335.託された警告
リベラ、ミュリア、ウィンの3人は運搬ロボットを駆使し、救命ポッドからバトラーの部下たちを次々と担架に載せ替えた。
作業中、ふと目を覚ます者がいた。
混乱する部下に気づき、レイナードがすかさず駆け寄る。
「ふ、副司令⋯私は?助かったのですか?⋯」
「ああ、もう心配いらない。そのまま寝ていろ」
その言葉を聞き、男は安堵して再び気を失った。
彼らを載せた担架を複数の運搬ロボットが、軌道エレベーターへと運んでいく。
「軌道エレベーターの完成式典前のためか、宙賊たちは息を潜めているようですね」
リベラがあたりを見回しながら、発言した。
「そうね。たしかあの時は、そういった指令を流した記憶があるわ」
ミュリアがリベラにそう返した。
それを聞いていたレイナードは、不思議そうな顔をする。
「君は、我々のことをよく知っているような口調で話をするな。もしかして我々の内通者なのか?」
問われたミュリアは、柔らかな笑顔をレイナードに向けた。
「そうね。あなたの事もよく知っているわ、レイナードさん」
その返事を受け、声色も姿形も全く違っているにもかかわらず、レイナードの脳裏にある人物の面影が思い浮かんだ。
軌道エレベーターへ全員が乗り込んだのを確認し、リベラがレイナードに告げた。
「地上ではアヴァロン商事の社員が待機していますので、彼らに従ってください。みなさんを我々が管理する病院へ入院させる手筈が整っています」
複雑な遺恨を胸に抱えつつも、レイナードは重い口を開いた。
「ここまでの援助、ありがとう。彼らが目覚めても君たちに敵対させないことを誓うよ」
レイナードはリベラに背を向け、エレベーターへと歩を進めた。
発進直前、レイナードは振り返って大声で呼びかけた。
「リベラ!⋯」
何かを心に決め、レイナードはリベラの方をまっすぐ見た。
「⋯バトラー様の側近の『バレル』に気をつけろ!おそらく彼が我々を排除しようとした黒幕だ」
レイナードはそう叫ぶと、となりに立つウィンの方を向いた。
「彼女たちにバレルの情報を提供してやれ」
ウィンは「よろしいのですか?」確認した後、バレルの詳細情報をリベラたちへ送信した。
「ありがとうございます。参考にいたします」
リベラがそう深々と一礼すると、エレベーターの大型扉が重々しく閉まった。
その直後、輸送ポッドは滑るようにシャフトを滑り降り、地上に向かって一気に急降下していった。
⋯
ミュリアが受け取った情報を確認しながら渋い顔をする。
「どうかしましたか?」
リベラの質問に口ごもるミュリア。
「⋯実は、⋯私この男のことを知らないの⋯」
ミュリアが言うには過去にこのアヴァロン2を占拠していた時、主要メンバーはバトラーとレイナード、ウィン、ミュートだけだった。
もらった経歴を確認したが、このようなメンバーがバトラーの軍勢に参加したという記録はミュリアの記憶と照合できなかった。
その記録では、半年前にバレルはバトラーの仲間になり、あっという間にナンバー2のポジションまで登っていたのだ。
「つまり⋯」
リベラは答えを出した。
「我々が過去に戻ってきた事によるものではなさそうですね。おそらく、バレルというこの男がバトラー軍へ加入した半年より前から歴史は変わりだしているのかもしれません」




