80.予期せぬ支援者
しばらくして、着替えを終えたメイリンが部屋に戻ってきた。
佐々木は部屋の惨状をちらりと見やり、息をついた。
「まあ、なんとか誤魔化せてよかったですね」
メイリンは頷いたが、リベラはまだ納得がいかない様子だった。
「誤魔化せてよかった、などと楽観的に考えるのはまだ早いです。先程の通信、あれは私がやったのではありません」
佐々木は驚いて尋ねた。
「え?じゃあ、誰が?」
リベラはふと顔を上げて、ゼロのほうを向いた。
「もしかしてゼロですか?」
ゼロも首を振った。
その時、入口の扉からキュラキュラというキャタピラの駆動音を響かせ小型の荷物運搬用カーゴロボが滑り込んできた。
『私だよ』
カーゴロボのスピーカーから人の声がした。
しかし、そのカーゴには、大型のスーツケースのようなカバンが乗っていただけだった。
カバンの中では何かが稼働中のようで、薄く電子音が鳴っていた。
カーゴロボの手前に、半透明の光を帯びた男性のホログラムがふわりと現れた。
ゼロが即座に、言った。
「マスター!」
佐々木とメイリンは驚愕し、その威風堂々としたホログラムの人物を見つめた。
リベラはどこか、訳知り顔でそのホログラムを見ていた。
ホログラムの人物は、佐々木たちを一瞥し、微笑んだ。
「私がゼウスだ。君たちは、ゼロとともに私を探しに来てくれた人だな。そこのお嬢さんはもうお気づきかもしれないが、私にはすでに実体は存在しない。詳しい話は、ココを出てから話そう。済まないが、このカーゴロボを積んでいってくれないだろうか」
皆は、ゼウスの指示に素直に従い、ルインキーパーへ戻ることにした。
佐々木たちは、制圧チームがまだ待機している可能性のある通路を警戒しながら、部屋を出た。
エレベーターホールへ向かう途中、案の定、先ほどの職員に出くわした。
職員は恐縮した様子で深々と頭を下げた。
「佐々木様。この度は、重大な誤認により、ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
「まあ、気にしないでください」
佐々木は場を収めようとした。
職員は焦ったように顔を上げた。
「ところで、本日は許可がおりましたので、最新の実験を、この後ご紹介させていただきますが…」
リベラは冷たく遮った。
「すみません。先程の拘束で緊急のメンテナンスが必要になりました。本日は一旦、帰らせていただきます」
リベラの強い口調に、職員はこれ以上引き止められないと悟った。
「それは...ごもっともでございます。大変申し訳ございませんでした。ご説明はまたの機会にさせて頂きます」
佐々木たちは乱雑に荷物を積んだ、カーゴロボと共に無言でエレベーターに乗り込んだ。
職員は、深く頭を下げたまま、彼らの姿が見えなくなるまで動かなかった。
ルインキーパーがステーションを出て約1時間後、再びゼウスのホログラムが表示された。
「さて、ココまでくれば安全だろう。君たちは私を探しに来たのだろう?済まないが、なぜ私を探していたのか、教えてくれないか」
ゼウスのホログラムはそう言ってゼロにコレまでの経緯を話させた。
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