340.消えたエドワード
バレルは自身の端末で状況を確認していた。
さっきまで苛烈な電脳攻撃を仕掛けてきていたハッカーの反応が、ピタリと途絶えたのだ。
「仕留めた⋯か?⋯」
3方向から仕掛けられていた電脳攻撃を完全に撃破し、遮断することに成功した⋯とバレルは思っていた。
しかし実際には、ロボットの電脳制圧が一瞬早く完了していた。
自分の動きがすべて監視・トレースされていることなど、バレルは露ほども気づいていなかった。
⋯
『アヴァロン2のすべての権限を取り戻したよ。これで何でもわかる!』
ロボットが胸を張って誇らしげに語る。
運搬ロボットを2台もダメにする甚大な被害は出たが、それに見合うだけの大きな成果を得ることができた。
『あと、わかったことがある』
ロボットがミュリアに向かって語り出す。
『コイツはただの人間』
高度な人工知能やアンドロイドかと思っていたが、相手の思考や攻撃パターンには明確な人間のクセが存在していたのだという。
『⋯人間ですか?』
通信越しに報告を受けたリベラは思考を巡らせ、答えを探そうとした。
しかし、重要なピースがまだ欠けているようで、真相には辿り着けなかった。
⋯
リベラは次にバロウズの事務所へと移動した。
そこにはバロウズとバルガス、ミネルヴァの3人が集まり、事務所の子分たちからの連絡を待っていたが、エドワードの行方についてはまったく掴めていないようだった。
最後の足取りとしては、明日の式典に備えて立ち寄った高級スーツの店を出て以降、消息が絶たれてしまっているのだという。
その時、メイリンからリベラへ通信が入った。
『見つけたよ!』
リベラは端末をスピーカーモードに切り替え、全員で状況を確認した。
メイリンの話によると、スーツ店の試着室の床が、店主の知らないうちに落とし穴のような抜け道に改造されており、エドワードはそこから連れ去られたのだという。
さらに、その抜け道が繋がる出口付近の防犯カメラまでは特定できたため、これから映像データを解析するらしい。
リベラはメイリンから聞いた情報をすぐさまロボットへと共有した。
ロボットはカメラ映像を瞬時に解析し、誘拐に使われた一台の車両を特定してみせた。
そこから周辺の街頭カメラを次々とハッキングして繋ぎ合わせ、一枚の移動ルートを表示させる。
ロボットはその解析結果を事務所の大画面モニターに映し出し、誘拐車両の目的地を指し示した。
車は、港の倉庫街にひっそりと佇む古びた倉庫の一つへと吸い込まれていた。
「では、行ってきます。メイリンさん、現地で合流しましょう」
そう告げてリベラが事務所を後にしようとすると、ミネルヴァが慌てて声をあげた。
「待って!私も連れて行って!」
「俺達もついていきますよ!」
バロウズとバルガスも力強く意気込む。
「情報は逐一共有しますので、みなさんはここでお待ちください」
静かだが毅然とした口調で制し、リベラは一人で事務所の外へと踏み出した。




