337.絶望の中の光明
ミネルヴァはアイリスが受けた攻撃について、リベラたちに説明した。
接続デバイスを経由して凶悪なウイルス攻撃を受け、首のデバイス自体が物理的にショートしたのだという。
普通ならウイルス対策用の安全装置を装着していれば防げた事態だったが、アイリスは手術後、日常的に接続のクリアさが失われるのを嫌がり、安全装置の使用を避ける傾向があった。
今回はそれが裏目に出てしまい、重いケガを負う結果となってしまった。
報告を受けたリベラとミュリアは沈み込んだ。
「バトラーさんの配下に、それほどに優秀なハッカーがいるのですか?」
静まり返った室内で、リベラがミュリアに尋ねた。
リベラの問いに、ミュリアは首をふる。
「いいえ、当時は私がこれでも最高だったわ。でも、通信越しに攻撃するなんてマネは私にはできないけれど⋯」
「⋯となれば、当時は存在せず、現在新たに加わった人物の仕業かもしれませんね」
ミュリアもリベラの言葉に反応した。
「レイナードの言っていた『バレル』ってヤツ?」
「はい。さきほどウィンさんが送ってくれた情報にも、高度なハッキング技術を保有していると記載されていました。十中八九、その人物でしょう」
リベラたちはモニターにバレルの情報を映し、その顔を覚え込んだ。
「しかし、困りましたね⋯私達の中で最もハッキング能力の高かったアイリスさんが倒れてしまいました。おそらく、私が挑戦してもアイリスさんと同じ目に合うだけでしょう」
⋯
リベラたちにとって悪い話はこれだけでは終わらなかった。
明日の式典に参加予定のエドワード社長が行方不明になったというのだ。
連絡をしてきたミネルヴァは、半狂乱の状態でリベラたちに事態を伝えてきた。
リベラたちは、ここに留まっていても状況は改善しないと考え、ミネルヴァの力になるべく、軌道エレベーターに乗りエイドスへ降りる事にした。
力なくエレベーターに向かいながら、リベラがミュリアに話しかける。
「参りましたね⋯今回、私達は完全に後手に回っています」
⋯
軌道エレベーターに向かう途中、リベラのもとに通信が入った。
ノイズの交じる砂嵐のような音の中で、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
『⋯リ⋯ベラ⋯クリス⋯トだ⋯おとが⋯聞こえるか?⋯』
「クリストさんですか?はい。聞こえます」
『⋯何か⋯問題は⋯起こっていないか?⋯』
リベラはクリストからの通信に対し、現在起こっているアイリスの入院やエドワードの失踪などを伝えた。
やり取りをしている間にも、通信の品質は少しずつ良好になっていく。
『なるほどな。わかった⋯アヴァロンから助っ人を何人か送ろう』
クリストはそう言うと、アヴァロン2のドックの座標を尋ねてきた。
リベラは正確に座標を返答した10分後。
ドック内に強烈な光の輪が出現した。
光の輪は中心に向けて光を広げ、やがて巨大な光の円へと変わる。
数秒後、その光の中からスターブリンガーⅡがドック内へ姿を現した。
ドックに接舷した船のハッチが開き、最初に降りてきたのはメイリンだった。
「うわっ!ホントにコッチにもリベラがいるじゃん。どうなってんの?」
「な。俺の言ったとおりだろ」
後ろに続くギルバートが胸を張る。
『⋯助けに来た⋯』
ロボットが、ギルバートの後に続き歩み出てきた。
『3人に協力を依頼した。彼らをこき使ってくれ』
クリストはそう告げると、通信を終了した。




