大穴とマキナ
中島のトップ・大穴とご対面。
しかしふざけたことに後ろを向いてろだからな。
仮穴の私を舐めてるかそれとも恐れてるかのどちらかだろう。
それでも人払いをしサシで話そうとしてくれる。
うん? 間もなく夕暮れ。そろそろ帰らないとならない。
「大穴様…… これですと互いに話しづらいかと」
「お前に覚悟があるなら今すぐに振り向くがいい。
しかしそれがないと言うならそのまま従うがよい」
覚悟か…… 大げさだが大穴とこの島の真実は密接に関わっているんだろうな。
ただ悩む。いきなり覚悟があるかと問われハイと答えられるほど人間できてない。
「まだ真実を知るには早過ぎるかと。今回はこのままでお願いします」
こちらからあえて頼むことで大穴のプライドは保たれる。
これでいい。喧嘩しに来たのではない。
大穴がどれほどの人物か計れないがそれでも敢えて印象を悪くする必要はない。
それが大人と言うものだろう。少々情けないが立場が違うからな。
「それでいい。ではアキラ君の知りたいことを一つ教えてあげよう」
満足したらしい。しかし声だけで顔が見えないからいまいち分かり辛い。
「ありがとうございます! 島に隠されている金銀財宝はどこに? 」
大穴自身は不明だが仮面の男は島独特のスタイルではなく普通に服を着ていた。
まるで中島の住人を拒絶するようなスタイル。若干の違和感。
「金銀財宝と来たか欲深いな。いやそれでいい。男はそれくらい野心がなければ。
それならこここから何十キロか行った海底に沈んでいる。
ただ回収するには人も金も掛かる。仮にそれだけしても手に入るかは運次第。
それでもいいと言うなら詳細な地図を探すがいい。
地図はミハマ島のどこかにある。きちんと管理されている」
大穴は財宝の行方を知ってるがあまりお勧めしないようだ。
それは本当に金も時間も掛かって無駄になるだけだと思ってるのか?
または島の宝に近づく者を追い返そうと必死に嘘を吐いてるのか?
そうだとしてもあまりに具体的過ぎないか? 地図まであると抜かすし。
一体何を考えてるのか。これは一筋縄で行かないようだ。
「もう一つだけ。天女の衣については? 」
一つと言われたがついでに聞くことに。
この程度のことでイチイチ腹を立てることもないはず。
「一つだと言ったのに図々しい奴め。だがそこも気に入った。
いいだろう。特別に天女の衣についても教えてやるか。
しかしこれを聞けばもうお前は選ぶことになる。
迷うことも許されない二者択一だ。それも覚悟の上だと言うなら教えよう」
忠告らしい。大穴から私にアドバイスを送ることは異例中の異例だそう。
「もちろん天女の衣が手に入るならその程度のこと何てことはありません」
「よろしい。では天女の衣についても詳しく教えてやるかな」
「中島にあると言われている。この島は天女降臨伝説が生まれた場所。
もうすでに見かけてるはずだ。それを奪えば天女様は帰れなくなる。
いいか。その時は躊躇するな。容赦なく天女の衣を奪い取るんだ! 」
そう言うと黙ってしまう。
「大穴様? 」
「よしもうよかろう。次会う時は自分はもういないかすべてを告白する時」
そう言うと姿を消す。
どうやらこれで大穴によるありがたい話はお終いらしい。
夜。
明日ついに後島へ。お付きがいるとは言え次のステージに進めるのだ。
だがよく考えれば中島ではまだ何も片付いてない。
やはり明日は予定変更すべきだろうな。
第六の穴のしつこい誘いをやんわり断わり寝床に戻る。
いい人かもしれないけどとにかくしつこいんだよな。
どうも裏があると言うかあまりにも密着し過ぎな気もする。
でもただの思い込みかもしれないしな。
ではそろそろ寝るか。
この時が一番辛い。何もないところに帰る訳だから。
ナガレもいないし遠慮してココだって一緒に寝てくれない。
