77.ステーションへの潜入
リベラが話すより先に、メイリンが口を開いた。
「でも、なんでエンジン開発のスペシャリストのゼウスって人が、そのゴーストなんちゃらとかって研究プロジェクトに参加してたんだ?全然分野が違うだろ?」
佐々木も、メイリンの発言にうなずいた。
「たしかに。自身の研究からかけ離れた仕事のために、ゼロさんに黙ってコロニーを出ますかね?それも3年間も…」
リベラは佐々木たちの疑問を受け止め、冷静に答えた。
「その真意はまだ、わかりません。今わかっていることはゼウスさんは、分野転向ではなく、エンジン開発プロジェクトとの兼務でした。また、ゴースト・スキャン研究の方はプロジェクトメンバーとしてではなく、被験者として参加していたようです」
リベラは話を締めた。
「現在、ゼウスさんはデブリ帯にあるタワー系列の宇宙ステーションに向かったというのが最後の記録です」
「じゃぁ、その宇宙ステーションに入ってゼウスさんの事を調べる必要がありますね」
佐々木の提案にリベラはお任せくださいと答えた。
…
コロニーを出て数時間後、ルインキーパーは、デブリ帯に潜む巨大な宇宙ステーションへと静かに接近していた。
船内では、リベラから今回のミッションの最終確認がはじまった。
「佐々木様、われわれの目的は『大口スポンサーによる視察』ということになっています」
佐々木は無言で頷いて、窓から宇宙ステーションを見つめた。
佐々木は豪奢な刺繍が入ったスーツに、メイリンは胸元と脚を際立たせる丈の短いワンピースに身を包んでいた。
いかにも成金とその愛人という装いだった。
リベラとゼロは、ビジネススーツを完璧に着こなし成り金を支える有能秘書という感じだった。
ルインキーパーはスムーズにステーションへドッキングした。
佐々木と愛人と秘書の一行は、ステーションの職員に迎えられた。
「ようこそ、佐々木様。今回は弊社の研究にご関心をお持ちいただき光栄です。まずは見学ツアーにご案内いたします」
職員は終始笑顔で、ステーション内のクリーンなラボや、熱心な研究者たちの姿を紹介していった。
しかし、どの実験も宇宙環境を利用した一般的な工学研究ばかりで、『ゴースト・スキャン』の陰すら見えない。
数時間後、メイリンがしびれを切らした。
「なんだかココってとてもつまらないわ。もうそろそろ帰りましょうよー」
リベラがメイリンに同調した。
「確かに。これ以上、時間を割くのは無意味ですね。今回は、スポンサーを降りさせてもらうことにしましょう」
リベラのこの言葉に、職員は動揺した。
「そ、そんな!お待ちください!実は...」
職員は周囲を見回し、声を潜めた。
「ええと、その、当社の研究で『人間の意識をデジタル化するという研究』があるんです。ただ、そちらは上の許可が必要でして…」
佐々木は静かに職員を見つめた。
「わかりました。本日はここまでにしましょう。明日にはいい返事を頂けることを期待しています」
佐々木はそう言って、職員に微笑んだ。
職員は安堵し、一行は宿泊区画へと移動した。
佐々木とメイリンの部屋、そしてリベラとゼロの部屋に分かれた。
メイリンがシャワーから出ると、佐々木は窓の外のデブリ帯を眺めていた。
「なにか気になることでもあるのかい?」
佐々木は振り向かず、低い声で言った。
「ゼウスさんは、3年もこんな所にいるなんて…無事でいてくれるといいんだけど」
佐々木がそう言ってメイリンの方に向き直ると、佐々木の目に、腰に手をあて素っ裸で水を飲んでいるメイリンが目に飛び込んできた。
「ちょ、ちょっと、なにか着てよ!」
佐々木は思わず目を逸らした。
メイリンは悪びれる様子もない。
「だってさ、あのワンピース。ラインがハッキリ浮き出るから下着をつけれなかったんだよ」
そういいながら佐々木に近寄るメイリン。
「でも、どうせすぐ脱ぐんだし面倒じゃん」




