囲まれた!
ついに山へ。
ここは神聖な場所。穴以外立ち入り禁止ゾーン。島民も遠慮するしかない。
私も一度大穴に挨拶に伺った。
そう言えばその時おかしなことを言われた気がする。
次会う時は真実をだったかな? 結局姿は見れなかったが。
中島を支配する怪物。その正体は……
だがそれ以外にも何か言ってたような。他者としてどうのこうの……
別に私は大穴の正体などどうでもいい。トワナを失った今取るに足りないこと。
「おい! もうここでいい」
息を切らすナガレ。無理して走ったから。
マキナも疲れてる。だからって背負えだもんな。
「ナガレさんどうします? おっと…… 」
「その子は寝たか? いやマキナ様はもうおやすみに? 」
やはり一度中島に来ただけある。マキナの正体もあらかじめ知っていたのだろう。
だからこそ島長の命で黙ってるようにと。
教えれば私にとんでもなく有利に働く。すべてを知りながら黙る。
それは酷なこと。言いたくても口に出せない。それはダイボも同じ。
だから二人はいつの間にか消えた。そして私がすべて知った時に再び戻って来た。
救世主再びってところだろう。
うーん。それだけか? 何か引っかかるんだよな。
ナガレにしろダイボにしろ。まるで謀ったように。
いや…… さすがに考え過ぎか。助けてもらった恩を忘れて酷いことを。
一度ならずも二度目までも。それはとてもありがたいこと。でもな……
どうやら疑心暗鬼に囚われてるようだ。でもこのままではいけない。
信じないと。仲間を信じられなくなったらお終い。
冷静に冷静に。ここで仲間割れを起こせば敵の思う壺。
とりあえず中へ。
「ナガレさんありがとうございます。アナログも」
「おいおい今更だろう。二人の仲じゃないか?
危なくなったらあらかじめ助けるように命じられたからな」
どうやらナガレは島長の命に素直に従っていたに過ぎないと。
それならおかしな考えも疑いも吹っ飛ぶ。
「だとすると私を… 」
「ははは…… 勘違いするな。危なくなったら助けてやれとは言われたよ。
でもこれは俺の判断。まさか再びこのスタイルで会うとは思わなかったが…… 」
「はい? 」
「いや何でもない。こっちの話だ。それよりも慎重に下ろしてあげるんだ」
マキナはただの子供じゃない。トワナがいない今頼るべき存在。
「応援を呼んで来る。それまで堪えろよ! 」
アナログはそう言うと姿を消す。
何を恐れているのだろう? ここは神聖な場所。
勝手に島民が入って来るはずがない。
今日も明日も安全な場所。
ここに逃げて来た以上もう心配はいらないはずだ。
すべてはどう船頭の船まで見つからずに行けるか。それだけさ。
だがアナログは慎重。まさか…… 突破口があるのか?
でもこれは心理的なもの。もはやどうすることもできないはず。
「どうしたんでしょうナガレさん? 」
「きっと手引きを恐れて先手を打とうとしてるんだろう」
真剣な表情のナガレ。何だか爺臭くなったな。
「と言うと? 」
「ここは神聖な場所だ。大穴以外はよそ者は当然島民も基本的には入れない。
しかし穴の許可を得て同行する場合にのみそれは破られる。
これは穴の許しを得て協力すると言う名目だ」
「ああそうか。船頭もナガレさんもそう言えば…… 」
「ははは…… まあそんな感じだ。急ごう」
どうやらそう簡単には後島には行かせてくれないらしいな。
「どうしたのお兄ちゃん? 」
マキナが目を覚ます。逃走時に面倒だったので背負った。
そのまま夢の世界に。本当にこの状況でもマイペースなマキナ。
「まだ寝てろ! 一緒に行くんだろう? 」
「うん…… 」
何だか元気がない。まさか怖い夢でも見た?
「マキナはここに来たことあるのか? 」
ここで一番信用できるのはマキナ。
ナガレたちは指示に従い離脱した。そして戻って来た。
こんな切羽詰まった時に助けてくれた救世主。とは言え全面的には信用できない。
それは船頭も同じ。こちらの味方なのは何となく分かるがまだ秘密がありそう。
マキナだって言えなくもないが見た目があれだから。
「おお…… マキナ様もお目覚めに。ではそろそろ作戦開始と行こうか」
どうやら準備は整ったらしい。マキナに敬語のナガレは新鮮だ。
「しかしここに籠るのはまずくないですかナガレさん? 」
「いや遠慮することはないさ。気にするな」
ナガレはそう言うがここは大穴のお住まい。さすがに無断でお邪魔はできない。
「何を心配してるんだ? 」
「だってここは大穴が…… 」
未だに正体不明の大穴様。次会った時にはすべて告白すると言ったが。
その肝心の大穴の姿が見えない。どこに行った?
まさか私にすべて告白するのが嫌になり逃亡したか?
そんな情けない大穴のはずないか。だが事実どこにもいない。
ドンドン
ドンドン
強風が吹き荒れ叩きつけられたかと思えるぐらい激しい打撃音。
「誰だ? 」
ナガレはもはや敵なしのように横暴に振る舞う。
らしくないな。島ではまるで地蔵のように静かなナガレの姿がそこにはない。
こんな人だったっけ? 出会った当初はこんな感じだった気もするが。
どうも抜けてない感じ。
「入ります」
そう言って姿を見せたのはいつの間にか姿を消していたダイボ。
ヌボッとした大男で目の前に立たれては恐怖を感じる。
何もしてなくてもその威圧感でどうにかなりそうだ。
「おお…… ダイボ。よくやった! 」
戻って来たダイボを称えるナガレ。
「へい…… いや。ははは…… 」
何かに反応したダイボ。だが一体何に?
「どうだった? 」
「それがどうやらこの山は囲まれてるようで…… 」
ナガレの予想通り動きを封じようとしてるに違いない。
一本道。ここから船着き場までの道は単純とは言え危険だ。
夜まで待って闇に紛れての逃走計画は完全に読まれていた。
居場所まで把握されてるよう。
これならもっと前に船に乗ってもよかったのに。
どうやら判断を誤ったらしい。しかしどうすることもできないぞ。
「火が…… ますます増えていく気がする」
僅かに開けた扉から外の様子を窺うとたくさんの火が彷徨っていた。
これはまずい。勢力を結集させているな。でもなぜここだと分かる?
まるで裏切り者がいるかのよう。
いや考え過ぎだ。仮穴の私の潜伏先などお見通しか。
しかしいくら怒りに我を忘れたとしても神聖な山を穢し大穴に向かうのか?
「限界だ! ここを離れましょう! 」
今まで大人しくしていた船頭が口を開くも情けないことばかり。
「しかしどこに? 船で脱出した方が…… 」
「それはできなくもないがそれなら人は少ない方がいい。
そもそもここにいる者全員を連れて行けませんよ」
船頭は怯えているがが意外にも冷静だ。
「何だって! 残されたものはどうなる? 」
ナガレの表情が険しい。徐々に追い詰められている。
「往復すればいいのでは? ねえ? 」
「それは無理だよ。船の位置がバレてしまう。
すぐに飛び乗ったとしても漕ぎだす前に止められ最悪転覆させられる。
それを阻止するには武装するしかない」
船頭は往復させるのは不可能。一度切りだと非情宣告。
すると誰が乗るのか? まさか…… その判断を私に?
ついに命懸けの脱出が始まる。
続く