今日も寂しく一人で寝ろと言うことだろう。
「どうしたのお兄ちゃん? 」
マキナ登場。朝起こされるのは慣れてるけど寝る前に来られてもな。
「いやマキナに似た幽霊がいたから驚いたんだ」
その幽霊に言うのはおかしいが一応はこれで誰もが納得するだろう。
「幽霊じゃないよ! マキナだよ! 」
「おいおいムキになるなよ。ニュウニュウに悪いぞ」
適当なことを言ってマキナを動揺させる。悪い大人だな。
「お兄ちゃん…… 」
「大丈夫。ニュウニュウはどこも悪くない。心配なら見てやろうか? 」
ついふざけるがマキナはいいよとだけ。
一体何がいいんだ? もう意味が分からない。
「それで何の用? 」
「お兄ちゃんと一緒に寝ようと思って…… 」
嬉しいこと言ってくれるな。でもそれは私がよくても他の者が許さない。
特にココからは絶対に手を出すなと強く言われていた。
もちろん私がマキナに手を出すはずがない。でも誘惑されたらどうなるか。
いわゆる不可抗力って奴だ。それだと誰にもどうすることもできない。
「間に合ってます」
「お兄ちゃん酷い! マキナを捨てる気? 」
大げさに泣き真似をする。
「マキナ…… 」
「プニュっと…… もういいよ」
マキナは無自覚にプニュって言葉が出る。もしかして相当怒ってる? 」
「なあマキナ。そのプニュってのは何だ? 」
確かあれは…… 忘れた。だがいい思い出だったはず。
「口癖。この島では皆プニュプニュ言ってるよ。アキラさん」
「アキラさん? お兄ちゃんは卒業したのか? 」
「お兄ちゃんの意地悪! マキナのこともう少し真剣に考えてよ! 」
嘘泣きが止まらないものだから我慢できずに怒るマキナ。
怒られても…… これだから子供は…… いやそれ以上はよそう。
「考えてるさ。新しく妹ができるのは悪くない」
「妹? 恋人じゃないの? 」
「お前がお兄ちゃんだって言ってるから…… 兄を求めてるんだろう? 」
せっかくなのでマキナの気持ちを聞いておこう。
「うん…… でもお兄ちゃんの相手はマキナ。トワ姉じゃなくマキナを選んで!」
どうなっちまったんだマキナは? 選ぶも何もなぜ二択なんだよ?
たぶんトワナの方を選ぶだろうがそれでも二択と言うのがよく分からない。
「かわいいよマキナ。大好きだよマキナ」
煽てておこう。こうしておけばマキナは単純だから機嫌を直すに違いない。
「嘘ばっかり! お兄ちゃんの馬鹿! 」
うわ…… 泣かせたか? でもマキナのことだし。
「お兄ちゃん! 」
そう言って抱き着いて来た。いやこれはさすがにまずいだろう?
そもそもニュウニュウが当たって痛いんですけど。
「ほらマキナ離れて…… 」
一体何をやってるんだ? こんなところをココに見られたら失望されてしまう。
そうでなくても島の者に知られれば袋叩きに遭い穴の地位を剥奪される。
最後には磔にされるか八つ裂きにされるか。
我慢できずにマキナに手を出せば取り返しのつかないことになるぞ。
もちろんそんな趣味ないんだけど。それでも男女であることに変わりはない。
「マキナ…… 悪いけど今夜は無理…… 聞いてるかマキナ? 」
あれ本当に答えなくなったぞ。これは相当か?
いやただの気まぐれだと思うが。ここは謝罪しておくか。
「ごめんねマキナちゃん。君があまりにかわいいからつい…… 」
だがそれでも反応しない。よく見るともう寝てる。
はあ? 嘘だろう? どうすればいいんだ?
ココを呼ぶのは悪手。どうにかマキナの寝床まで運ぶのは不可能。
仕方ない。目覚めるまで一緒にいるか。自分が寝なければいい訳だし。
さあとりあえず横になろう。まったく本当に強引な奴なんだからよ。
ではマキナおやすみなさい。
こうして夢のような時間を過ごした。
夢ではマキナと手を繋ぎながら海風を受ける。
続く




