負けたことをまだ根に持ってやがるのか。
しかしあれは嵌められたのであってオヤスだって納得済みのはず。
それともオヤスは聞かされてなかった?
だからってそんなことぐらいで恨んだり不和を生んでどうする?
「ここは俺たちに任せてくれ! 」
ハイドとナガレが応戦。
だが多勢に無勢。二人ではさすがにどうにもならない。
しかしそこにアナログが部下を引き連れて戻って来た。
「これはありがたい! ほらお前たちは構わずに行け! 」
格好つけのナガレが笑う。だとすれば任せても大丈夫だろう。
「よし行こう! 」
マキナと手を繋ぎ船頭の後をぴったりくっつく。
ダイボが消えハイドとナガレとアナログで敵の侵攻を食い止める。
勇猛果敢な仲間を置いて逃走。
今この場で襲われでもしたら勝ち目はない。
敵にもバリバリにも遭遇しないことを祈って下るしかない。
はあはあ
はあはあ
「まだですか? 」
大声で前を走る船頭に呼びかける。
うん? ついプレッシャーから振り返る。後ろから気配がするんだよな。
寒気と言うか嫌な予感がする。ずっとそんな感じ。
信頼でできる仲間と別れ恐怖が倍増。はっきり言ってまともな神経でいられない。
立ち止まっては振り返りを繰り返す。
そのせいか前を走る船頭から距離がどんどん開いてしまう。
船頭もは船頭で恐怖のあまり後ろを振り向けずただひたすら前へ。
「あと五分もすれば…… 」
突然霧が発生。濃い霧で一時間近くはこのままだと船頭。
さすがはフォグアイランドと言われるだけのことはある。
ただこれは海沿いに発生することがほとんどだと。
強い場合には島全体を覆うこともあるそう。
「ここです! この道を下ればすぐにでも船が…… 」
十分は走ったか? どうやらもうすぐらしい。
「おいマキナ大丈夫か? 」
「ごめんお兄ちゃん。何だか凄く眠くなってきて…… 」
しきりに目を擦るマキナ。
それでも繋いだ手を離さない。マキナの低い体温を感じる。
「あのねお兄ちゃん…… 」
「うん聞こえないぞマキナ? 」
「ごめんね。こんな酷いことして…… 」
そう言うとマキナは霧に紛れる。そして繋いだ手も離れてしまう。
当然私からではない。私は見放してないぞ。
「おいマキナどこだ? どこにいる? 冗談はよせ! 」
だが霧の中では探しようがない。自らの意志で消えたとしか思えない。
酷いこととは? どうしても気になる。一体何が起きてるんだ?
そのまま姿を消すマキナ。
「おいどこだ? 冗談はやめろマキナ! マキナ! 」
叫び続けるが反応はない。探し回ってもたかが知れてる。
ようやく掴んだと思ったら船頭だった。
「大丈夫ですかアキラさん…… 」
「マキナは? 私のマキナはどこに? 」
知るはずがない船頭に答えを求める。
船頭は前を走っていたのだ。どうやったって知りようがない。
それが分かっていながらそれでも聞くことをやめられない。
「一緒じゃなかったんですか? 」
「てっきりあなたと二人で…… 」
追われ霧に覆われてはまともであるはずがなく誰かを見つけ出すなど不可能。
分かっているはずなのに船頭にすべて押し付けてしまう。
「もう行きましょう! これ以上は迷うし危険だ! 」
冷静な船頭。でも私はそう言う訳には行かない。
最後まで探す。見つけ出すんだ! ここで諦めたらミコトの二の舞。
トワナを失った今残されているのはマキナだけだ。
しかし虚しくも時間切れ。
五分の猶予が与えられたがついに見つけられなかった。
「嫌だ! マキナと一緒に行くんだ! 」
「往生際が悪いですよ。五分だけと言ったでしょう! 」
さすがの船頭も甘い顔はできない。
当時を振り返れば当然の判断。船頭は冷静に乗客を目的地へ運ぶ義務がある。
