どちらを選べばいい?
翌日。
仮穴から第七の穴へ正式決定するのが明日。
そうなれば私はこの中島で誰からも尊敬される存在となる。
ただトワナが言うには穴になれば自由が制限され中島に閉じ込められると。
どう考えてもあり得ない話だがトワナが嘘を吐くはずもない。
ならば私は穴を餌に誘い込まれたことになる。
なぜトワナは真実を告白する気になったのか?
何も言わずただ楽しくしてるだけで私は彼女たちのものになったはず。
そこが分からない。一体彼女はどのような存在なのか?
マキナも含めて理解に苦しむ。なぜそこまで私を想ってくれるんだ?
それが天女の生まれ変わりだとしてもあまりにも神聖過ぎて逆に怖い。
それほど私を深く愛したのも謎。急と言うか違和感がある。
会ったのだって…… 覚えてないがそんなには。
いつも会えばニュウニュウで怒られてばかり。大体ツンデレだし。
そう言えば初めから告白されてたような気もする。
それほど天女の生まれ変わりは惚れっぽい? 慈悲深いと言うのか?
いやいくらなんでもそれはあり得ない。でも……
まさか二度の危機を救ったのもトワナ? 今振り返ればそんな気もする。
だが果たしてそれだけか? トワナとマキナの存在が自分を狂わせ迷わせる。
「もう間もなくですねアキラ様。どうぞ我々をお導き下さい! 」
第七洞窟ではもう移動が開始された。明日にはここの穴に。
「俺たちも穴になれるように祈ってます! 」
こんな風に言われるのは本当に嬉しい限り。だがトワナの話もある。
それにしても仮穴が穴に抜擢されないことがあるのか?
他に候補者だっていないはず。
「ああ…… お兄ちゃんだ! 」
マキナ発見。さっそく遊ぶことに。実際は話を聞くだけだが。
「今日は第五洞窟にご招待。一緒に探検しよう」
どうもマキナが強引。でもただの子供だからそこまで深く考えてないさ。
単なる勘違い。マキナは私の天使なのだから。
そんな風に言えばマキナは天使じゃないよ天女だよと生意気を言う。
どっちでもいい。かわいければどうでもいいこと。
「おいマキナ勝手に先に行くな! 」
どうしてもあの日のことを思い出す。助けも来ず洞窟の奥で二人大ピンチ。
そう言えばあの時はどうやって助かったんだっけ? やはりトワナが?
マキナがこっちと言うのでついて行くと泉が見えた。
そうここで前回二人が天女の舞を。つい見入ってしまった。
泉は実はもっと遠くまで繋がっていて外へと続いているそう。
ここは第五洞窟からのみ行ける神聖な泉。
前回訪問時ははここでストップ。遠くから二人の舞を見守っていた。
マキナは人の気持ちも知らずに楽しそうにかけて行く。
自由だな。本当にどこまでも自由な奴だ。
「おいマキナ! どこまで行くんだよ? 」
「外! 」
そう言うと一瞬姿を消す。
「おいマキナ! どこだ? 」
慌ててマキナを追いかけると小さな空間が出現。
そこは人が通れるか通れないかのスペースしかなくそれ以外は泉となっている。
これこそが伝説の泉。天女降臨伝説で天女が天に昇ったとされる場所。
外にある枯れずの泉と呼ばれる泉は実はここを真似て作られたとも言われている。
要するに人工的に作られたものだと。そう主張する者もいる。
それほど中島の民にとって泉は神聖な場所であることの証。
現在では天女降臨の場所が外の枯れずの泉で天女帰還がこの泉となっている。
ただ証拠が必ずしもある訳ではない。何と言ってもタダの伝説なのだから。
天女が帰ったとされる神聖な泉にもう一つ影が。
「トワナ…… お前はトワナじゃないか? 」
しかしいくら呼びかけてもトワナらしき影は反応しない。
今は天女の生まれ変わりではなく天女そのもののよう。
「マキナ? 」
「ごめんねお兄ちゃん。試すような真似して。でももう時間がないの。
お兄ちゃんは今日中にこの島を脱出しないと穴にされる。
そうなる前に脱出しなくちゃ。だけど一人では難しいでしょう?
だからどちらと一緒に行くか決めて。もうマキナは心の準備できてるから」
どうもいつものマキナじゃない。かなり真面目。それは理想から離れるもの。
それでもマキナは何かをしようと一生懸命。きちんと聞いてやらないとな。
「しかしどうしろと…… 」
「簡単だよ。選んだ方の衣を剝ぎ取ればいいんだよ」
「まさか…… 素っ裸にしろと? 」
「そうだね。好きな方を選べばいいよ」
そう言うとマキナは堂々と白い衣に着替える。
うわ…… 大胆な奴め。こっちが目を逸らすしかない。
どうして私の前で平気で脱ぎだすんだよ?
それは信頼されてる証だろうけど親しき中にも礼儀ありだ。
大体マキナとの関係だって当然だが中島から。しかも第五洞窟に来てから。
それほど長くも深くもない。
「お兄ちゃん! 」
「アキラ! 」
着替え終えたマキナが手前に。トワナが奥。
姉妹による戦いは最終局面を迎える。
互いに舞うその姿は幻想的と言うかまるで夢のようで実感が湧かない。
どうやら私のために二人は動いてくれたのだろう。
ならば少なくてもどちらかを選んで想いに応えてやる必要がある。
しかし…… いざとなると選べない。
「お兄ちゃんの好きに選べばいい! 」
任せるそう。しかしいきなり言われても困る。
どちらが相応しいのか。その一点のみ。
「これは冗談? 」
「本気に決まってるでしょう! 」
マキナは早くしてと生意気を言う。
気持ちは痛いほど。だが選べと言うのは無理。せめて三択にしてくれ。
そうしたら選ばれなかった者が酷く傷つくこともないだろうさ。
「なあトワナ。天女の生まれ変わりは結局お前なんだろう? 」
「それはあなたの考え方次第です」
トワナはあえて自分がそうだとは言わない。それではあまりに有利だと考えてか?
フェアなのはいいが選ぶ身にもなってみろよ。何で判断しろと言うんだ?
「好きです! お願い私を選んでアキラ! 」
トワナが仕掛けて来た。意外にも響かない。なぜかな?
いつも好きだと言ってくれるからもう感じなくなったらしい。でも応えないと。
「私だってもちろん好きだ! 私にはもうトワナしかいない! 」
どうであれ二択ならトワナを選ぶことになるだろう。
「酷いよお兄ちゃん! 大好きだって言ってくれたのに。もう一度お願い! 」
マキナも黙ってない。これは厄介だぞ。
一歩進むと今度は手を使い誘い込もうとする。
クソ! どっちを選べばいいんだ? いやここで悩む必要ない。
マキナは好きだけどそれは娘としてまたは妹としてだ。
それに対してトワナは本気の恋。これを言えばマキナは悲しむんだろうが。
マキナの元を通り過ぎようとしたところで足が止まる。
そのまま進めばいいのに悲しむマキナがどうしても気になってしまう。
なぜ二択なんだ? 二人を選んではいけないのか?
どうやら三人一緒に行く未来は用意されてないらしい。
続く




