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あの日一体何があったのか?

トワナと二人きりで海沿いを散策。その後無理を言ってモデルになってもらう。

非常識と思われるだろうがどうしてもその肢体を記念に残したかった。


いつの間にか私の恋人の話に。

私に恋人がいないのはおかしいと言うトワナ。

確かに前回忘れられない昔の恋人としてミコトを紹介した気もする。

でもそれは厳密な意味での恋人ではない。

両想いになってからすぐにミコトは消えてしまった。

これを恋人と表現するのはさすがに違うよな。

それではストーカーと変わらない。私たちは本当の恋人にはまだほど遠かった。

もっと島での日々を通じて自然となって行く。

いや行けたんだ! あの時眩しさに目を瞑らなければ。


「いえ…… フィールドワークで仲良くなったと…… 」

トワナは私のつまらない過去に喰いつく。

だがそれもやっぱり恋人とはちょっと違うのではないか?

「はい。海外ではどうやら弾けてしまうらしくて。

現地で人気の女の子が寄って来るんです。それもきっと彼らの作戦でしょう。

長期滞在してもらえば一時的とは言え村が潤いますからね。

もちろんその中にはこれだと思えるような素敵な子もいました。

ですがその子には当然恋人が。あるいは許嫁が。当たり前のこと。

彼女たちだって男を捨ててまで私を求めたりしない。

要するに本気ではなかった。村に滞在してる間に恋人気分を味わうだけ。

たとえ仲良くなっても次に会う時にはもう一切忘れられているのが現実。

その時は結婚してるか村を出てるか子供を産んでるかのどれかになる。

そう。あちらの世界は私たちのようにゆったりとは流れていない。

劇的に変化を見せる。それは別に何ら不思議なことではありません。

日本だけが世界ではない。そして世界はとんでもなく広い。

広ければ当然様々な愛の形が存在する」


つい熱が入り長話になる。どうやらまだ私はフィールドワーカーなのだろう。

博士と過ごした日々も決して悪いだけではなくむしろ掛け替えのないものに。

おっと…… どこから脱線してしまったんだろう? 確か恋人の話だったよな。

トワナもすっかり呆れてる。いや飽きたのかもしれない。

そろそろ私のくだらない話を終えるべきだろう。


「済みませんトワナさん。これはつまらない話でしたね」

謝罪の言葉を述べる。

「いいんです。面白かったので。ですがそうではなくもっと最近の話をと」

トワナはどうやら違うものを期待していたらしい。

「最近? 大きな子を持ったおばちゃんといい関係になった話ですか?

ですがあまり愉快なものでもありませんよ。何と言っても迫られた方だから。

あれは冬の日だったかな…… 」

語ろうとした瞬間ストップがかかる。どうやら趣味に合わないらしい。

でもよかった。あまり人には話したくなかったんだよな。


「もっと別の。ごく最近のことですよ」

トワナが具体的に言わないから探り探りしないといけない。面倒臭いな。

「ああ…… マキナちゃんと? うん。恋人にはまだちょっと…… 」

ついマキナを出してしまう。自分はどうかしてるんだろうな。

それほど触れて欲しくない過去の傷がある。

トワナには見られたくない傷があるように私にもごく最近に封印した過去がある。


「まさかアキラさんはマキナに手を出したと? 」

とても信じられないと言った表情で見つめる。

いやいやそこまでするはずがない。

「違いますよ。ただ人懐っこくて大変かわいらしいから。

それに魅力的なニュウニュウですので」

どうにか褒めようとして下手を打つ。

「アキラさん! 」

まずい。ツンデレ気味のトワナがキレる? 

「いやマキナはいいや。ココもいいですよね? すると…… 」

睨みつけるように迫るトワナ。おいおい一体誰の話が聞きたいんだよ?

もう一人しかいないか。しかしどうしてそこまでミコトに興味を示す。

まさか会ったその日に好きだと言ったことに関係があるのか?

トワナの狙いがいまいち分からない。

まさかミコトに会ったことでもあるのか?

同じミハマだから会おうと思えば会えるだろうが。


「ミコトさんですよ」

「ああ…… ミコトね。すっかり忘れていた。

いや怒らないで。決してわざとではありません」

どうにか宥める。一体何なんだよこの人? 睨みつけることないだろう? 

仕方ない。トワナがどうしてもと言うなら語ってやるか。


「実はミコトのことはあまり思い出したくなくて…… 私が突き落としたから」

つい衝撃的な事実を告げる。

「それは別の方だと伺いましたが」

「その通り。同僚の博士を崖から突き落とした。

この手で思いっきり! 一切の後悔もありません。

しかし博士は悪運が強く頭と足の怪我で入院しただけ。

止めを刺さずに救急車を呼んだのが今も悔やまれます」

どうせもうこの件は迷宮入り。誰も追及しないだろうと話している。

しかし危険極まりないのは確か。

ではもう一度じっくりミコトについて語るとするか。


「そうですか。二人は最後には深く愛し合っていたんですね。

私ではその穴を埋められない。だからもうしつこくするなと? 」

どうもトワナは話をおかしな方に持って行く。誰もそんなこと言ってないのに。

「いや…… トワナがいいなら。でもそれで君まで消えることになったら…… 」

「それはあり得ません。ここにはあなたが突き落としたい崖が存在しません」

確かに。全然ない訳ではないが勝手に歩き回れない以上難しいだろうな。

よそ者には厳重に監視が付いてるだろうし。


「ちょっと待ってくれ! 私が崖からミコトを突き落としたと思ってるのか? 」

勘違いされてるようだがこの手にその感触はなかった。

しかしミコトが自ら飛び降りない限り事故とは言え自分のせいだ。

「そう先ほどあなた自身が言いましたが」

「ははは…… あれは言葉の綾で。本気ではない」

「だったら私はあなたを信じていいい? 殺されることはない? 」

そんな風に当たり前のことを問う。

信じて欲しいな。私はそんな野蛮な人間でもないしそこまでバカでもない。

それに同じ殺し方をすればすぐに自分だとバレてしまう。


大体あの当時のことはよく覚えてないんだよな。

それまでが幸せ過ぎて…… なぜあんなことが起きたのかさえ理解できない。

あの日一体ミコトに何があったのか? 

もしあの日に戻れるなら戻りたい。


                 続く

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