79.目覚めの制圧
早朝。
部屋の扉がロック解除の微かな電子音と共に静かに開いた。
室内に滑り込んできたのは、漆黒の制圧チームだった。
彼らは音もなくベッドを囲み、佐々木とメイリンのそばに近づいた。
冷たい金属が肌に触れた感覚で、佐々木は目を覚ました。
その瞬間、制圧メンバーが馬乗りになり、佐々木の口にテープを貼り付けた。
「静かにしてろ」
佐々木は、侵入者たちの黒い戦闘服の肩に企業のエンブレムがあることを確認し、何が起きているのかを瞬時に理解した。
一方、メイリンは、制圧メンバーの1人を反射的に跳ね除けたが、瞬時に3人がかりでうつ伏せに押さえ込まれた。
怒りに顔を歪ませ、押さえつけられながら、制圧チームを睨みつけた。
「私の裸を見ていいのは佐々木だけだ」
メイリンの抵抗もむなしく、肩口のポートに拘束機が、装着された。
メイリンはそのまま、苦痛の表情を浮かべ、ベッドに倒れ込んだ。
佐々木の部屋とほぼ同時に、リベラとゼロの部屋の扉も開かれた。
銃を持つ制圧チームは、リベラとゼロを拘束し、佐々木たちの部屋へと連行してきた。
状況が完全に整ったのを見計らい、扉から冷静な顔つきの職員が入ってきた。
職員は部屋を見渡し、事務的に佐々木に告げた。
「よくも騙してくれたな。お前たちがスポンサーでないことは判明している」
リベラは、佐々木が無事であることを確認し、さっそく抵抗をはじめた。
「あなた方は重大な過ちを犯しています。すぐにこの拘束を解きなさい」
リベラの威圧的な言葉に職員は一瞬たじろいだ。
「私たちは貴社に多額の寄付をしているシグマ・フロンティア財団の視察団代理です。こんな事をしてタダで済むと思っているんですか?」
その時、職員の腰の端末が警告音を鳴らした。
恐る恐る確認すると、調査部門からの緊急通信だった。
メッセージは非常に簡潔なものだった。
『佐々木様の身分確認が完了しました。先ほどの連絡は誤報でした。最重要の大口スポンサーで間違いありません。丁重に扱うようよろしくお願いいたします』
職員の顔色は蒼白になった。
即座に制圧チームに指示を出した。
「直ちに全員の拘束を解け!」
職員の態度の変わりように驚きつつも、制圧メンバーは、佐々木、リベラ、ゼロの順に手際よく拘束を外した。
最後に拘束機をメイリンのポートから引き抜いた瞬間、その制圧メンバーは宙を舞った。
「てめぇら!私を拘束しやがって!覚悟は出来てるんだろうな?」
職員たちの顔は、絶望的な青ざめた色に変わった。
「メイリン!」
佐々木が大きな声を出した。
驚いたメイリンは佐々木の方を見た。
「お前の裸を見ていいのはオレだけだよな?なら、さっさと服を着てこい!」
メイリンは佐々木の男らしいセリフに頬を染めながら返した。
「う、うん。ごめん、佐々木…」
そう言うと、シーツで体を隠しながら、服を持って洗面所へ駆け込んだ。
「ささ、詳しい話は後ほど聞くとして、皆さん一旦お帰り下さい」
それが、佐々木の心遣いだとわかり、皆は心の底から佐々木に感謝しながら部屋を出ていった。




