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中島からの脱出(前編)

夜。

悪いと思いながらもココに協力を要請。

脱出作戦にはどうしても敵を欺く必要がある。

「はい。お伝えします。ですが本当はどうなさるおつもりですか? 」

心配してくれるココ。ありがたいな。でもこれ以上関わらせられない。

「それはココの知る必要のないことさ」

非情だがこれでいい。知れば問われた時に黙ってられないだろう。

何も知らないことでココは追及を逃れる。

「分かりましたご主人様! では最後に聖水を! 」

そう言うと聖水を要求する。しかし今それは生憎溜まっていない。

だから代わりにキスで送ってやる。

親愛のキスでご主人様と従者の関係に。

ならば今こそ解放のキスをしてやるべきだろう。


「では目を瞑ってくれ」

「ハイご主人様! ココは大変嬉しいです。ですが何だかとっても悲しい」

率直の気持ちを伝えるココについ感情的になる。だが余計なことは言えない。

「ココ! ありがとう! 」

こうしてお別れのキスをし二人の関係は解除された。

見送りもできずにただ手を振るだけ。

これがきっとココとの最期の時。もう二度と中島に来ることはないだろう。

辛くて悲しいがこれも自分が選んだ道。後悔はない。


ココが姿を消し最後の話し合いに臨む。

「大丈夫お兄ちゃん? 元気ないね」

マキナに励まされる。情けない限り。

「大丈夫だ! ミコトのためにも絶対にミハマの真実へたどり着くんだ! 」

誰に言う訳でもなくただ天井に向かって誓いを立てる。

もし本当に天女様がいるなら聞こえるように叫ぶ。

「うん。その意気だぞアキラ君! だがどうするつもりだ? 」

ナガレが心配すると強行突破だよとマキナがはしゃぐ。

当然マキナもここの島民。島には必要不可欠な存在。

天女の生まれ変わりであるトワナを失った今残された最後の希望のマキナ。

私以上に中島にはなくてはならない存在。それなのに一緒に後島へ。

最悪マキナを盾にすれば突破は可能では? こっちにはマキナ様がいるのだ。


それにしても結局マキナとトワナは島民にとってどのような存在だったのだろう?

天女の代わりとして敬っていたにしては扱いが雑な気がする。

こんなどこの馬の骨とも知らないよそ者に近づかせようとするだろうか?

まるで二人に会うのは運命であるかのよう。またそれが仕組まれていた気もする。

穴に関して明らかに仕組まれたものだったからな。果たして二人はどうだったか?


沈黙が流れる。

「それでどうする? 」

「しかし…… 霊山道以外に道があるんですか? 」

頭を抱えた船頭が口を挟む。どうやら諦めかけてるよう。

そう。何も知らずにただ時間を稼いだだけ。別の道がなければ万事休す。

「ダイボは知ってるんだろう? 」

「いや…… そこまで詳しいはずがないだろう? 」

監視から逃れ伸び伸びとしているダイボ。

ただ二人とも完全に信用できるかと言えばどうかな。

「その件なら俺に任せておけ。多少危険だが道がある」

ナガレは隠れ道を知ってると豪語する。果たして本当か?


「本当ですかナガレさん? 」

「任せておけ! だがお前だって穴なのだから知らなくてはな。

穴はもしものために逃走路を頭に入れてる」

ナガレによれば常識だと。だがよそ者が分かるはずがない。

ナガレだってそうなのになぜその秘密を知っているのか?

まさか前回逃げた時に使った? それなら納得もするが。

なぜ知ってるかまでは教えてくれないナガレ。別にもういいだろう?

でも今はそんなことはどうでもいい。


ダイボが二人のやり取りを見てつぶやく。

「どうしたダイボ? 」

「お前も大方は気づいているんだろう? この小芝居誰のためにもならない」

ダイボの口から衝撃の一言が。しかし今はその時ではない。

私だってあと少し。確証があれば当然追及した。いや余裕があればだが。

でも今は追及することで関係が悪化するのを恐れている。

ダイボの言いたいことは痛いほど分かるがこれはどうしようもないんだ。

この切羽詰まった状況でまるで惑わそうとしてるかのよう。

その意味と言うかもはやただ苦しくて告白している感じ。

でもそれが何だと言うんだ? 


