決断の時
第五洞窟にある天女昇天の泉で天女に扮したトワナとマキナ姉妹の演舞。
どちらもそれは天女の生まれ変わり候補だけあり神聖で神々しい。
まるで本物の天女のように華麗に舞う。
私はこれをどこかで…… そうだ。前島だ。
するとまさか私が天女だと思っていたのはこの二人のどちらか。
でもそれはおかしい。ここで舞っても前島からは見えない。
どうやら天女が本物かは別としてまだ謎は依然残ったまま。
残念なことに二人を選ぶのはルール違反らしい。
当然あると思われた三人で創造する未来。
私は強制的に選ばされる。それが二人の願い。
だとしたら応えてやるべきだろう。
まるで選ばされているかのような巧妙な仕掛け。
きっとどちらを選ぶかもあらかじめ決められてるんだろうな。
自分の気持ちや好みとかではなくそうなるように誘導されてるのだろう。
二択だから確率は五十パーセント。でも間違った答えを選べば戻されることに。
どうやったって彼女たちの思い通りに動くことになる。
一体お前たちは私にどちらを選ばせたいんだ? はっきり言ってくれよ。
そうしたら迷わずに反対の方を選ぶからさ。
もうあらかじめ決まっていること。選ぶ余地など本当はないのだ。
そんな風に思いながらマキナの横を通り過ぎる。
「お兄ちゃん酷いよ! マキナがこんなに愛してるのに…… もう嫌い! 」
揺さぶりをかける。だからどうしろって言うんだ?
選べと言ったのはお前らだろうが。いきなり連れて来てそれはないぜ。
それとも時間切れでもあるのか? 私が選べずに諦めると考えてか?
そんな情けないお兄ちゃんでいいと言うのか?
とにかく今はマキナの説得。選べと言ったくせに自分を選ばないと怒る困った子。
「お願いだ! 嫌いにならないでくれマキナ! 」
耐えられない。マキナに嫌われたくない。
その思いが強くどうしても下手に出てしまう。
「だったらマキナのこと好き? 」
「ああ…… 好きだよ。大好きだよマキナ! でもそれは…… 」
「嬉しい! ありがとうお兄ちゃん! マキナを選んでくれてありがとう! 」
言い訳するつもりがマキナがとっとと話を先に進め最後まで言わせてくれない。
どうする? 本当にこれでいいのか?
トワナとマキナ姉妹。いや血は繋がっていないので正確には姉妹ではないが。
ただずっと一緒に暮して来たから姉妹も同然。
そんな二人の仲を切り裂こうとする自分がいる。
でもそれが彼女たちの望みならそれも仕方ないこと。
美人姉妹だが決して二人は似てる訳ではない。
見た目はよく互いに天女の生まれ変わりに相応しいようにとスタイル維持。
マキナは胸が小さいことを少しだけ気にしているよう。
トワナは小ぶりとは言え形の整った立派なニュウニュウがある。
二人ともまだ成長過程さ。心配しなくてもマキナだってもっと大きくなるさ。
おっと…… ついニュウニュウ評論家みたいな発言。
この島はニュウニュウフリーだからどうしても。
大はしゃぎで何も考えてなくてうるさいマキナ。
落ち込んでる時は敵わないが励ましてくれるから助かってもいる。
トワナは落ち着いているが不機嫌な時が多い。いやそれは見た目だけ。
本当は私のことが好きだと訳の分からないことをいい驚かせる。
どうやらツンデレらしいのだが私にはもう少し心を開いてくれてもよさそう。
天女の生まれ変わり候補でもうほぼ確定のトワナの性格に難あり。
ただそれも私にも悪いところもある。ニュウニュウの見過ぎ。
悪いと思うがつい目が行ってしまう。これは癖みたいなものだから直らない。
デリカシーのない男は嫌いなんだろうな。
それからこの島の人間は照れ屋である。
大穴からそうだからな。島の伝統と言っていいだろう。
するとマキナが異常なだけな気もするがまだ子供だから。
「アキラさんお願い! 」
「早くお兄ちゃん! 」
衣が二つ。恐らく一つは本物の天女の衣。もう一つは偽物。
マキナの話では天女の衣は水に弱くすぐに重くなって抜け出せない。
泉に引きづり込まれてしまう。そんな話だった。
だとすればマキナをスルーしてトワナから先に助けるのが正しい手順。
「済まないマキナ。堪えててくれ! 」
「酷いよお兄ちゃん! マキナだってもう限界なのに! 」
自ら泉に嵌ったくせに文句を言う。言える立場じゃないだろう。
「いいから! お前のはただの衣だろうが」
マキナを無視してトワナの方へ。
悪いな。これが私のやり方だ。トワナから救い出す。当然マキナも後で必ず。
マキナだって自分で仕掛けたんだから回避方法ぐらい心得てるだろう。
「アキラさん…… 嬉しい! でもあなたは今マキナを選んでしまった」
「何を言ってるんだトワナ? 待ってろ。今すぐに助けるからな! 」
トワナが弱気なのはきっと選ばれる自信がないからだろう。
マキナと過ごした時間の方が濃かった。一緒に閉じ込められたり船に乗ったり。
一緒に寝たり。その他いろいろと騒がれた。
でもそれでマキナに心が動くかと言うとそうでもない。
あくまでも娘として妹として見て来た。
それはマキナだってそのはず。何にも気にせずに着替える困った奴だ。
そう言うことに無頓着。それほど中島はおおらかで平和。
地獄の中島でスーパーハードな旅だと思っていたが慣れれば意外にも悪くない。
でも戻れるぞと言われたら今すぐ脱出するさ。それほど過酷な環境。
「待ってろよトワナ! 」
「いいんです私など。あなたは好きだと。大好きだとマキナに言ってしまった。
私にはなるべく言わないようにしていたのにどうして? 」
トワナがおかしなことにこだわる。どうしたと言うんだ?
そんなものは挨拶に過ぎない。気にする必要などない。
「いや言い過ぎると本当になるからとマキナに止められていたんだ」
だからトワナにはあまり好きだと言えなかった。
マキナは軽いから確かに好きや大好きは多めに言った記憶がある。
だからって。それが何だと言うんだ?
私にはトワナしかない。それは彼女だって同じじゃないのか?
「近づかないで! 選ばれずに私は孤独に沈んで行きます」
決心し選びもしたはずなのにもう意味が分からない。
私はトワナを愛していたはず。トワナだって私を愛してくれていた。
一体どこで歯車が狂ったのか? 言霊であるように呪縛から逃れられない?
「お兄ちゃん早く! 」
振り向くと滑りそうなマキナ。つい無意識に手を差し伸ばしてしまう。
すると今度はトワナが沈みそうになる。でもきっと大丈夫なんだろうな。
「どちらかを選んでくださいアキラさん! もう何も言いません」
まるで諦めたかのようなトワナ。自分の思い通りにならないと悟ったのだろう。
しかしそれでも私はトワナを選びたい。
三回言わないとか言霊などどうでもいい。言葉が真実になるとは限らない。
「ほらもう限界だろう? 手を掴むんだ! 」
選べと言われたらもう迷ってはいられない。
優柔不断が一番よくない。三人のためにもきっちりはっきりさせるべきだろう。
「トワナ好きだ! 大好きだ! だからこの手を掴んでくれ! 」
迷いは消えトワナを選択する。
これはマキナを捨てたんじゃない。トワナを選んだだけだ。
やはり私の愛する者は天女の生まれ変わりなのだろう。
続く




