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聖域

島民は勝手に外には行けないはず。なぜタブーを破る真似を? 

まさかナントは掟を破らせ失脚させる狙いなのか?


「そんな目で見ないでくださいよ。穴ならいつでも自由に外に行けますって。

穴はただの島民ではありません。ですが必ずお供をつける必要がありますがね」

ナントは話をつけるので明日まで待ってくれと。

確かに急ぐこともないか。楽しみは明日に取っておくのも悪くない。

どうやら彼の言ってることは事実らしい。だが思ってもみなかったこと。

いくら監視役がいると言っても後島に行けるなら悪くない。

おっと…… さすがに監視役は悪いか。ただのお供だと言ってるのだしな。


「おいナント! どこにでも行けると言ったがまさか後島にも? 」

「ええ望むなら。後島にも本土にだって。それには船を手配する必要が」

「まさか後島には財宝があるとか? 」

「はい? 私には分かりかねます」

ナントはごまかしたが財宝は後島の可能性が高い。

ここまで見当らないのだから当然そうさ。

どうやら以前アナログが言っていたのは本当のようだな。

穴とはそれほどの権限があるのだろう。


「ではナントに任せる。明日この時間に待ち合わせよう」

新たな可能性。ずっとこの島に閉じ込められたままだと勘違いしていた。

だがこのチャンスに後島に行くのもいいし本土やラボに戻るのもいいだろう。

中島では順調に天女の生まれ変わりまでたどり着いた。

これで後島の生まれ変わりを見つければ天女伝説の真実にもたどり着けるはず。

もちろん何の根拠もなく勝手にそう思ってるだけだが。

すべてはミコトとの再会のため。

だがそれが不可能と分かった今再び財宝探しと行きますか。

でもだからってミコトを忘れたのでも捨てたのでもない。

もし再び会えるなら財宝などどうでもいいしすべて捨てる覚悟。

でも現実には難しい訳で。いくら望んでも無理なものは無理。分かってるさ。


「では今日はこれで」

ナントは私が知らない貴重な情報を教えてくれた。

補佐の役割も全うしてるし全面的にとは行かなくても多少は当てにしていい?

これなら第七洞窟が完成した暁には私を正式な穴にしても構わないぞ。ははは!


「ご主人様それでは今夜はココスペシャルで」

張り切るココ。でもいくら腕がよくても材料があれだからな。

それにしても中島に来てどれくらい経っただろうか?

そろそろ本格的に大穴探しと行くか。大穴から金銀財宝について聞くのもいい。

間もなくだ。間もなく中島編もフィナーレを迎えるだろう。

うーん。ここまでよくやって来たと思う。

だがどうも日を追うごとに目的が変化し目標を見失いつつある。


確かにこの中島を制覇するには大穴に会うことが重要。

当然天女の生まれ変わりもきちんと把握すべきだろう。

それはただ当たりをつけると言うものではない。

トワナとマキナに…… 特にトワナに天女の生まれ変わりだと認めさせること。

ただそれがすべてうまく行って自分はどうしたいんだ?

もう金銀財宝にこだわってない。こだわりは前島に置いて来たと言っていい。

だから新たな目的と言うか目標が必要。

ミコトのためにもミハマ島全体の秘密を暴き天女伝説を追い求め…… 財宝に。


あれまたどこかでおかしくなったぞ。

自分はどうしたいんだ? もう何もしたくないならこのままここに。

ミコトの代わりを求めるならマキナかトワナ。

ただ中島を脱出したいなら…… そうか。穴になって後島に行けばいいのか。

ミハマ島自体を脱出したいならそのまま本土に戻る船に乗ればいい。

うーん。自分でも何がどうしたいのかまったく分かってない。

財宝を諦めた今自分の存在価値が見出せなくなっている。これは結構重症だぞ。


ココスペシャルまでは時間があるので第六洞窟の穴に大穴を紹介してもらう。

「おおどうだね穴の居心地は? 」

「それが皆さんよくしてくれまして何だか悪いなと」

「驕らない性格とはまた人間がよくできている。君に任せて正解だったよ」

「そんな…… まだ仮ですし」

「どうだね。第七洞窟が完成してもここに残ると言うのは? 

皆もきっと歓迎してくれるぞ。そのうち大穴になれるかもしれない。

何と言っても大穴は他所から来たからな」

「まさか大穴がよそ者? 本当ですか? 」

あまりのことについ声が大きくなる。

「ああ君だって一度ぐらいは会ってるはずだ。あの方は若く野心家だった。

しかしある人との出会いで…… おっとこれ以上は会ってから話そうか」

そう言うと大穴がいるとされる場所へ。


中島はさほど広くないらしい。もうすぐにでも崖が見えると。

「よいか。決して一人で中島を彷徨ってはならぬ。どれだけ危険か分からない。

あそこを見るがいい。あれこそが第三の島・後島だ。

そこには天女の土地と言って不可侵の場所。立ち入りが禁止されている。

それは島民はもちろん穴も大穴も。島長でさえ近づけない。

聖域とも言える場所。そこに人影が見えたらそれは天女様と言うことになる。

お前が新米穴だからいろいろ教えてやるのだ」

感謝しろよと冗談っぽく言う。

どうやら中島の観光案内をしてくれるらしい。これは大変助かる。

大体迷ってどうにか戻れたがその記憶がいつも曖昧なものになっていた。


「そう言えば前島では何度か見かけたような…… 」

つい天女の舞を目撃したことを漏らしてまう。

自慢ではないが何度も目撃してる自分がいる。

だがそれを今までは無闇に島の者には伝えなかった。

島長とナガレぐらい。もしかしたらミコトにも勢いで言った気もする。

当然彼らは信頼の置ける人物。でも中島の者には話す機会がなかった。

ここに来て天女の舞を見たのは第五洞窟の泉の時のみ。

生まれ変わり候補の二人が華麗に舞ってる姿を目撃した。


「おいそれは本当か? 真のことか? 」

驚きと困惑の表情を浮かべる。

「いや勘違いかもしれません…… うん。きっと勘違いだな」

ここは勘違いと言うことにしておく。

そうしないと疑いの目で見られ続けることになる。

「驚かすでない! この私だって一度だと言うのに」

「ははは…… 」

「この辺は突然砂嵐が発生する。巻き込まれたら厄介だ。気をつけるように」

注意を受けるがもう経験してるので充分理解している。


「次に向かうぞ! 」

そう言って三十分は歩かされたか。

どうやら間もなく大穴とご対面らしい。


                  続く

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