「おいアキラ君。もし逃走路がなかったらどうするつもりだったんだ? 」

ダイボを無視するようにナガレは話を強引に進める。

「それは…… 島民の振りして嘘を伝えて混乱したところで後島へ」

多少無茶なプランだが何とかなるだろう。

「ははは! 無謀もいいところだが面白そうだな」

それから五分。ココがそろそろ戻った頃だろう。

ではもう時間もないことだし出発しますか。


「うん? 」

いつの間にかマキナと船頭が仲良くなっていた。これは無警戒だった。

「ああ済みません。大事な話があったものですから」

船頭が頭を掻く。どうも嘘くさいな。

「お兄ちゃんごめん…… マキナ誘惑されちゃった」

またふざける。どうでもいいって。

「ははは…… もちろん違うんですよ。気分を悪くされては敵わない」

言い逃れにしては軽い。もっと真剣に反論しないといいようにやられるぞ。


ハプニングはあったがそれも解決。そろそろ行くか。

「では先導をお願いします」

ついにこの島を脱出する時が来た。

渡ってからどれだけの日数が経っただろうか?

もう覚えてないがココにトワナにマキナ。

少なくても三人との出会いは僕を中島に引き止めるだけの力はあった。

この島でゆっくりのんびり過ごしてもいいかなと考えないことも。

でも現実問題。ここは飯がとんでもなく不味い。スーパーハードな世界。

飲みものと言えばニュウニュウかおしっこだ。もうどかしてるぜ。

だから脱出できるならしたい。しかも今回はマキナもついて来る。

トワナを失い残ったのはマキナだけ。あの幼気なマキナを守ってやるんだ。


「では…… 参りましょう皆さん」

怯えた声の船頭の後に続く。

マキナの手を繋いで絶対離さないようにする。

後をナガレとダイボが追う。最後尾に隊に加わったばかりのハイドが。

第三洞窟の穴で私を第七の穴に推してくれた恩人でありガキだ。

マキナもそうだがガキは寝る時間さ。


あれおかしくないか? でもそれって今思えば私を嵌めるためにしたこと。

このハイドがいると言うことは相手に情報は筒抜け?

いやもういいや。最後まで信じ切ろう。

どうせ少しの間。脱出できればすべて丸く収まる。

もう前の私ではない。いくらトワナを失ってもまだマキナがいる。

こうして霊山道から大人しく降りて来ると思ってる奴らを出し抜く。


「うう…… 」

下品にも唸り声を上げるマキナ。

「どうしたマキナ? 腹でも痛いのか? 」

「違うよお兄ちゃん。怖いんだよ。バリバリがいつ襲って来るか」

「ははは…… それは夜遅くまで遊ぶ子供とよそ者を怖がらせる迷信さ。

誰が信じるんだよ? ココも言ってたが私は一度も見てない」

ここに来てバリバリか。夜行性で骨まで食い尽くして跡形もなくなると。

嘘で迷信に決まってる。それなのにマキナは怖がる。

伝染して私たちまで怖がったら敵の思う壺。

ここは勇気を振り絞って別ルートへ。


「大丈夫ですか? 足元には充分気をつけて。光は使えませんからね」

船頭は順調だと。このまま行けばニ十分もしないで船まで行けると。

隠して係留している船はどうやらまだ見つかってないらしい。

島民やよそ者を閉じ込めるためにも見えないとことにあるのだろう。


「悪い先に行っててくれ! 」

靴紐が解けたとダイボ。

「早く来るんだぞダイボ! 」

「分かってますってナガレさん」

ナガレは気にしてるようだがダイボのことだからすぐに追いつくさ。


しかし隊から離れたダイボが戻って来ることは二度となかった。

後方から男の悲鳴とボリボリバリバリと嫌な音が響く。きっと奴が目覚めた。

ついに始まった恐怖の時間。

果たして我々は無事に船までたどり着けるのか?


               続く

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