マキナとの危険な関係
第五洞窟。
大穴との対面を終え戻って来た私はつい疲れて寝てしまった。
別に悪くないはずなのにどうも落ち着かない。何か忘れてる気がするんだよな。
辺りが騒がしい。どうやらもう朝らしい。
昨日は結局最後まで振り向くことができずに帰ってきてしまった。
どうも一度会ってる気がするんだよな。声は変えていたが喋り方が何となく。
それに私を知っていたし何だか嬉しそうでもあった。
次会う時はすべて告白すると言っていたが今日訪ねてみるのはまずいか?
取り敢えずナガレでもいてくれたら相談に乗れたんだろうが。
ココやマキナじゃ頼りない上にここの島民だから当てにならない。
すべて知っていてあえて隠してる訳で。
「うん…… お兄ちゃんおはよう? いや! マキナ裸にされてる…… 」
いつものスタイルのくせに何を抜かす。私を犯罪者にするつもりか?
でもここって法の支配が及ばないんだよね。いくら訴えても百叩きぐらいさ。
世界の果ての果てだからな。そもそも日本自体が東の果てでもある。
あるのは島の自警団。と言ってもそれは前島の話。
だから逆に命の保証もないと言うデメリットがある。
「マキナ頼むよ。お前がかわいいのは理解した。
だからって勝手に人の寝床に潜り込むのは反則だぞ! 」
なぜこのようなことを言わないといけない。思いっきり叱れやしない。
「お兄ちゃんマキナが寝てるからって何かしたでしょう? 」
そうやって全身を隈なく調べ回る意外な一面を見せるマキナ。
思ったよりも神経質なんだな。いつもは汚れても気にせず笑ってるのに。
「何かって何? 」
マキナの真意が読めない以上質問で返す。これが安全策。
おっと…… 今はそんなことはどうでもいい。
急いでマキナを元に戻してやらないとまずいことになる。
「触ったでしょう? 」
「ああ…… ポンポンと頭を撫でたがまずかったか? 」
「そうじゃない! マキナを抱きしめたでしょう? それから…… 」
「ああしたよ。いけなかったか? だってかわいかったから」
開き直って適当に答える。これでいい。マキナ相手ならこれで充分。
「ニュウニュウだって好きなだけ…… 」
「はいはい。おいしそうだったから。いけないことか? 」
どんなに言われようと気にしない。どうせ誰もマキナを信じはしない。
いつも適当なことばかり言ってる子供みたいなマキナは信用されてない。
それに対して仮とは言え私は立派な穴だからな。信頼されてるのさ。
「お兄ちゃんの馬鹿! 」
「怒るなよ。朝のひと時にマキナに付き合ってやっているんだろう?
大体文句言えないぞ。お前の方から入って来たんだからな。
何が一緒に寝ようだよ? そんなこと言う奴は何されても文句言えないんだぞ。
覚えておけ。まあいいや。もう充分寝たしマキナもからかえたからいいや。
すっきり目覚めのいい朝だ。マキナも早く戻りな。我がままは許さない! 」
そんな風に蔑ろにしているとトワナの話になる。
「トワ姉はマキナと同じ。すぐに好きになる。
お兄ちゃんもきっとトワ姉に気に入られてると思うよ。
でも気をつけてね。トワ姉もマキナもお兄ちゃんが思うような存在じゃない」
マキナは相手にされないものだからトワナの名前を出した?
そうだとしても唐突過ぎる。何か狙いがあるのか?
「かわいくないってことか? 」
「違う! マキナはかわいいの! 」
自信があるようで羨ましい。島で尊ばれてればそうなるか。
すると私とマキナはまったくの反対の人間で分かり合えない?
「はいはい」
「もう! 」
「そうだ。これ凄いでしょう? トワ姉から借りて来たんだ」
マキナが隠し持っていたのは衣のよう。
「それがどうした? 急ぐぞ! 」
「これは天女の衣って言うの。今マキナが着てみるね」
そう言って人目も気にせずに着替える。
元々ニュウニュウは見えてるのでさほどのショックはないがやり過ぎ。
これだから子供だと言われるんだ。目のやり場に困るだろうが。
「まずはすべてを脱ぐでしょう」
詳しく解説するのはいいが後ろを向けっての。それだとすべて見える。
本当に兄とでも思ってるんだろうな。あの懐き方は異常だもんな。
すると物凄い罪悪感がある。適当に答えるのも悪い気がする。
「お兄ちゃん見てる? 」
「だから後ろを向け! お前が向かないならこっちが後ろを向くからな」
何が悲しくてマキナの裸を見ないといけないんだ?
背を向けると目が合う。それはココに違いない。
どうしよう? マキナから始めたこととは言えすでに積んでしまってるぞ。
ココのためにも立派なご主人様像を維持しておきたかったのに。
「ほらきれいでしょう? 」
何も知らないマキナはご機嫌だ。天女の衣をたなびかせ自慢する。
だがこれ以上は汚すか落とすか失くすかするだろう。
そして私はココから汚れた目で見られるか信用を落とすか失くすかするだろう。
「もう自慢はいい。マキナがかわいいしきれいなのは分かってること。
さあ衣を脱げ! 急いで脱がないと怒られるぞ! 」
そう言って無理やり剥ごうとするがマキナがかわす。
「今はマキナだよ。でももしトワ姉がそれを着て舞ったら脱がしてね。
水の中だと重くなるんだ。だから危ないって言うのにトワ姉頑固だから。
もしトワ姉がこれを着て舞ってたら気をつけて。溺れる前に脱がすの! 」
おかしなことを言うマキナ。一体何の話だ?
「待てマキナ! トワ姉が無茶しないようにって…… 目の前で舞うのか? 」
「うーん。分かんないよ。でもその時はお兄ちゃんが頼りだから。
マキナも泳げないの。だからお兄ちゃんに頼むの」
どうやら真面目な話らしい。でもいつもがああだから。説得力がない。
するとマキナだって危険だと言うことになる。
姉を心配してないで自分の泳ぎを上達させるべきだろう。
「ほらマキナをトワ姉だと思ってやってみて」
そうは言うがそれはマキナを裸にすると言うこと。
できるはずがないだろう? したくてもできない事情がある。
「早くお兄ちゃん! 」
ちょろちょろ動き回る虫みたいな奴。
「うおおおマキナ! 」
そう言ってマキナを脱がしたところでココが堪らずに登場。
どこまで見聞きしてたか不明だが私がただの変態ではないのは分かっただろう。
自分はどう思われてもいい。マキナの願いを叶えてやりたい。
続く




