78.サイバーテロ
宿泊区画へ移動し、リベラとゼロはすぐに行動に移った。
リベラはあえて佐々木たちと部屋を分た。
リベラとゼロの二人きりの場合、佐々木に知られることなく、ハッキング作業を行える。
リベラとゼロは、外部からアクセスできなかったステーション内部のネットワークへと侵入した。
ハッキングを開始した直後、リベラは宿泊区画の監視カメラに不審なアクセスを発見した。
職員が佐々木とメイリンの部屋の映像を執拗に監視していたようだった。
リベラは監視ログのアクセスパターンと職員の属性データを解析し、即座に不快な真実に気づいた。
これは、スポンサーの動向を探るための監視ではなく、いやらしい事を期待して映像を見てたのだと。
リベラは静かに監視カメラの制御権を奪った。
そして、メイリンがシャワーを出て、カメラ前に戻ってくるタイミングを見計らい、リベラは映像にノイズを流し込んだ。
これにより、職員は2人の興味深い行動を逃すことになった。
ゼロは、ゼウス氏に関する情報に集中してアクセスを試みた。
その間、リベラは、ゴースト・スキャン研究の調査を開始した。
まず、ゼロがゼウスの宇宙ステーションに来てからの足取りを掴んだ。
「ゼウス様はこのステーションへの入港時の記録はありますが、出港の記録は一切ありません。ゼウス様はまだ内部にいると断定できました」
リベラが調べたゴースト・スキャン研究に関する情報の方はかんばしくなかった。
肝心の研究区画のデータには、異常に強固なプロテクトがかかっていた。
「ダメですね。プロジェクトのコアデータは、プロテクトがかかっています。現状の権限レベルでは解除に時間がかかりすぎます」
明日になればわかるだろうと、リベラは調査方針を変えることにした。
リベラは、ステーションの日常的な管理ログや、他の実験区画の報告書をチェックし始めた。
すると、そこに奇妙な問題が見つかった。
ここ1年ほどの間、ステーションでは、実験が著しくうまくいっていないことがわかってきた。
各種ラボのデータが断続的に消失し、環境センサーの結果が記録できていないなど、初歩的なシステム障害が頻発していた。
さらに、断続的な通信トラブルが起こっている。
これには職員たちも、混乱と苛立ちを示していた。
それらのエラーは、自然な機器故障やヒューマンエラーではなく、極めて意図的、かつ悪質なものだった。
それは、まるでサイバー攻撃に似た、トラブルだった。
しかも、その痕跡が巧妙に隠蔽されていたが、何かが何らかの意思を持ち実施されたようにリベラには見えた。
その時、ゼロに、外部からの極秘の通信が入った。
「ゼロ...おまえはゼロなのか...」
それは微かに、しかし確かに、ゼウスの声だった。
ゼロは驚きと安堵で一瞬固まったが、すぐに応答した。
「マスター!今どこにいらっしゃるのですか?」
ゼウスはゼロの質問は聞こえていないようだった。
「もうすぐだ...もうすぐ、ステーションの権限が...」
ゼロがさらに詳細を聞こうとした瞬間、通信はノイズとともに完全に途切れた。
「マスターは生きていらっしゃいました...よかった」
ゼウスが生死不明の状況から、とりあえずは連絡がついたことで、ゼロは少し安心した顔を見せた。
しかし、リベラは眉をひそめたままだった。
ゼウスの声には、明らかな電子的なノイズが混じっていた。
まるで、何らかのデジタル処理を経たような、奇妙な響きだった。
リベラは、ゼウスの通信の奇妙なノイズの正体が何であるかを考え続けていた。
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