島を南下中
島に留まり学者や人生の先輩として意見するナガレ。
彼こそが私の未来の姿らしい。
天女伝説に財宝探しに現を抜かし狂った何年後かの私。
そう考えるとゾッとしない。私はどうすればいい?
「天女は見えないが近くにはいる。ほら心の声が聞こえるだろう? 」
そんな風にからかう。もうどう言うことなのかさっぱり。
この私をからかってそんなに面白いか?
子供ではないんだがそんな言い逃れ通用するはずがない。
いくら助手みたいなものでもそこまで頭が回らない訳ないだろう。
どうもこの島の人間は私を軽く見て恐れていない。逆にそれで助かっているが。
この島の人間と言ったがそれにしても少ない。会ったのは船頭含め彼で四人目。
まだ二日目とは言え片手で数えられるだけ。
これでは島の全容がちっとも見えてこない。どうしたらいいんだ?
「四人集めてようやく天女が出現するはず」
ポロっと出た言葉が気になって仕方がない。
具体的に迫るがもう寝る時間だとナガレは言う。
そうそうこの男の生まれは東の田舎だと言うからあの海なし県だろう。
彼もまた伝説を追って流れて来た学者崩れ。そして答えを知っているよう。
財宝には目もくれずにこの島に居ついた。
一体彼の中にどのような変化があったのか?
すべて知っていながら隠そうとしているかのよう。もう島民になったか?
強力な協力者だが真実を語るとは限らない。
ただ少しずつだが何か伝えようとしている気がする。
明らかに逆行してるが果たして彼の本当の目的とは?
いい気持ちで横になっている男。
名前をナガレと言い私と同様この島に興味を持ってやって来た学者らしい。
だから私の先輩とも言える。頼れる先輩かと言うとそうでもなく信用できない。
はっきり言ってサザナミよりも手強いかもしれないな。
いつ裏切られてもいいように準備だけはしておこう。
一時間経ったので起こすと出掛けるぞとその辺のゴミをまとめる。
まさかゴミ捨てを手伝わせる気か? うわ…… 迷惑なんですけど。
いや違うな。薄汚れて黄ばんだリュックに詰め込んだ。
これは海外製のお高めのバック。ブランドのロゴも辛うじて読める。
当時はそれなりの地位にいたのが窺い知れる。
するとなぜナガレはすべてを捨てこんな何もない島での生活を選んだのか?
美しい自然とのんびりとした島の生活に憧れて? それはあり得ないよな。
私はまだ助手だが当麻博士も口ではそんなこと言うが常に獲物を狙っている。
学者とか研究者って奴は揃いも揃って傲慢で自分勝手。
甘くはない。ここにいるのは気に入ったからではなくきっと裏があるんだろうさ。
まさか天女伝説を解き明かし財宝までたどり着いたか?
しかし一人では絶対に持ち出せないと悟りその機会をじっくり待っている?
それが今だとすれば彼が積極的に動くのは何一つ不思議じゃない。
もしかしたらこの私を囮にして金銀財宝を持ち出す算段なのかもしれない。
彼も当麻博士同様まともじゃないはずだ。研究を続ける意地も執念もあるだろう。
ありがたいことにどこかへ案内してくれるらしい。さっそく……
「待て! サザナミが監視している! 見つかったら厄介だぞ! 」
逃げる気満々だからなのか見つかっても問題ないのに監視をかわそうとする。
これはますます怪しいぞ。逆に確信が持てる。絶対に何かある。
ここからだと人影は見えてもサザナミ本人かまでは確かめる術はない。
もちろんこの島に大して人はいないし底なし沼に近づく者も僅かだろう。
人影があればそれはサザナミに違いない。ミエンの可能性も残されてはいるが。
「ほらボケっとするな! 」
そう言って無理やり連れて行かれる。
昨日船を降りてすぐにサザナミの案内を受け一晩泊まった。
監視されてたからな会ったのは婆さんだけ。
朝に見かけたのは恐らく天女様だろう。
まだサザナミの家と底なし沼辺りにしか足を運んでない。
島の大きさもよく分かってないがまだ何か所も地域が存在するんだろう。
きっとそこにはナガレが発見したであろうアレがあるはずだ。
今は信じる信じないではなく利用できるだけ利用しようと思う。
早いところ慣れて単独行動できるようにならないと。
もう当麻博士のような夢を見てない。現実的な財宝探しに来たんだから。
ナガレも親切で協力してるだけかもしれない。
どうであれその善意は受け止めたい。
それは希望的観測だろうがそれでも信じる。
とりあえず島に降り立ったところを最北端と考えて今は北から北西に移動。
これからは別の場所に連れて行かれるはずだ。
ナガレに連れられて一時間。未だ島の西側を南下中。
もう疲れた。汗も掻いたし喉も乾いた。お腹だって空いて来た。
もうそろそろいいんじゃないか? 飽きたよ。こんな生活もう嫌だ。
ただ日差しを浴びるだけの旅などやってられるか。
それにしても人が少ないとは聞いていたがまさかここまで誰にも会わないとはな。
無人島かよと言いたい。でもサザナミもこの学者崩れも婆さんだっている。
ここが無人島であるはずない。土産ショップはどこだよ? もう本当に疲れた。
私はここに何しに来たのかさえ怪しくなる。ミビちゃんどこにいるの?
そんな過酷な旅。これはきっと疲労させ帰らせる作戦だろう。
だが耐えてやる。時間ギリギリまで粘ってやる。手掛かりはきっとあるはず。
一週間と言わずにもっと長く滞在して手掛りを見つけなくてはならない。
「お前本気で財宝を狙ってるのか? 」
ついにナガレがその話に触れた。もう引っ込みがつかないぞ。
「いえ天女伝説に惹かれてこの島にやって来ただけで…… 」
あくまでもただの観光客を演じる。
「それが財宝に繋がるんだろうが! 」
おっと…… 口が滑るナガレ。
分かり切っていたことだが島の者から聞くのは一歩前進。
「そうなんですか? でも私は天女様に憧れまして」
「まさかお会いしたと言うのか? 」
「いえそこまでは…… 朝早くにどこかで。恐らく隣の島かと」
真実を口にするのがどれだけ危険か分かりながらつい釣られて。
奴らは恐らく時間稼ぎの上に邪魔をする気だろう。
真実にたどり着く前に諦めさせる。
決して暴力的に解決を図るのではなく頭を使った戦略。
この男がどっちであろうと謎はそう簡単じゃない。
今すぐにでもすべて吐いてくれたら楽なんだがそれでは興が削がれるらしい。
続く




