350.停戦の模索
「あなたのことも知りたいわ」
まずはミュリアが質問した。
「あなたはどこから来たの?」
バレルの後ろに控えるミュートは、その質問に首を傾げた。
あまりにも大雑把な質問で、そんな事を聞いたところで革新的な答えは帰ってこないのではないか。
そう思いバレルの顔を見ると、意外にも少し引きつった表情をしていた。
しかし、バレルはすぐに調子を取り戻した。
「何が聞きたいのか、分からないな」
「そう?どこの『時代』から来たのと聞いた方が良かった?」
「ぐっ⋯、もしかして、お前もなのか?」
「ええ。それであなたはどちらの軍に所属しているの?ミュート?リベラ?」
ミュリアから急に自分の名前を呼ばれ、驚くミュート。
一体、軍とは何のことなのか。
「バレル様?⋯」
ミュートが質問しようとすると、バレルは冷たく言い放った。
「後だ!」
ミュートは気圧され、そのまま後ろへと引き下がった。
「ふーん。敵軍の将にそんな口を利くんだ」
ミュリアはニヤリと笑い、バレルの反応を品定めするように探りを注ぎ込んだ後、何もない空間に話しかけた。
「ですってよ、リベラ」
ミュリアが呼びかけると、室内にホログラムのリベラが現れた。
『バレルさんですね。はじめまして』
リベラはバレルに向かって静かに語りかけた。
『あなたをここへ送り込んだ私になら、お話をしてもらえますでしょうか?』
「し、しかし⋯」
戸惑うバレルに対し、リベラは言葉を重ねた。
『ご安心ください。ミュリアさんは我々の味方です』
バレルは視線を泳がせ、ゴクリと唾を呑み込んだ。
どこか警戒を解ききれない様子だったが、やがて腹を括ったように深く息を吐き出した。
「⋯分かりました」
こうしてバレルは、自分の話を語り始めた。
⋯
「なるほど、つまりあなたは100年後の未来から、⋯ええと、103年前の過去に戻ってきた未来人だったのね」
ミュリアはバレルの告白を聞き、状況を理解した。
「リベラ。なかなか面白い作戦を立てていたのね」
ミュリアがホログラムに向かって話しかけた。
『そうですね。確かにかなり効果的な手でした』
同意するリベラに対し、バレルは言葉を強くして訴えた。
「し、しかし、コイツはまだ覚醒していません! わ、私はコイツを停止させたくありません!」
「バレル様⋯」
ミュートはあまりに突飛な話のため、内容を完全には理解できていなかった。
それでも、バレルが自分を何か庇ってくれている事は理解した。
『おや?なかなかステキな関係ではありませんか』
「なっ⋯うるさいわね!」
リベラが揶揄するように言うと、なぜかミュリアが口を挟んだ。
バレルとミュートには、なぜミュリアが恥ずかしがっているのか、理由がさっぱり分からなかった。
⋯
今度はミュリアが、バレルが生きていた未来時代と現在の状況の違いについて説明し始めた。
現時点でミュートとウィンはバトラーの管理下から外れており、このまま別々の活動を続けるのであれば、今後、暴走して問題を起こす事はないであろうと伝えた。
「なら、停戦する方法を一緒に考えましょう」
ミュリアがそう提案すると、バレルもうなずき、賛同の意思を示した。




