トワナが天女の生まれ変わり?
ついに自分の罪に向き合う時が来た。
二度の不幸を経験して。
恩人とも言うべき当麻博士を突き落としたこと。
これは明らかに私に非があったし後悔はしてない。
ただしミコトの件は別だ。私はミコトに一切触れてない。
それなのにどうやって突き落とせたと言うんだ?
確かに目を瞑って一瞬だけ意識を失っていたがそれも一分足らず。
「大丈夫。もう二度とあんな辛い思いをしたくない!
だけどなぜ起きたのか自分ではまったく……
人のせいにはしたくないが何か大きな力が働いたとしか思えない」
ここまで来ればきちんと伝えるべきだろう。トワナもそれを望んでいる。
あの日一体何があったのか? あれは恐らく事故であって事件ではないだろう。
事件か事故かあるいは自らか。そのどれかを見極めるのはプロにも難しいこと。
ミコトが見つかってない以上何も分からないまま。せめて見つかったら……
こんな辺鄙な島では現代の科学技術にも期待できないだろうし。
もうこれは失踪事件として処理するしかない。
そして七年かそこら経って失踪から切り替わると存在が消される。
そうでなくてもミコトはもうすでに忘れられつつあった。
まるでその存在が希薄で借り物であるかのように。
前島の奴らはミコトをさほど神聖視してない。してるのは前島地区の者ぐらい。
大体捜索だってロクにされてないんだ。
見つからない方が何かと都合がいいと考えてるのだろう。
「でしたら私も真実を述べますね。私はあなたの言う通り天女の生まれ変わり。
もちろん本人が知ることはないはずでした。しかしお告げが。
よそ者からこの島を守れと。ここは自然豊かではありませんが生まれ育った土地」
真実を言うかどうか迷っていたらしい。彼女は何とこの私に疑いを持っていたと。
天女の生まれ変わりを狙う暗殺者だと思ったらしい。
しかしそれはあり得ないさ。何のためにそんなことする必要がある?
頼まれてもやるものか。いくらなんでも失礼過ぎるぞ。
「酷いな。私を信じてくださいよ。こっちだってあなたを信じてるんですから」
互いに信じ合わなければ本当の意味で信頼を得たとは言えない。
言葉や表情だけでなく心の底から互いに信じ合う。
それができなくては愛情も友情も育まれない。
「でしたら私はあなたを愛してもいいと? 」
こう来たか…… 生まれ変わりでなくても嬉しいもの。それは天にも昇るほど。
「ああ…… できるならすぐにでも結ばれたい。しかしすべてが解決しないと」
財宝もまだあるし後島にも行かねばならない。天女伝説を解明しないとな。
「そうですか…… マキナもいますしね」
「違います! そう言うのではありません! マキナはかわいい妹さ。
あなたと結ばれれば本当の妹になる。いや血の繋がりはなかったんですよね? 」
二人でちょっとずつ距離を縮める。この作業を疎かにはできない。
それにしても何と素晴らしいニュウニュウ。まずい。おかしなところに目が行く。
どんなに自分を偽っても無理なものは無理。本能はどうにもならない。
それならば自然体で接すべきだろうな。
「アキラ! もう本当にいやらしいんだから! 」
仲良くなったからって呼び捨てはないだろう? もっと敬って欲しいな。
仮にも穴。もう前の自分ではない。よそ者とは言わせないぞ。
仮穴に選ばれたことで自信にもなったし度胸もついた。やる気だって出た。
「好きだよトワナ! 」
「私もよ」
ミコトとの思い出を封印し目の前の女性を愛する。
何と私は単純なのか。どうぞ天女様私の変節をお許しください!
ただ二人とも一般的な島娘とは言い辛い尊い存在。
するとその相手も当然皆からの人気もある尊い存在である必要がある。
「ねえアキラ」
抱き合って互いの熱を感じる。何だか凄く冷たい。
これも天女の生まれ変わりだからか? さすがに細部までこだわってるぜ。
そう言えばミコトも冷たい感じがした。マキナはどうだったかな?
「うん。どうしたの? 苦しい? 」
「違う。もし後島や本土に行きたいなら穴にはならない方がいい。
今から言うことはあなたを想ってのこと。だから誰にも言わないでね」
トワナの警告とも取れる一言。大げさか?
「ああ…… でも穴に正式になればもっと自由に動き回れるはず。
君とだって釣り合いが取れる」
親密な二人が楽しくおしゃべりに興じる。
それはどこにでも見られるごく一般的な光景。
だが我々はそんなところで裏切りの算段してることになる。
「釣り合いはどうでもいいでしょう? 元々あなたはよそ者」
酷いこと言うな。でもそこがトワナのいいところでもある。
「そうだけどさ…… 」
「よく聞いて! 仮穴ならそこまでの権力もないし義務もない。
でも第七洞窟の長とも言うべき穴となれば話は違うの」
まるで普通の女の子だ。神聖さが薄れて行ってないか?
そう言えば光が若干薄い気もするな。
「違う? いやいや同じでしょう? 」
トワナが真剣であればあるほど反論してしまう。
これは二人の温度差とでも言うべきだろうか。
どうやらトワナはまだとんでもないことを隠してるよう。
それを今言うか言うまいか悩んでいるところ。
「黙って聞いて! 正式に穴になればここから抜け出せなくなる。
それが彼ら…… もちろん私も入った島の者の考え方。あなたは狙われていた。
ほいほい仮穴になってはいけなかった。
もし正式に穴になればあなたは一生ここからは出られない。
どうしてこんなことを言うのか知ってるのかはまだ言えない。
ただ天女の生まれ変わりとだけ。でも真実は少し違う。いえ全然違う。
お願い! 私のためにこの島に残って! そして素晴らしい国を作りましょう!」
いつの間にか真逆のことを言い出したぞ。でもいいはずがないので首を振る。
「どうしてもミハマ島に残れと言うなら自分は構わない。
だからこそ後島に行こうと思うんだ。一緒に行こうトワナ! 」
「それはできません! 私はこの島にしか存在できないトワナ。
あなたが後島に行きたいのであればここでお別れです」
「嫌だ! トワナと別れるのは嫌だ! 」
「我がままを言わないで! そうしないと再び悲惨なことが起きるのよ。
何があっても正式な穴になってはダメ。私を忘れて大人しく後島に行くの。
それがあなたの運命。運命には逆らえないの。
真実を知ればきっと発狂するでしょう。でもそれが本当の真実とは限らない。
作られた真実はヤワだから。きっと簡単に打ち破れる。
だからお願い! 次のステージに行って! 」
トワナは隠された真実を言わずにただ急げとだけ。
正式な穴にされる前に逃げろと。だが果たしてすべて信じていいのか疑問。
こうして二日後の第七洞窟の穴選びを前に決断を迫られることに。
続く