後からオヤスたちが迫ってることもあり得るからな。
もう一分だってそこにいては危険。霧で方向感覚を失えば船までたどり着けない。
最後の抵抗を見せるも船頭に引っ張られる形で船へ。
そこへマキナの姿が…… ある訳もないか。
こうして諦めの中で船に乗る。
そして霧の中を絶叫しながら進んで行く。
「マキナ! おいマキナ! どこにいるんだ! うわあああ! 」
「危ない! 落ちるって! もう困った人だな」
呆れる船頭だがもうどうにもならない。ずっと叫び続ける。
「もうお客さん静かに願います。降ろしますよ」
船頭は厳しい。だがこれも私を心配して。
仲間の狂う姿を見たくないのだろう。分かるがそれでもどうしようもない。
「悪い…… 心配をかけた。後島に向かってくれ」
こうしてトワナを失いマキナまで。
それでも次に向かわなければならない。
ミハマ島の真実を求めて第三の島・後島へ向かう。
後島。
うん…… まだ霧が掛かっている様子。
「到着です。ここがあなたの言っていた後島です。ではここで」
そう言うと残してさっさと行ってしまった。
薄情だがそう言う契約だから仕方ない。
せめて後島の紹介ぐらいしてくれてもいいのに。
どうせロクに聞きはしないだろうが。
ついに第三の島・後島に到着。
ここはどこだ?
だが今の私にはどうだっていい。
ミコトを失いトワナまで。最後にはマキナまで消えてしまった。
連続失踪事件の真実はどうやら闇に封じ込められたらしい。
もう私にはどうすることもできない。
急激にやる気が失せて行く。
こんなこと今までなかったのに……
すべてを失えと言うのか? よそ者で侵入者の私は幸せにはなれない。
今ある僅かな幸せも手放せと? もう充分だよ。好きにしてくれ。
ガリガリだろうとボリボリだろうとバリバリだろうと好きにしてくれ。
もういいんだ。諦めたよ。どうしろと言うんだよ?
分かっていたんだよすべて。ミハマの真実を追求したところで何もならない。
自分には何の価値もない。意味のないことだったのさ。
薄々は気づいていた。でももしかしたら僅かな希望に期待していた自分もいた。
もう上品に私などと言ってられない。ナガレのように傲慢に振る舞ってやる。
そうして島の者から嫌われて捨てられるんだ。ははは!
くそ! この忌々しい霧め! まだ覆ってやがる。
これでは夜なのか朝なのかも分からない。
もちろんうるさいぐらいに何度も鶏が雄たけびを上げていたので朝だろうが。
それでも確証はない。
船頭も薄情だよな。仕事があるので忙しいとここに置いていっちまう。
客を置き去りにするか普通? だがもういいんだ。すべて自然に任せる。
どうなろうと知ったことじゃな。それほどの悲しみと喪失感。
もう誰もいない。トワナもマキナもナガレもダイボも。ココだっていない。
何のためにここまで来たのかまったく分からない。
こうして一時間近くは霧に囲まれただろうか。
その間も天女の舞がないか探っていた。
でも音はしない。たださざ波の音がするだけ。
そう言えばサザナミは元気にしてるかな? へへへ…… あははは!
ギャン!
ギャン!
獲物と勘違いして襲うでかい犬。見たことないが雑種だろうか?
「何だお前は? 喰う気か? いいぜ好きにしな。それが俺の運命さ」
だがギャンと吠えるばかりで何もしない。
威嚇さえしないとなると助けてくれるつもりか?
「エレン! エレンってば! 」
その時声が。
もしかしてメス? 女の子なのか?
まずい。人に見つかったか? 喰われるか拷問されるか。
中島がまともじゃない以上後島だってとんでもないところに違いない。
ハードモードマックスに違いない。
逃げよう。第一島人は女の子のようだが。油断は禁物だ。
続く




