船頭の過去
どうやらミハマ島にはまだ誰も姿を現してないらしい。
油断はできないけがもう少しのんびりしていられそうだ。
ライバルたちが狙っていると言い出したのは博士。
それを信じ急いでミハマに。まさか博士はすべて承知の上で急かしたのか?
狙いは不明だがその博士もまだ足が治っていない。もうお年だし無理は禁物。
博士のことだから今頃病院のベットで医者や看護師を困らせてるんだろうな。
思ったよりも動きがないのは意外。しかし油断はできないぞ。
船頭によればどうやら逆方向にある別の島からも上陸可能らしい。
だが当然その時はミハマの者たちが一致団結して撃退してくれるだろう。
ぼうっとしているとミハマのマキナが騒ぎ出した。
「ねえお兄ちゃん。マキナ似合う? 」
いつもよりオシャレをしてきたと。
これがオヤスも言っていた外出用? だが肝心なところが隠れてないぞ。
それにかわいいと言うよりどこか変だ。
鮮やかな黄色。ただ砂に塗れるとその境界が分かり辛くなる。
それが服なのか太陽の反射なのかただの地面なのかニュウニュウなのか。
「やっぱりニュウニュウが邪魔じゃないか? 」
アドバイスするがマキナはなぜか警戒する。
そもそも私はファッションには疎い訳で。
この島の者もそうだろうと勝手に決めつけていた。
「まさか吸うの? 」
どうもマキナはその手の話が好きらしい。子供だと思って見くびっていた。
いや子供の方がその手の話に興味を示すものか。
「いや…… 吸うんじゃなくて隠せばいいだろう? 」
「それはダメ! ニュウニュウを出すのが格好いいんだから」
どうやらマキナにもこだわりがあるらしい。
でも私からすれば見たいが見たくないおかしな物体。
このこだわりは恐らく島民全員が持ってるんだろうな。
ニュウニュウをさらけ出して何とも思ってない変わった民。
これがミハマ全体ならまだ納得も行くが中島だけだから。
「うん。かわいいよ」
「お兄ちゃんのエッチ! 」
うわ…… 褒めるとこれだから私は一体どうしたらいい?
船頭に助けを求めるがただ笑う。
船頭は決してサボってる訳ではないが大人しく二人の会話に耳を傾けてる。
「そう言えば船頭はどうしてここに? 地元の者じゃないですよね? 」
ミハマ島初日に会って以来だからな。
「ははは…… つまらない過去ですよ。せっかくのデートに水を差すことになる。
そんなことより景色もいいですし二人で仲良くすればよろしいかと」
船頭は過去を頑なに語ろうとしない。だがそれでは話が進まない。
それにしても二人を見てデートとか抜かすのはどうだ?
どう見たって親子か兄弟だろう? 年が違い過ぎる。
それ以上にマキナの見た目が幼い。これをデートだと言うのか?
確かに会話を聞いていればそう思えなくもないが。まるですべて知っているよう。
「頼むよ。マキナだって聞きたいよな? 」
「うん! 」
何も考えてないマキナが反応する。
「では暇潰しに一つ披露しますか」
ようやくその気になってくれた。でも別に本気で聞きたかったかと言うと微妙。
ただずっと彼の過去が気になっていた。ここに住み着いたよそ者だからな。
「俺はミハマに来てから素敵な人と出会ったんだ。
彼女はとてもいい子で俺のことを慕ってくれたが病弱な上に引っ込み思案。
いくら想いを伝えてもいい反応が返って来ることはなかった。
でも何度も何度もアタックしてると折れ徐々に俺の気持ちに応えてくれるように。
まあミハマの娘たちはいい子ばかりだしルックスだって申し分ない。
ただその子は同年代の子と比べてもずば抜けていた。
惚れっぽい性格でもあった。仲良くなると二人でこっそり会うように。
お互いが意識するようになってすぐに恋人関係に。
そして思い出の家づくりも一緒にやってくれた。
でもその幸せも長くは続かなかった。ついにその子と別れる時が来たんだ。
いつの間にか姿を消してしまった。前日までいつも通りだったのに。
名前を…… いやいいか。そして三島を回って探し続ける日々。
そしてついに見つけた。その子と会おうとした瞬間に再び消えた。
こうして再び彼女の影を追って三島を巡っている」
話は以上らしい。現在の私の置かれている状況と似ているな。
マキナに聞こうとするがただ眠かったとだけ。
どうやら話が難しくて寝てしまったんだろう。
かわいいな。でもどうもわざとやってるっぽい気もする。
船頭の正体が知れるかと思ったが余計に謎が深まったかな。
「俺から言えるのは絶対に放すなってことぐらいかな」
ミハマ島に魅了された一人としてアドバイスしてくれた。
「では第一洞窟まで行ってみましょう」
降りようと提案されるがやめておく。オヤスに連行されそうだから。
「どうです? 懐かしいでしょう? 」
第一洞窟の者たちが手を振る。その中には穴の姿もあった。
こうしてゆっくり周遊して二時間掛けて戻って来る。
「どうでしたか? 」
「いや久ぶりに楽しかったよ」
この島は極端に娯楽が少ないからな。いい気分転換だ。
「マキナそろそろ起きろ! 帰るぞ! 」
膝の上で気持ちよさそうに寝るのでそのままにしていたがもう時間だ。
「うーんよく寝たねお兄ちゃん。さあ遊ぼう」
どうやらマキナには船の旅には早過ぎたらしい。
でも揺れに弱い訳じゃないので最悪の展開にならずに済んだ。
「マキナ! ほらお家に戻りましょう」
トワナが迎えに来た。
「トワ姉…… 」
「ではマキナは任せましたよ」
トワナは話があると。
これは連れ回したことをお怒りになっているのだろう。
まずいぞ。マキナの奴伝えなかったのかよ?
そう言えばそんな暇なかった気もする。
「どうです? 一緒に船の旅など? 」
そんな風に格好をつけてるところで船頭はマキナを連れどこかへ。
仕方ない。ただ歩くとするか。
「暑くありませんか? 」
いくら慣れたとは言え皆中島では基本洞窟で暮らしている。
人が増えた影響で新しく洞窟を作ってる最中。そこの長で穴がこの私な訳だ。
「平気です。元々私たちは感じにくいんです」
トワナは怒ってるに違いない。
洞窟で遭難して間もないで船で連れ回したのだから文句は言えない。
言い訳不可って奴だ。分かってるけどどうにもならない。
「あの…… マキナはどうですか? 」
そう言ってニュウニュウを向けて来るから何も答えられなくなる。
「それはまだまだ…… いや違う。とてもかわいらしくて困ってます」
どうにか取り繕うとすればするほどおかしなことを言う。
これは緊張によるものだろうがでも何かとんでもなく神々しい感じがする。
だからいつの間にか追及されている気分。
続く




