344.重なる誤算
バトラーから指示を受け、60隻の戦艦を率いてアヴァロンへ侵攻した提督は、今目にした光景が信じられなかった。
アヴァロンの方向から、強烈な光の帯が一瞬だけ伸びた。
そして次の瞬間、先遣隊として先行させていた20隻の艦隊との通信が完全に途絶した。
一体何が起きたのかと提督が状況を掴めずにいたその時、潜入者から連絡が入った。
先ほどの光はアヴァロンのレーザー砲であり、20隻の艦隊は一瞬で全滅させられたという。
潜入者は続けて重要な情報を告げた。
無理な発射の反動で要塞側に深刻な過負荷が発生し、主砲の修復には丸1日を要するとの事だった。
⋯
提督は本部に伺いを立てることにした。
このまま攻撃を継続すべきか、それとも撤退すべきか。
やがて届いたのは、予定通りの制圧指示だった。
この強行策はレイナードの指示によるものであり、この判断によって彼の立場が急速に悪化していくことを、この時は誰も知る由もなかった。
そしてこの連絡の最中、佐々木たちがアヴァロンへと戻ってきていた。
⋯
レイナードの指示を受け、提督は残された40隻の艦隊が進軍を開始した。
「目標まであと100キロです」
現在の宙域には、先遣隊のものと思われる残骸が不気味に漂っていた。
提督は近くの隊員に確認する。
「要塞からの反応は?」
「⋯ありません」
やはり情報は正しかったのだと、提督は密かに胸を撫で下ろした。
しかし、艦隊の中央に位置していた自身の乗る最大戦艦が⋯爆発した。
⋯
爆発に巻き込まれた周囲の艦が、次々と吹き飛んでいく。
40隻あった艦隊は、数分もしないうちにわずか5隻にまで激減していた。
生き残った艦長の1人が撤退を命じ、残る4隻もそれに従って全速力でその場を離脱した。
⋯
バトラーは、通信画面に映る人物を見て不審な顔を浮かべた。
「ん? お前は誰だ?」
報告を行う艦長は、今回出動した60隻の中でも下位の階級であり、これまでバトラーと直接言葉を交わしたことすらなかった。
艦長は冷や汗を流しながら状況を説明した。
「侵入者からの情報に基づき、当初20隻を先遣隊として送り込んだところ、アヴァロンはレーザー砲を発射。先遣隊は瞬時に撃破されました」
「何を馬鹿な!20隻を一度に沈めただと?」
バトラーの顔が驚愕に歪む。
現在の軍事技術において、それほどの大群を一撃で消滅させる高出力レーザー砲が実装されたという話はバトラーは聞いたことがなかった。
「⋯はい。しかし、潜入者からの追加情報により、その直後に深刻な問題が発生して次弾の発射が不可能であることを察知した提督が、自ら40隻を率いて再攻撃を仕掛けたのです」
バトラーはその報告を聞き、浅く頷いた。
勝機を逃さぬ指揮官として、至極妥当な選択に思えたからだ。
「情報通り、レーザー砲は発射されませんでした⋯」
艦長は続きをどう報告すべきか迷い、少し口ごもった。
「⋯そこから起きたことは、我々の常識では説明がつきません。何の前触れもなく旗艦が爆散しました。そして、現在の5隻を残し、他の全ての艦が⋯一瞬でバラバラに破壊されました」




